聴覚障害者制度改革推進中央本部ブログ

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(2010年4月16日付で、名称を変更いたしました)

【報告】いつでも、どこでも、コミュニケーションと生活支援の保障を!(報告5)

2005年12月09日 | 報告
(3)重要課題の認識と取り組み

◆パネラー 
石野富志三郎氏(全日本ろうあ連盟事務局長) 
小中栄一氏(全日本ろうあ連盟理事) 
太田晴康氏(全国要約筆記問題研究会理事長) 
高岡 正氏(全日本難聴者・中途失聴者団体連合会理事長) 

◆発言・討議内容
【石野】連盟は、昨年から委託を受けて、手話通訳のあり方について検討する「聴覚障害者のコミュニケーション支援の現状把握および再構築検討事業」を行っている。今からの話は、提言案として示したい。
 私は検討委員として、手話通訳の設置・派遣の範囲を担当。
 検討事業の提言案要旨について説明する。1章について。1.手話通訳士、手話通訳者、奉仕員の役割についての見直し。2.司法、選挙、議会など専門性が高い分野の手話通訳士に対する考え方について。3.手話通訳者法(仮称)案の制定。
 次の章、第1節では8項目を提起。1.福祉事務所における、手話通訳のできる職員の定数内職員化について。手話通訳できる職員を定数内職員にしっかり位置づけ、採用し、公務員として優先的に採用する。手話通訳者がいない時には、職員が研修を積み、資格をとるようにし、そして設置するようにするということ。2.公共機関・団体では、原則、手話通訳者を置くということ。バリアフリーの一環としてコミュニケーションを円滑にするという考え方。3.手話通訳設置事業と手話通訳者派遣事業の統合。手話通訳者の派遣事業については、資格をもつ職員を複数配置する。業務を担い、相談できる体制を整える。4.手話通訳者の派遣事業は、原則的には手話通訳者の登録制度をもつこと、全国研修センターで行っている統一試験の合格者を登録すること。5.設置・登録派遣をする事業主体が雇用契約を結ぶ、そして専門職の労働としての位置づけを行う。派遣について、専門性の基準にあった単価をきちんと出すこと。6.利用料負担を導入しないということ。手話通訳は基本的人権であるという見方。7.各自治体が聴覚障害者の情報保障・コミュニケーション保障を円滑に進められるよう、完全実施する体制をつくること。8.国・地方自治体における手話通訳事業予算の増額について。
 次に第2節では、手話通訳機関・事業所のあり方について提起。1.事業所のガイドラインを作成し、普及していこうという考え方。質の高い手話通訳者を利用できるようにするためには、運営基準、最低基準を設けるということ。2.事業所をする場合には、基準に応じているかどうかの基準を保障する必要。そして、3.評価制度、評価機関の設置。      
 第3節、各分野における、手話通訳のあり方について。1.司法・警察・医療・政治・教育・選挙など各分野で、手話通訳財源をそれぞれ確保するということ。
 第4節、情報保障・IT事業の方向性について。
 第5節の連盟として取り組んで行くこととして、1.ろうあ者相談員の研修制度の充実と有資格化の検討。これは、資格の問題があるので、十分議論していきたいと思っている。
最後に、手話通訳機関・事業所認定のための実施の検討。以上。 

【小中】養成・認定について、今後の交渉でのポイントも含めて話したい。
奉仕員派遣事業は廃止し、手話通訳者派遣に絞るという話が。入門課程は、以前から手話を普及する事業としての位置づけ。だが、講習会のように軽く受け止められては困るという話があり、手話通訳者の養成・入門という名称で提言。
 現在は基礎課程から、手話通訳者養成のコースがある。これを、基礎・基本・応用・実践まであわせてしていこうということ。市町村の派遣が増えていくので、できるだけ効率よく手話通訳者を増やしていかねばならない。どういう方法がよいか。予算的な面も交渉が必要と思う。アンケートをとった結果を見ると、養成の委託費が平均160万円だが、高いところでは500万円、安いところでは11万円と非常に差があることがわかった。
 手話通訳者の現任研修は現在あいまいなものになっている。必ずしなければならない事業として提案したい。この研修を受けない場合は、登録を抹消するような方法で、技術の保障をするという提言。
 手話通訳士は、養成のカリキュラムが曖昧になってきている。それを整備し、合格者を増やしていきたい。
 現在は手話研修センターで統一試験を行っている。試験を国が行って、都道府県で認定し、認定後に登録する方法を提言したい。あわせて手話通訳士を、国家資格になるように格上げをしていきたい。
 認定事業と登録事業が別という問題。例えばある地域で認定されて登録したのに引っ越した先でもう一度認定試験を受けなくてはならないという現状がある。これは改める必要。
 自立支援法では、指導者養成ついても記している。関係職員の研修については、役所だけでなく、施設や相談支援事業を委託されている事業体などの職員に、手話でコミュニケーションできる力を持ってもらうための、入門から基礎にわたる80時間の講座を都道府県で実施してほしいという提言。
 手話通訳者を増やしていくことが目標。ある程度増えれば、将来的には、福祉専門職の養成も必要になっている。手話通訳者もそれにあわせて大学での養成に移行していくのではないか、そういうことも視野に入れて検討が必要。

【高岡】支援法と要約筆記の展望ということで考え方を説明したい。
 今回のグランドデザイン案や障害者自立支援法がどうして出てきたのかということについて、社会的な背景を、難聴者・要約筆記者が理解する必要があると思っている。社会的な状況として、国民と障害者の要求が高まってきたということ、少子化・高齢化、地方財政の悪化、財界の要求がある。
 そのなかで全難聴は、地域生活における4つのニーズにまとめた。1.補聴器と補聴援助システム給付拡大。2.要約筆記等コミュニケーション支援事業の充実、3.読話、手話、補聴器等コミュニケーション方法を学習することの支援、4.中途失聴・難聴者相談体制の整備を掲げている。コミュニケーションの問題は多様であるにもかかわらず、十分に対応できていない現状もある。難聴者にとっては必要不可欠な補聴器の給付に制限があったり、日常生活用具には聞こえを補う機械は一つも入っていない。そういう問題がある。
 要約筆記事業の位置づけについて。要約筆記は聴覚障害者のコミュニケーション手段のひとつであり、中途失聴・難聴者の社会参加・基本的権利の保障に不可欠。そのことが身体障害者福祉法等に規定されている。具体的には聴覚に障害のある者に対して、意思の疎通を仲介する通訳として要約筆記が明記されている。2000年の社会福祉法の改正で、要約筆記事業も法定第二種事業に規定された。都道府県障害者社会参加総合推進事業の情報支援事業の一つに奉仕員養成・研修事業がある。また市町村障害者社会参加促進事業の奉仕員派遣事業に、通訳であるはずの要約筆記の養成と派遣事業が行われている。問題は法定事業が、ボランティア事業で実施されていること。要約筆記が通訳であるという理解が徹底していない、要約筆記通訳者を養成するカリキュラム、研修がないという問題がある。
 今回の法改正で、市町村地域生活支援事業に、コミュニケーション支援事業のひとつとして要約筆記者派遣県事業が明記された。都道府県地域生活支援事業では、手話通訳・要約筆記者養成事業が明記された。要約筆記者の派遣事業を市町村が実施主体として実施することになった。
 都道府県と市町村に対する要約筆記事業の基本的な要望について。奉仕員事業から要約筆記者事業になったが、専門性のある通訳の養成がまだ。また要約筆記事業は市町村の義務的事業になったが、要約筆記者が人数、レベル確保の面で十分でない。未実施も多い。全難聴と全要研で確認したこと3つ。1つはサービス提供基盤の整備のないまま市町村事業としない、2.登録している要約筆記者を、自立支援法に定められた要約筆記者として認定し、社会に認められる一定のレベルを示す必要があるということ。3.コミュニケーション支援にかかる利用者の負担をなくすこと。これが基本的なポイント。
 都道府県事業に対する基本的要望としては、1.都道府県の広域事業として要約筆記者派遣事業を実施することを掲げた。2.要約筆記者養成講習会を通訳者養成事業として位置づけて実施する。3つ目に、現任の要約筆記者に認定を受けさせて、派遣事業の対象とする。どのレベルを要約筆記者と認定するかは、利用者と要約筆記の担い手の集団とよく話し合う必要があると思う。4つ目。利用者負担を求めないことになったが、それをガイドラインに明記させる作業が残っている。予算要望については、要約筆記派遣事業実施のための予算確保をする。通訳養成講習会に移行後も対応できる指導者と予算を確保する。要約筆記者が認定試験を受けるに必要な補講や参加保障を行政に負担してほしい。それから全難聴またはそれに類する機関の実施する要約筆記通訳認定試験の会場確保と運営にかかる費用負担も求めていきたい。市町村の派遣事業については、都道府県事業の実施事業体との委託契約等の方法も含めて、事業レベルの低下させないよう配慮する。
 市町村で派遣事業を実施する基盤がない場合、地域の実状に応じた体制をとること。実施する体制とは、予算がある、あるいは要約筆記がいるというだけでなく、的確な派遣をするためのコーディネータの設置も必要と思うので、現在市町村で実施しているところも、都道府県レベルで実施することも含め検討してはどうかと考えている。次に経過措置として、厚労省の要約筆記奉仕員養成講習会のカリキュラムに沿って実施すること。このカリキュラムは基礎32時間、応用課程が20時間、合計52時間であるが、これで養成しているところは全国的にもわずかである。現在のカリキュラムに沿って実施し、それを修了した人が、県レベルでの、都道府県通訳養成のときの一部にふりかえるというような方法を考えている。3つ目には、派遣事業を実施する場合は、要約筆記者認定を受けた者を対象とすること。これは要約筆記奉仕員のままでは派遣できないということ。養成事業の実施に当たっては目的にあった指導者を確保すること、派遣事業の実施に当たっては、専門性を認識したコーディネータを設置すること。都道府県の広域事業との連携を持ち、質の低下を招かないこと。派遣対象を聴覚障害者団体と個人の両方を要望。事業実施主体の決定は、できれば公開にし、関係者間の合意を得ること。
 今後の取り組みであるが、現在、要約筆記者通訳者のカリキュラムを全難聴が、連盟、全要研の委員と一緒に作成中。もう一つ、どういう問題があるか、誰がどういう基準で認定するのか、という認定事業のあり方をモデル事業として実施している。
 来年要約筆記通訳の指導者を養成する。テキスト発行と養成講座を実施する。支援法第二期、2009年には要約筆記通訳制度を作れないかと思っている。

【太田】活動で感じている課題について話をしたい。5団体でこれまで協議してきたが、支援法が成立した今、あらたに自立支援法時代における情報コミュニケーション支援事業の再構築に関する課題を明らかにして、全国に啓発する必要があるのではないかと考える。一つは社会参加について、利用者のライフステージを横断したサービスのあり方があるように思う。その際の専門性は何か。福祉の他の資格との調整が必要。2番目に情報コミュニケーション支援サービスの社会資源化。様々な行政サービスを使うための基本的な施策だという啓発が必要。他の障害者をもつ利用者が情報コミュニケーションをどういう形で使っているか、それと調整をするなかで、障害種別を越えた情報コミュニケーション支援サービスを普及させ体系化させる努力が必要。関係者が情報バリアフリー環境作りをしていく必要があると思う。3つ目。手話と文字による情報伝達。あるいは、通訳の担い手、あるいは利用者間の情報交換を通じた専門性を整理する時代ではないか。手話は手話、要約筆記は要約筆記と運動論の観点からは分かれていたが、要約筆記者も手話を勉強する。手話通訳者も文字による情報保障技術がどのようなものかを学ぶ。相互の乗り入れが必要と思った。医療関係者あるいは福祉施設職員を対象とする手話・文字を含む情報コミュニケーション支援技術の講習、研修も、5団体が手をとって実施できることではないか。新たな運動の柱として視野にいれられるのではないか。

(時間切れのため、フロアからの質問はなし。フロアディスカッション3 終了)

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