上田龍公式サイトRyo's Baseball Cafe Americain  「店主日記」

ベースボール・コントリビューター(ライター・野球史研究者)上田龍の公式サイト「別館」

ペコちゃんだけじゃない。オレも泣いている……

2007年01月15日 | えとせとら

 我が家の近所にも、不二家の洋菓子販売店がある。常連客というわけではなく、商品を買うのは半年に1回ぐらいだが、それでも店のショーケースの中に、あのショートケーキがあるのを見つけると、いつも懐かしい気持ちになる。

 最近、たまたま子供のころの誕生日やクリスマスの写真を見る機会があったのだが、テーブルの中央に置かれていたのは、不二家のショートケーキ(フルサイズ)だった。当時、我が家に限らず一般的な家庭では、ケーキやコカコーラはこうした特別な機会しか親が買ってくれないものだったのである。
 現在では、フランスで修業したパティシエがオーナーを務める店があったり、逆に健康志向で自然の素材を生かしたシンプルなものなど、ケーキはすっかり身近なものになったが、それでもデザインがほとんど昔から変わらない、あの不二家のフルサイズのショートケーキに対する、憧れと言ってもいい気持ちはこの年齢になっても変わらなかった。そして、私と同じような思い出や、思い入れを持っている人たちは決して少なくはないだろう。

 そういう、大切な思い出を、よりによってメーカー自身が踏みにじるような真似をしてくれた。それは、ウィンドーを通して見ていたショートケーキを、客の目の前で土足で踏み潰したのに等しい行為だった。なんということをしてくれたのか……。

 いま、日本には「想像力欠如症候群」という社会的疾病が蔓延している。

・もし、肉親や家族を殺し、バラバラにしたら、必ず露見して、自分が捕まるばかりでなく、残された家族も世間のさらし者になるはずだ……

・市民の税金から支出されている「政務調査費」を、私的に流用し、改ざんした領収書のコピーを提出などしたら、結局はバレて、最終的に議員の職を失うことになる……

・税金をごまかしても、国税庁に告発され、重い追徴金を課せられるだけでなく、刑事被告人として裁判にかけられ、刑務所に入れられる……

・酒を飲んで車を運転したら、大事故を起こし、人の命を奪いかねない。

「してはいけないこと」を「したい」「してみようかな」「するかも」という気持ちは、おそらくどんな人間の脳裏にも必ずよぎるものだろう。もちろん、私も気に入らない人間の一人や二人、殴ってやりたいとか殺してやりたいと思ったことがある。
 だが、実際に行動に移す人間は私も含めてほとんどいない。そうした愚行がもたらす結末を想像できるからである。ところが、依然として少ないのだろうが、そんな当たり前の「想像力」を欠いたがゆえに、本当に人を殺してしまったり、酒を飲んでハンドルを握ってしまったり、消費期限切れの牛乳を使ってシュークリームを作り、それが発覚しても隠ぺいを図る……そんな「悪しき少数派」のパーセンテージがここ数年、どんどん増えているのである。

 不二家の場合、そうした経営陣の隠蔽体質が、結局は末端の従業員に影響を及ぼす。不二家のチェーンにはライセンスを受けて商品を受託販売しているフランチャイズ店もあり、その店主の方々にとってはまさに死活問題である。たとえ工場の操業や商品の販売を再開できたとしても、当然社会的信用は地に落ちたから、営業休止中の損害を補償してもらっても、むしろ販売再開後こそが「いばらの道」となる。
 
 グリコ・森永事件のケースと違い、まさに企業(愚かな経営陣)が自らまいたタネだから、社員救済のために商品の購入を積極的に呼びかけるのは躊躇せざるを得ない。「雪印事件」の悪夢が頭をよぎったというのであれば、なぜ同じような隠ぺいに走ったのか……。藤井社長以下、まさに「想像力」を欠いた経営陣の責任は、従業員やフランチャイズ店主は言うに及ばず、われわれ消費者も厳しく追及してしかるべきだろう。

 衛生・品質管理体制が根本的に改められ、経営陣が責任を取って総退陣し、残された従業員が生まれ変わった体制の下、自信を持って作り出したショートケーキを「どうぞ」と差し出されたとき、私はぜひそれを食べてみたいと思っている。だが、その日が訪れるまでには、一ヶ月や二ヶ月ではなく、半年、一年という時間が必要なのではないだろうか。
 
個人的な気持ちとしては、雪印よりも不二家のブランドが消えたり縮小した場合のほうが、おそらく心に受けるダメージは比べ物にならないほど大きいはずである。



最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
おはようございます (ADELANTE)
2007-01-15 06:19:53
おはようございます。



石原都知事とかそれでも逃げきれそうな方や責任があるのに責任をとらなくても大丈夫な方々はそれなりにいらっしゃいますので、

俺だけは、あたしだけは逃げられると勘違いしている人間は多いんじゃないですかね。
返信する
う~ん… (かりん)
2007-01-25 19:31:05
上田さん、こんにちは。久しぶりに拝読させていただいてます。

私は不二家の商品にあまり縁がなかったせいか、最初にニュースを聞いても驚きませんでした…って私のこの感覚からしてマヒしてますよね(汗)。
同じように一連の雪印事件を思い出しました。
>経営陣の隠蔽体質が、結局は末端の従業員に影響を及ぼす。
私もこのことが気になります。

スーパーなどは即刻不二家製品を店頭から撤去しましたが、ホームパイやミルキーまで撤去するのはやり過ぎじゃないのかと私は思いました。
(ペコちゃんがかわいそうだ!)
報道側が編集してあるでしょうから本当のところは分かりませんが、撤去する側に抗議のような強い意思があるように感じなかったから余計です。
それに「撤去」なんて報道する必要はないと、店頭で説明文を読めば済むことだと私は思います。
むしろ鬼の首でも捕ったかのように報道(公開井戸端会議?)しているなと…。
それに踊らされると私たちはもっと大事なことを見逃してしまうんじゃ?と思います。
そんな報道機関(?)の1つが、ウソウソ番組を流すんですから、日本の報道(特にテレビ!)て何様?と云いたくなりました。

因みに我が家は殆んど地上波を見てなくて、スカパーばかりなので一般のCMに疎いです(苦笑)。
長文失礼しました。
返信する