ミツルのブログだよ!

ライブレポなど自分の妄想と覚書。

Episode of 鳳ツルギ chapter4 光と闇

2018-10-09 20:11:51 | 作品
※宇宙戦隊キュウレンジャーのファンフィクションです。
個人的妄想と捏造で構成されております。
公式関係各所とは全くの無関係です。
でも、もし、万が一、公式がこんな作品作ってくれたら狂喜乱舞します。Vシネでよろしく勇気。
「俺ガン」ならぬ「俺ツルギ」です。

この作品の前提。
・キュウレンジャーの時代から360年くらい過去
・ツルギはこの時点で250歳くらい(本人にも正確な歳は不明)
・宇宙連邦成立前、即ちドン・アルマゲ発生前
・ホウオウソルジャーとして覚醒前




 見慣れたのとは全く違う夜空。知っている星座は形を変えていてただの星の塊にしか見えないが、同じ宇宙を眺めている事には変わりがない。野営地から少し離れた小高い丘の上に、コートを脱いだラフな姿でツルギは寝転がり、星空を眺めていた。サクサクと草を踏みしめる音が近付き、ツルギの隣にどかりと腰を下ろす。
「また空を見ているのか」
「ああ、俺様が統治すべき星々だ」
「ここからではオリオン座は見えんなぁ」
「太陽系なんか方角はあってるんだがド辺境すぎて肉眼では見えんぞ」
 そう言ってツルギはクツクツと笑って肩を揺らす。
「なぁ、オライオン、平和になったらお前は何がしたい?」
「平和になったら、か」
「この戦いが終われば宇宙統一が叶い、平和が訪れるだろう。そうしたら、順次治安維持以外の軍事力は極力縮小させる。お前も、ろくでもない戦いから解放されるんだ」
 オライオンが生まれたときからすでに宇宙は戦争を続けており、局所的な短い平和はあったものの基本的には戦乱の中にあった。そしてオリオン座最強と謳われたオライオンは常に戦いに身を置き続けていた。だから、ツルギの言う恒久的な平和がまだぴんとこないと言うのもあった。
「そうだなぁ、嫁さんでももらって、星(くに)に帰るかな」
 驚きに目を見開き、思わず上体を起こしてオライオンを凝視する。
「なんてこった……、いつの間にそんな相手がいたんだ」
「いや………、まだ、付き合ってもいないんだがな」
 照れくさそうにオライオンは頭を掻いて見せる。
「そうか、お前がなぁ。それで、堅物のお前の心を射止めたのはどんな女性だ?」
「聞いてくれるか?」
 相手の女性の事を話すオライオンの表情はとても戦場での様子からは想像もできないほど穏やかで、ツルギは眩しそうにそれを眺めながら時折頷いたりしながら聞いていた。自分にはもう望むべくも無い人並みの幸せを、親友には存分に受けてもらいたかった。
 丘の下からキマリが二人を呼びに来る。
「おいおい、俺はツルギを呼んできてくれって頼んだんだけどな」
 楽しそうに話し込んでいる二人を見て、苦笑いを浮かべながらオライオンに抗議の声を上げる。
「すまん、そうだった」
「明日の作戦の確認だな、戻るか」
 オライオンの肩を軽く叩いて促し、脇に置いたままだった深緋色のコートを手に取り立ち上がると、肩に引っ掻けてさっさと丘を降りていく。その表情は既に冷徹な指揮官のそれとなっており、先程までの穏やかさは微塵も感じさせなくなっていた。


 宇宙艦隊で既にこの星系の殆どは制圧しており、残るは首都惑星での抵抗を一掃するのみ。艦隊戦に関しては正式な軍事力を持たぬ反統一勢力だったが、個々の人種の実力を発揮できる地上戦ではまだまだ強大な勢力と言えた。身体能力に長けた獣人種に森でのゲリラ戦を張られては、さすがにツルギも苦戦を強いられている。
 ドロイド部隊を先行させ、偵察と共に攻撃を仕掛けるが、しかしそれも相手側の思う壺でドロイド達は次々と破壊されていった。
「さすがにドロイドではトリッキーな獣人種のゲリラ相手には荷が重いか」
「破壊された位置情報は転送済みだ、敵本営の位置を計算させる」
「その必要はない、俺様に見せろ」
 手元の作戦端末を操作し、周辺の地形図とドロイドの破壊されたポイントをリンクさせる。そして、一点を指し示しキマリに投げ返す。端末を落とさぬよう慌てて受け取り抗議の視線を送るが、そのポイントを見てキマリは首を捻る。
「本当にここか?」
「なんだ、俺様が信用できないか?」
「いや、まあ、戦略的にはさほどおかしくはないが……」
「相手も教科書通りの場所に本営を置いたりはしないだろ」
「念のためカメレオン座のシノビを偵察に出すか……?」
「好きにしろ、奴らはどうせこの星からは逃げられない」
 ツルギの表情が僅かに曇る。本来ならば彼らも宇宙連邦の一員になるはずで、できれば殺さずに済めば良いとは思う。だが、相手に情けをかけて味方の損害が出て戦いが長引いては元も子もない。敵も味方も、これまで多くの命を失ってきた。統一までもう一歩のところまで来て足踏みをする訳にもいかない。


 状況が一変したのはそれから三日後。衛星軌道上にあったドロイドメインサーバー搭載の艦が撃墜されたのだ。宇宙での戦闘能力はほぼ無いと踏んで油断していた節もあったが、民間船を改造した船に爆薬を搭載して自爆テロという手段に、初手で反撃の手を躊躇ったのもあった。サーバーを失ったドロイドはただの鉄屑と成り果て、その数を頼っていた連合側は数的劣勢へと追い込まれた。
「いずれ対策を取られるとは思っていたが、このタイミングとはな」
「ツルギ、一旦衛星軌道まで撤退して、惑星ごと封鎖をして持久戦に切り替えたらどうだ」
「ダメだな、他星系からの敵の増援が到着したら艦隊との平行戦闘になる。勝てないとは思わないが色々と面倒になるぞ」
「こんな時に………」
「確かに、もっとも効果的なタイミングと言えるな」
 敵にも優秀な作戦参謀がいるのかも知れないなぁ、と、ツルギは妙に感心してしまう。主義主張が異なるだけで、相手も優秀な人材を集め、戦争を有利にするべく努力と投資を行っている。それは称賛される事ではあるが、敵対する側としてはあまり手放しで喜ぶ訳にはいかなかった。
「こちらは数も不利だし地上での長期戦は難しい。短期決戦のために敵の本営ごと叩き潰す」
「それしかないか……」
「オライオン、部隊を二手に分ける。一隊はお前が指揮する本体、もう一隊は陽動の俺様の部隊」
「ツルギも前線に出るのか?ここの指揮はどうする」
「キマリ、お前がここで作戦を統括しろ。俺様はそれに従って敵を引き付ける」
「冗談キツいぜ……。他の奴らが俺の指示になんて従う訳無いだろうが」
「問題無い、従うのは俺様とオライオンだ、他の奴らは俺様達に従うだけだ」
「そもそも司令官自ら最前線に出ていく必要なんて無いだろ?」
「前線に出てまたケガをしたらどうする。俺と別行動で誰がお前を連れ帰るんだ」
「そうだぞツルギ、陽動だけなら他のヤツに任せればいいだろ」
 二人が反対するのも当然で、万一に備えてツルギには本営での最後の砦として残って欲しかったからだ。そんな二人の反対はツルギも当然予測していて、不敵な笑みを浮かべながら二人にむかって問う。
「なあ、向こうが唯一勝つ方法はなんだと思う?」
 少し考える素振りを見せたがオライオンはあっさりと肩を竦めてわからないと告げ、思い当たったのかキマリは難しい表情でツルギを見る。
「…………お前を、倒す事だ」
「その通り」
 ツルギは笑いながら人差し指をキマリに突き付ける。他の者にやったら無礼だと激怒するような態度だが、そこは親友とも呼べる二人の間ではもちろんそんな事はない。
「すなわち、反統一勢力が勝利するにはこの俺様を倒さなければならない。わざわざこんな辺鄙な場所で勝ち目の薄いゲリラ戦を張っているのもなんとか俺様を誘きだして倒すためだ」
「つまり、お前はそれをわかってて乗ってやるのか」
「そうだ」
「陽動と言うよりは、エサか」
「俺様が前線に出てやれば、敵も必ず大挙して巣穴から出てくるだろう。そこをオライオンと挟撃できれば理想的な包囲戦ができる」
「なら、余計に危険じゃないか。死に物狂いで来られたら何が起こるかわからんし、死なないお前でも大ケガをさせられたら動けなくなる」
「だから、本体と作戦本部をお前達に任せるんだろ。万一俺様が倒れてても、本拠地ごと敵を一掃すれば戦いは終わる。まぁ、俺様が死ぬことはないから安心しろ」
 オライオンに担がれて搬送された前科があるだけに安心するのは無理だが、確かに短期決戦を挑むにはそれが最も効果的なのは理解できた。だがやはりツルギがいなければ総崩れの可能性もあるわけで、オライオンはキマリと相談して憲兵による身辺調査の確実な者だけをツルギの隊に配属する事にした。




 ツルギの部隊は囮としての役目を充分果たしていた。森のごく浅い位置で挑発するように敵の小隊を潰し、奥まで踏み込まずに森を出たりと目立つように振る舞った。相手もあからさまなパフォーマンスにそれが罠だと知りつつも乗らざるを得ない状況であったため、程なくして敵本隊が襲いかかってきた。
 ツルギとしてはオライオンの到着まで戦線を維持する事が目的ではあるが、あまりに消極的過ぎても敵も警戒し深追いしなくなる、こちらからの攻勢も見せつつ徐々に後退して、森の外まで引きずり出すのが得策だった。敵の位置やオライオンの状況は逐一キマリから送られて来るので、それに基づいて極力相手に本営攻撃を悟られぬようにするのも重要で、必然的にツルギの隊は昼夜連戦状態へと突入し、屈強な隊員たちもそしてツルギ自身も疲弊していった。少ない人数の中から更に交代で休息をとらせ、だがツルギ自身の代わりはないので、不眠不休での戦闘である。いくら不死の体とは言え、疲労も溜まるし休息無しでは活動に支障が出てもおかしくないが、それを精神力での無理矢理持たせていた。
 オライオンが敵の本営を壊滅させた報が届いたのは戦闘開始から5日以上もたってから、一先ずは作戦の成功と言える。本拠地を失えば補給も滞り、敵は戦線を維持できなくなるだろう。本拠地破壊したその返す手でこちらへと向かうオライオンの本隊、もう、あと少しで勝利は目前だった。
 だが、その報を最後にキマリからの連絡が途絶えた。状況が全くわからないままの戦闘はツルギですら不安になると言うもので、ましてやもう一週間近く休まず戦い続けていたので、ツルギは現在の自分の判断力をあまり当てにはしていなかったからだ。
 丸一日たち、漸く通信兵が前線のツルギの元へと駆け寄ってきた。
「ツルギ司令官!大本営からの通信です!」
「待ってたぜ……!」
 敵に傍受される恐れがあるため、通信は衛生軌道艦隊を経由しての暗号通信となっている。そのため多少のタイムラグはあるものの、生真面目な参謀は逐一定時通信を欠かさなかった。それが途絶えたと言うことは余程の事態が起きたと想像すべきだろう。戦闘のない後方まで下がり、端末に指を走らせる。だがそこに浮かび上がった文字はツルギの予想もしていない物だった。

『キマリ総参謀長  戦死』

 ツルギの元より大きな目が一際見開かれ、そして眉間の深いシワと共に細められた。
「一体、どう言う意味なんでしょう……」
 横で同じく端末を見ていた通信兵が口走る。
「…………意味も何もない、そのままだ」
 ツルギの形相を見た通信兵は思わず息を飲んだ。心なしかツルギの声が震えている様にも思えたが、それは悲しみからではなく怒りにも似た感情で。
「暗号通信でオライオンに連絡しろ。敵を一人たりとも生かして帰すなよ」
 その後ツルギの表情から感情を窺うことはできなかったが、彼は怒りと復讐心を押さえ込み、冷静に苛烈で容赦のない攻勢へと転ずるのであった。

 キマリの戦死はもちろんオライオンの方にも伝えられており、その後送られてきたツルギからの通信に天を仰ぐより他なかった。ツルギとオライオン、互いに連絡を取れない事はないが、どちらも今は戦局全体を見渡す事はできない。補給や怪我人の受け入れなど後方支援を一手に引き受け、その役目を行っていたキマリがいなくなり、これから長期間の戦闘行為が難しくなったのは明らかだ。それゆえのツルギの通信でもある。
「副司令、弔い合戦ですか?」
「そうとも言えるが、俺達は宇宙統一と言う大義名分で戦っているんだ、そこを履き違えるなよ。私怨を掲げては戦えん」
 それはツルギもわかっているはずだと、心の中で呟き自分の両頬を叩く。悲しむのは勝ってからだ、目の前の戦闘に集中しろ、そう自分を叱咤してオライオンは敵本隊の後背を捉えるべく、追撃を急いだ。
 



 夢を見ている時は、それがあたかも優しくて美しい物だと思っていた。平和になった宇宙、争いもなく、皆が幸せに暮らせる穏やかな理想の世界。宇宙を統一したらそんな世界が訪れるのだと、漠然と考えていた。意味の無い争いを繰り返しながら、少しずつその理想に向かっているはずなのに、実際はどうだろう。理想とは裏腹に宇宙が一つになったとしても、あの時思い描いていた世界とは全く違う物のようにしかならないのではないか。日々戦いは激しさを増し、自分の手は血に汚れていくばかり。これまで手にかけてきた命、失った仲間の命、救えなかった命、多くの命の犠牲の上に聳え立つ理想。本当にこれでいいのか、と何度も自問する。結論はいつも同じ。ここでやめてしまったら失った命は無駄になる、同じ理想を夢みる人々の期待もある、始めてしまった責任とでも言うのだろうか、そんな物も感じている。そして、自分以外にそれを成し得る者は宇宙中を探してもいない。おそらく宇宙が一つになっても争いは無くならないし、ささやかな幸せといくつかの不満を抱えながら人々は優しく身勝手に生きていくのだろう。それは夢のような理想郷ではないけれど、理不尽に命を奪われる事のない平和なのだ。

 最後の一人となった獣人種を斬り伏せ、肩で息を切らせながらツルギはその場に立ち尽くす。ツルギを倒すことを目的としていたので、自然に最も苛烈な戦いをしていたのがツルギ自身だった。返り血を全身に受けて深緋色のコートを更に深紅で染め直し、足元は泥で汚れ、体には傷を散りばめ、その戦闘の凄惨さを物語っていた。だがその表情にはなんの感情も読み取れない。
 ぽつりぽつりと水滴が落ちてくる。やがて、戦場だった場所は雨に包まれた。
 敵味方の屍の中で佇み、天を仰ぎ目を閉じる。その頬を水滴が流れ落ち、まるで泣けないツルギの代わりに天が泣いているかのよう。重力のままに垂らされた手には刃毀れの目立つ愛用の剣が握られたまま。雨は彼の罪をも洗い流すかのように降り、灰色の世界の中で唯一の色の深緋色のコートが鮮やかにしなだれていた。生き残った者達はその光景が絵画のように記憶に焼き付いた。戦いが終わってツルギを見たオライオンも、死ぬまでその光景を忘れられなかったと言う。

 補給が途絶え応援も見込めない戦いだったが、唯一の救いはオライオン率いる本隊の到着がかなり速まった事と、敵の後背を奇襲する事ができた事。キマリの事で我を忘れていやしないかとツルギが心配だったこともあるが、短期決戦を挑むより他に手段が無かったのもある。オライオンは脱落者を出しながら考えうる最大の速さで戦場に文字通り"駆けつけた"のだ。結果的にそのオライオンの判断は正しかった。
 戦闘後、本営に戻ったツルギとオライオンは参謀の一人にキマリの最後を告げられた。彼は長らく探っても見つけられなかったスパイによって討たれた。ただでは死なず直ぐ様反撃の銃弾を相手に食らわせ、道連れに葬ったのだと言う。死の直前、もう一度三人で酒を飲みたかった、と呟いたと彼は涙ながらに語る。ツルギはその死に顔見ても涙一つ流さなかった。代わりに、オライオンと二人で酒を酌み交わしキマリを弔った。涙など彼は求めていないのを知っていたから。
 衛生軌道の艦隊に連絡を取り、全宇宙へと向けて通信を送った。

 戦争の終結と、統一宇宙の誕生を――――。





 戦争から二年後、宇宙連邦の正式な発足と初代宇宙連邦大統領の就任セレモニーが行われる政府官邸の会場広場には、八十八星系のあらゆる人種がその瞬間を見ようと詰めかけていた。
 たった二年で全宇宙をまとめあげ、新たなる政治体系を構築したツルギの政治的手腕は感嘆に値するものだった。元老院を廃止し、大統領を中心とした議会制度を導入しながらも、各星系にはある程度の独立自治を容認する連邦と言う形態に拘ったのは、一重にツルギが歴史や文化にも造詣が深くその保全の意味もあったが、彼らの反感を極力少なくするためでもあった。また、ツルギの中にあった"大統領になったらやることリスト"の筆頭でもある、共通言語の設定と教育に関しても、連邦から補助金を出して各星系に教育機関を設けさせた。いずれ星系間のコミュニケーションが容易になれば、誤解や無用の争いは少なくなるであろう。軍事力に関しては、治安維持としての最低ラインを保ちながら、多くは警察機構へと移行していく過程を作りつつある。また、戦争の事後処理として、戦場となった各惑星での復興、インフラ整備、福祉や医療の分野においても気を配り、鳳ツルギの名は全宇宙の人々の間で歓呼をもって叫ばれ、その期待と希望とを一身に受けていた。
 そんなツルギが初代大統領就任とあれば反対する者などいるはずもなく、今日この日は全宇宙で祝うべき記念日となった。

 純白のスリーピースのスーツ、ややクラシカルなデザインではあるが、長身で細く引き締まった体躯のツルギが着ればどんな服でも最新トレンドとなる。トレードマークのコートの深緋色ではなく
白にしたのは新たなる時代の到来の意味もあるが、あの色は戦うツルギの色だからだ。これからは政治家としての鳳ツルギの始まりなのだ。ただそれでも、ネクタイだけは鮮やかな赤色を選んだ。
 姿見の前で自分でネクタイの緩みを直し、ヘアメイクをする女性が髪の毛一本たりとも乱れさせまいと念入りにヘアセットをするのに任せ、ツルギは鏡越しにオライオンに笑いかけた。
「来てくれたのか」
「ようやく、だな」
「いいや、これからさ。やることも問題もまだまだ山積みだし、今日は形式としての始まりに過ぎない」
「ふふっ………お前らしいな」
「オライオン、お前こそ副大統領か連邦軍司令官の座を提示されておきながら、それを蹴ってまで引退とはな」
「平和な世の中と言うのを俺は今まで経験したことがないからな、オリオン座にいる両親の元へと帰る」
「ああ……それがいい」
 少しだけツルギの表情が寂しそうに見えたのは、オライオンにしかわからなかっただろう。何百年と生きてきて親しい者を失う苦しみを避けるために、他者との関わりを極力避けてきた彼が唯一作った戦友。一人は戦場で倒れ、そしてもう一人は今まさに彼の元を去って行こうとしていた。ツルギの就任を見届け、その足でオライオンはオリオン座へと帰る。その傍らには伴侶となるべき女性の姿もあり、彼の幸せを願うツルギに彼を引き留める言葉はついに見つけられなかった。
「じゃあ、俺は会場で見ているからな」
 背を向け、手を降りながら立ち去ろうとする背中に言葉を投げる。
「オライオン」
「なんだ」
「幸せになれよ」
「ああ」
 今度こそオライオンは立ち去った。死別ではない、生きていればいつかまた会えるだろう。そう、鏡の中の自分に言い聞かせて。

 壇上に現れたツルギを、人々が、全宇宙が歓喜の声でもって迎え入れた。


『俺様が初代宇宙連邦大統領の鳳ツルギだ。今日ここに宇宙連邦政府の樹立を宣言する』






 最も輝かしい日、まさにその日、宇宙の片隅で最も濃い闇が生まれた――――。





 episode of 鳳ツルギ
        chapter4 光と闇











あとがき

はい、ようやく、ようやくここまでこぎ着けました。あと少しです。クライマックスに向けて、あと一話で終われるかと思います。たぶん。
もうほぼオリジナル話になってますけど皆さんついてきてくれてますかー?!感想や励ましのお便り待ってます(笑)




どうでもいい補足ですが、はるか未来の宇宙でなぜただの剣なのか、なぜゲリラ戦とは言え肉弾戦なのか。私も書いててホントに未来の話なのか疑問なんですが、それは本編見りゃわかるとおり、あいつら88星座戦士たちでドン・アルマゲにアナログ肉弾戦挑んでたじゃん。てことはそう言う戦い方なんだよ。艦隊戦もあることを匂わせたのはジャークマターが宇宙空間で艦隊戦仕掛けて来たじゃん。そう言う事なんだよ。ちゃんと本編に乗っ取っての事なんだよ(笑)。私も面倒だから、未来のくせにもっとぶあーーっっ!!とか、がーーーっっ!!とかやっつけたいよ!!!!(笑)
あとまあ、肉弾戦の理由は個々の星系の特殊能力などを発揮するためでもあるだろうし。いちいち考えるの面倒だから書かないけど(笑)。





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