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「イミテーション・ゴールド」のボンズ

2006年05月13日 | Baseball/MLB

左中間へ大飛球が上がっても、全力で追いかけるのはセンターのスティーブ・フィンリーだけ。5点をリードされ、先頭打者として打席が回ってきた場面、本当ならばソロホームランよりも出塁してランナーを貯めたい場面でも、観客席やベンチはゲーム展開に関係なく、一発を期待せざるを得ない……。

バリー・ボンズの「714・715号本塁打狂騒曲」は、ベースボール本来のあり方を考えれば、やはりまともではない。全盛期の彼ならば、フィンリーよりもはるかに早く打球に追いついていたはずだし、5点もリードされて先頭打者として打席が回ってくれば、右中間や左中間に弾丸ライナーを放って、猛烈なスライディングで二塁、あるいは三塁を陥れていたはずだ。

忘れてならないのは、ベーブ・ルースの本塁打の多くは、ヤンキースの勝利に大きく貢献してきたからこそ価値があるということである。王貞治の868本とて同じことだ。ベースボールはチーム同士が得点を競い合うゲームであり、ホームランの本数を比べ合うのが本質ではない。マーク・マグワイアがロジャー・マリスのシーズン61本を破ったときもそうだった(カージナルスは地区優勝争いにすら絡むことができなかった)が、真に相手投手とチームを打ちのめさず、味方の勝利に貢献できない一発は、間違いなくその価値が半減する。
私だったら、たとえ今日AT&Tパークの外野席に座っていたとしても、ボンズのホームランボール争奪戦には参加しないだろう。

現在のボンズは、真の黄金ではなく、「イミテーション・ゴールド」なのだ。



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2 コメント

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ボンズの、ボンズによる、ボンズのための... (jeter)
2006-05-13 14:31:28
おっしゃるとおりですね。

完全に試合展開はそっちのけでした。

フィンリーのムッとした顔が印象的でした。

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風向きをみていなかったあなたが悪い (ADELANTE)
2006-05-13 17:50:28
|左中間へ大飛球が上がっても、全力で追いかけるのは

|センターのスティーブ・フィンリーだけ。



左中間といっても、全盛期のボンズだったら楽々追いつていたなんでもない打球でしたね。(いつから重役選手になった>ボンズ) しかし、重役がそんな態度の会社は、今や、生き残れない時代になりましたが。



はやく指名打者制度のあるア・リーグ行けと言いたい気持ちになりました。



フィンリーもボンズに向けて「4 letter word」を発していたような気もします。どうせなら観衆の面前でボンズを呼んで注意すればよかったって?(まさかホームでそこまではできないだろうけれど)



|観客席やベンチはゲーム展開に関係なく、一発を期待せざるを得ない……。



これは彼だけの責任ではないでしょう。ホーム球場の観客は彼のホームランを、記録を期待しているのだし。(そして、結果としてプレーオフにはでれないことになるから、観客も自業自得ですが) アウェイの球場だったら事情は違うでしょうが。



今日の放送で、松原さんが(誤解をおそれないで言うけれど)「私が(薬の)誘惑に負けないと言える自信はない」とコメントしていましたが、たしかにそのとおりでしょうね。あの当時はMLBの規制はなかったも同然だから。ここ5年で急速にゲームのルールがかわり、その「逆の恩恵」の風をボンズはまともに受けているわけですが、それは運が悪かったというより、悪いことをしていたのに、風向きをみていなかったあなたが悪いとしか言いようがないとおもいます。
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