(某日本球団のダサイユニフォームなんぞ着ないで本当に良かった!)
MLB球団がキャンプを張るフロリダ州へ向かう途中、空港の待合ロビーやレンタカーの車窓から南国の風景を目にするたびに、ふと思い出したのが野茂英雄のことだった。
出発まで、まだ新たな契約先が見つかったというニュースは飛び込んでこなかった。それどころか、巨人だのオリックスだの、挙句の果ては楽天だの、気が重くなるような「候補球団」の名前が新聞紙上などで取りざたされるありさま。日本のプロ野球、特に楽天なんぞでプレーするくらいならば、アマチュア復帰資格を取って「NOMOクラブ」で監督兼投手になって都市対抗野球に89年以来の登板をしてくれたほうが、よほど日本球界のためだと考えていた。楽天入り云々については、例によって野村監督の「口撃」(ホンマ、毎日報道されるあの品性や思いやりに欠けたコメントには辟易させられる)の一環として出てきたもので、代理人の団野村氏から「5億円」を要求されたとかされないとか言っていたが、まあ「それぐらい出してくれるのなら検討ぐらいしてあげてもいいですよ」という、義理の息子からのジョークだったと考えていいだろう。まさか楽天、そして野村監督のもとで文字通り「晩節を汚す」ようなことなど、夢にも思っていなかったはずだ。
ようやくホワイトソックスとマイナー契約を結び、3Aのキャンプに参加したというニュースを聞いて本当にほっとした。彼自身はすでにマイナーも経験しているので、開幕を3Aで迎えることは本意ではないにせよ、苦痛には感じないだろう。投手層の厚いホワイトソックスではなかなか昇格のチャンスはめぐってこないかもしれないが、要はマイナー契約であっても米球界に所属していることが大切なのだ。人材を30球団内で有効に活用するMLBならば、トレードで他球団に移籍する機会もあるだろう。私としてはカンザスシティ・ロイヤルズが現在の野茂には最適ではないかと考えている。
野茂英雄は私にとっての大恩人である。彼がメジャーの扉を開けたことで、海の向こうのベースボールへの関心が格段に高まり、その結果として私も現在のような仕事をすることができるようになった。だからこそ、彼には1年でも長くメジャーリーグのマウンドに立ち続けてほしいのだ。彼が問題提起をして10年以上経つのに、依然として何の進歩も見られない日本球界は、彼のようなスケールの大きい人間が活躍する舞台にはなりえない。武市半平太が坂本龍馬を評して言った言葉ではないが、「野茂は日本プロ野球にはあたわぬ男よ」なのだ。
本当に日本の変な球団に入らなくてよかった。
さすが野茂、尊敬に値するね。