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大学野球界はリーグ間のさまざまな「交流」を図るべきだ

2008年04月29日 | Baseball/MLB

(Meiji Jingu Ballpark  Made by Mr.Y.Imaoka)
http://blogs.yahoo.co.jp/yoshiakiimaoka

 

 関西学生野球リーグで、現役の立命館大野球部3年生・大屋公人さんが三塁塁審として京大対関大戦を担当した。現役学生が審判を務めるのは、関西学生野球が82年の現在の6校によって発足してからは初めてだという。



 東京六大学をはじめ、大学野球では各連盟所属校のOBが審判員を務めるのが原則だ。もちろんプロ野球と違って大学野球は審判もアマチュアだから、普段はサラリーマンなど仕事を持っている人たちが多く、なかなか審判のやりくりには各連盟とも苦労しているようだ。



  大学野球の審判といえば、思い起こすのが昨年秋の東京六大学リーグ戦だ。早稲田、慶應、明治の三校に優勝の可能性があるなかで行なわれた早慶戦で、明大OBの球審の微妙な判定に対し、早稲田の應武篤良監督(崇徳高校時代は甲子園で素晴らしい強肩を披露したのをいまでも鮮烈におぼえているが)が試合後に審判の中立性について異議を唱え、後日厳重注意を受けた一件である。



 もちろん應武監督の発言は言語道断だったが、野球WBCでのデイヴィッドソン審判の「疑惑の判定」、ハンドボールの五輪アジア最終予選での「中東の笛」など、スポーツにおいては常に審判の「中立性」は論議の的となるデリケートな問題なだけに、いかにやりくりは苦しくても、六大学野球連盟にはやはり「李下に冠を正さず」の姿勢を見せてほしかったと思う。



 そしてこのとき痛感したのは、大学野球は連盟間でもっとさまざまな「交流」を図る必要があるということだった。たとえば、こうしたケースで審判の中立性が問題になる可能性が出てきた場合、東都大学や首都大学から審判を派遣してもらうという柔軟性がなぜ発揮できないのだろうか? そもそも、各連盟のOBにこだわらず、全日本大学野球連盟、あるいは日本学生野球協会で、日本サッカー協会のような統一した審判制度を設け、大学野球連盟もしくは学生野球協会から、各連盟に審判を派遣するという考え方がなぜできないのだろうか。少なくとも大学野球経験者であることを条件に登録・講習制度などを設ければ、かなりの人数を審判員として全国単位で登録することが可能なはずだし、そうすればもっとフレキシブルに審判の派遣・配置が可能になるはずだ。

 


 もうひとつ訴えたい「交流」は、各連盟公式戦の「別地区(主催球場以外)での開催」である。現在、大学野球連盟間の交流の場は、全国大会である大学野球選手権と明治神宮野球大会、それに春・秋のリーグ戦前に行なわれるオープン戦ぐらいしかない。私が思い描いているのは、たとえば東京六大学野球の公式戦を関西で、逆に関西学生野球、あるいは仙台六大学などの公式戦を神宮で開催できないかというアイデアである。



 たとえば、東北福祉大学九州共立大学といった、プロ野球にも人材を送り出している地方の雄は、大学選手権や明治神宮大会でもおなじみではあるが、彼らが地元のリーグでどんな戦いを見せているか、東京の大学野球ファンとして生で見たい気持ちがある。逆にたとえば関西の大学野球ファンが、早稲田の斎藤佑樹投手の公式戦のマウンドを見たいという希望も間違いなく存在するはずだ。どうだろう、たとえば早稲田対明治の公式戦を甲子園で、関大対同志社の公式戦を神宮で、日程を交換する形で開催することはできないものだろうか。

 


 各大学野球連盟、特に六大学や東都、関西学生野球といった名門リーグにはゆるぎない伝統があることは十分に認識しているし、それは大いに尊重したい。また、学生野球は教育の一環であり、プロのような興行とは違う、という意見もあることだろう。しかし、逆に言えば、選手同士、チーム同士が食うか食われるかの生存競争を繰り広げているプロ野球と違い、学生野球は学生間、大学間、連盟間で大いに交流を深め、友情を育むことにも存在意義があるはずだし、それも大切な「教育の一環」なのではないだろうか。




 伝統は守っていくとともに、新たに作り上げていくものでもある。私個人としては、斎藤佑樹が早稲田のユニフォームを着て、甲子園に「里帰り」する姿をぜひ見てみたいのだが、果たしてこのアイデア、皆さんはどのように思われるだろうか。

 

 

関白さんのホームラン―元早稲田大学野球部監督・石井藤吉郎物語
富永 俊治
楽書舘

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