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「合宿」と「通勤」~日米野球界キャンプ事情

2008年02月01日 | Baseball/MLB

(ジーター「今年はもっと“ポカ”を減らせよ!」 カノウ「先輩こそもう少し守備範囲を広げてください」)

 

 今日から日本のプロ野球は春季キャンプに突入した。G.G.佐藤と西武球団の未更改問題、オリックスとソフトバンク間のパウエル「二重契約」問題など、春とはいえうっとうしい花粉症のような話題も飛散しながらの春到来であるが、正直な感想を言えば日本のキャンプインは早い。

 

 どうしても「質」より「量」に重きを置きがちな日本スポーツ界全体の傾向も影響しているんだろうが、それでもV9時代の読売ジャイアンツなどは最初の1週間ぐらいは多摩川グラウンドでトレーニングを行なったあと、翌週から宮崎入りしていたと思う。もっとも80年代にオフシーズンの規定が厳格化される以前は、「合同自主トレ」と称して、1月下旬には実質的にキャンプが始まっていたことを思えば早くなったが。

 

 昨年、ヤンキースのタンパキャンプを取材した際のことだが、1日目はフィールドに選手が出てくるのがいくぶん遅く、フィールドに姿を見せた広岡勲広報に尋ねてみると「ミーティングが今日は長引いて」とのことだった。日本ではチームが全員同じホテルに泊り、朝食も夕食も一緒に摂り、晩飯のあともミーティングとか自主練習とか、就寝時間までびっしりスケジュールが決められているが、メジャーでは少なくともレギュラーや25人登録枠に確実に残れるレベルの選手にとっては、スプリングトレーニングの期間はそれぞれキャンプ地で借りたコンドミニアムなどで生活し、夜間のミーティングなどは行なわれない。

 

 日本には日本のやり方があると考えてもいいのだろうが、私は少なくともレギュラーと一軍半、二軍といったレベルで、トレーニングの期間にも差があっていいと考えている。まず1月下旬には各球団の練習グラウンドなどで一軍半、二軍の選手が一斉にスタート。この間、レギュラーかそれに準じるレベルの選手は最低3日間球団のグラウンドやトレーニング施設を利用することを条件にそれぞれ2月初旬まで自主トレに励めばいい。

 

 2月1日には一軍半・二軍の選手がまずキャンプ地入りして、シートバッティングやブルペン投球などの実戦練習。この間、レギュラー・準レギュラークラスは自主トレを続行するとともに、地元でファンフェスティバルなどを行ない新しいシーズンに向けて(営業活動も兼ねて)交流の場を持つ。2週目には一軍半・二軍の選手が紅白戦、練習試合をスタート。この時期にレギュラー・準レギュラーはキャンプ地に移動し、週末に当地でファンとの交流に参加。3週目の前半にバッテリー組が、後半に野手組みが合流してキャンプ開始。メジャーと同様、できればこの時期から実践的な練習に取り組むのが理想だ。そして2月4週目の週末から3月上旬にかけて紅白戦、そしてオープン戦に突入。現在はキャンプ地でのオープン戦が1試合というケースが多いが、せめて2試合は開催してほしいものだ。

 

 キャンプ地での生活も、一軍半・二軍は「合宿」、レギュラー・準レギュラーは「通勤」とメリハリをつけるべきだろう。夜間練習だのミーティングだのは「合宿組」がもっぱら行なえばいいのであり、20代後半とか30代、40代もいる「通勤組」がいい年こいて修学旅行みたいに三食も風呂も一緒というのはいかがなものか? せめて3日に1回の割合で「合宿組」のミーティングに参加したり、彼らを相手に講演のようなものを行なう(それはレギュラー組にとっても「言語表現」「自己表現」のいいトレーニングになるはずだ)とかの方法をとり、「通勤組」は基本的には球場や練習施設での時間以外は個々の判断に任せてもいいのではないだろうか。

 

 最近はかつての読売ジャイアンツや中日ドラゴンズのようにメジャーのキャンプに参加するケースも減った。私はできれば、3月の1週間ぐらいで構わないから、メジャーがキャンプで空けている、たとえば温暖なカリフォルニアとかアリゾナ、フロリダのメジャー本拠地を利用して、日本プロ野球の単独球団、あるいはオールスターチームによる興行が行なわれてもいいと思うし(実際に現地で興行試合を行なったのは、1935・36年の東京ジャイアンツが最初で最後である)、どうせならメジャーばかりに市場を荒らされてばかりいないで、パ・リーグのチームが「アメリカ公式戦開幕試合シリーズ」を開催してはどうだろうか? ソフトバンクもパウエルみたいなつまらんヤツに1億も使うくらいなら、これぐらいの大風呂敷を広げてもいいのではないかと私は思う。

 

 

ドジャースの戦法
アル・カンパニス,内村 祐之
ベースボール・マガジン社

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