アメル『裏の裏?』
ファラン『そうじゃ■ωー』
オムー『トカマク様は燕返しが必殺技で、クルスがその攻撃待ちであることがわかっていたんだ。その待ちの体勢を逆に利用して即座の突き攻撃をしてきたってことだぉ=ω=.』
王様『なんとも・・さすがじゃ・・あの小娘(■ω■.;)』
アメル『燕返しの返し技返しってことか・・もうアメさん頭パンクだわ(-w-´;)ヤヤコシ』
エビちゅ『通常人では間違いなく一番強いのではないでちょうかね( ̄ω ̄ )』
依然クルスにはトカマクのブレイドソードが胸から背へ突き刺さったままだ。通常であればブレイドソードを胸奥深くまで突き刺した者が優勢ととれるはず。否、それは勝利を決したともとれる戦況であることは間違いない。
しかしその状況はクルスという推し測ることのできない強さを認知したものにはわかっていた。
りん『・・・トカマク様><・・逃げて!!』
トカマクはすぐさまブレイドソードの柄を下へ切り込みながら抜こうと握り締めた。
すると・・
トカマク
(・・なに!?)
クルスに刺さっているその剣は微動だにしない。
トカマク『・・ふんっ!!・・ふん><!!』
クルス『・・・・・。』
トカマクのブレイドソードは鉄柱さえも一刀両断できる諸刃の名刀であったが、上下揺さぶりながら勢いをつけて動かそうにも、クルスの体を切り裂くことも抜くこともできないでいる。まるでクルスの体の一部のようにぴくりとも動かせない剣はいまだ左胸に刺さったままである。
クルスの体へ入り込んだ剣は今やクルスの分厚い筋肉で包まれている。その筋肉はしっかりとトカマクの剣を包み込んでいるのだ。歓声は一段と大きくなった。
『わぁぁぁぁあああああぁぁ!!!』
『ああぁぁぁあああああぁ!!トカマク様ぁ~!!』
顛末を読み取ることのできない観客達の喝采を博し、無我夢中で剣を抜こうとしているトカマク。その賛美は雑音にしかならなく、トカマクにとり、その戦局は既に見えていた。
トカマク『・・・・ここまでか・・』
伝説の獅子の中、最も強さを追求した猛者であるクルスの制空権内にて囚われの身となっているトカマク。それは蜘蛛の巣に捕まった蝶々とも、蛇に睨まれた蛙ともいえる。
剣は抜けず、丸腰で立ち向かうという暴挙に挑むことになってしまったともとれるその状況。トカマクの額の冷や汗は止まらない。
トカマク
(さすがクルス・・相手にならなかったか・・)
クルスは剣を持つ右手を高々と上げ、振りかぶっている。
クルス『・・・・(゜Д゜)』
覚悟した死を目前にしたトカマクは、何万もの歓声の中、うっすらとクルスの体の隣に映るアメルやりんが目に入っていた。心配そうに見ているアメルやうつむきこちらを直視できていないりんの姿がある。
りん『・・・トカマク様><・・』
アメル『・・・(>w<;)』
ファラン『逃げんか・・・あやつ承知で挑んだか・・(■ωー)』
オムー『・・・・=ω=.;』
戦士として、自らの命を国へ捧げてきたその勲章は、戦いの場にて死に逝くこと。自らが教えた剣術を天才たちは意図も簡単に習得し、己を超えていった。その国を支える強さである部下の剣にて死するその一瞬は、トカマクにとり、この上ない恍惚感に満たされていくのだった。
歓声の中、心の中で呟いている。
『わぁぁぁああああぁぁぁぁ』
『わぁぁあああぁぁ』
トカマク
(・・・りん・・みんな・・・あとは頼んだわ・・・)
動くクルスの剣から反射された眩しい太陽を感じたトカマクは、強くなった部下を思う喜悦した感情から、笑みをこぼしたまま目を瞑った。
『わぁぁぁぁぁああああぁぁ』
『わぁぁぁあぁぁぁぁあぁ』
しかし、すぐに鳴り止み聞こえなくなるはずの歓声は一向に鳴り止むことなくトカマクの耳に聞こえてきている。
トカマク『・・・・・?』
『おまえは女だ』
突拍子もないその不為な台詞が耳に入ってくる。訝しげにトカマクは目を開けると、振りかざしたはずのクルスの剣は、右手になく、背負われた鞘に戻っているのだった。
トカマク『!?』
ファンブルグの豪腕と評されたクルスの左手はトカマクの髪の毛を掴み、突如トカマクの首筋を嗅ぐように自らの体へ引き寄せている。
ガシッ!!
トカマク『・・・ぅ!!』
トカマクの髪の毛を無造作に掴んだまま、再び距離を作ったクルスは睨むように見つめながらこう言葉を発するのだった。
クルス『・・・おまえは指揮官や戦士である前に、女だ(゜Д゜)』
トカマク『・・・!?』
クルス『どんなに強くなったにしろ、お前は男でも伝説の獅子でもねぇ(゜Д゜)おまえのその華奢な肩、膨らんだ胸、括れある腰、女の香りは戦うために作られてるんじゃねぇんだ、身篭る体だ』
強くなることに全てを掛け、冷酷無情の猛者と呼ばれたクルスの口から出た思いがけない台詞。トカマクは呆気に取られている。
そして今までの剣術の攻防の意味をなくすかのようにクルスはトカマクの髪の毛を引きちぎる程の強さで投げ飛ばした。
ブンッ!!!
トカマク『くぁっ!!』
バコーーーーーーーーーーーーーン!!!
遠く離れた観客席の目の前にある壁に勢いよく叩きつけられてしまったトカマクは、一瞬何が起こったかわからないでいる。無論観客達もだ。
トカマク『・・・ぅ・・・く・・・』
クルス『・・・・(゜Д゜)』
静まり返る闘技場。
クルスは何事もなかったかのように胸に刺さった剣を右手で引き抜いている。
ギギ・・
およそ痛みという感覚神経などないのか、その刺さった剣の柄は持たず、両刃を思い切り掴み引き抜いているクルス。指骨まで達するまで強く握り締められた右手は尚も強く握り締められている。
・・ギギギギギギギギギ
ブシュッブシュシュ~!!!!
カランカランッ!
まだ主がいる喜びを感じているように石畳の地面にて跳ねて落とされたトカマクの剣。クルスの傷は出血量こそひどいが心臓へのダメージはなく、クルスは血を滴り落としながらリングを平然と降りている。
会場内の沈黙を破ったのは、審判員。
『じょ・・・・場外ぃ~~!!!トカマク選手の場外でクルス選手の勝利ぃ~!!!!』
剣が刺さったままの胸をものともせず、トカマクを投げ飛ばしたクルスへワンテンポ遅れるように歓声が闘技場を包み込んでいる。
『おおおぉぉぉおおおぉぉぉぉぉ!!!』
『おおおぉぉぉおおおおおおぉぉぉ!!!』
りん『クルスが・・・戦いの場で殺生をしなかった・・』
ファラン『あやつにとって伝説の獅子を目の前にしたときだけが戦いだといいたかったのかもしれんのぉ■ωー』
りん
(・・・そうなのかしら・・)
りんは感じていた。何かメッセージがあったのではと。部下への敗退による死を捧げる覚悟あるトカマクへ、クルスは何を伝えたかったのか。命の大切さであろうか。
思っても見ないその戦いぶりにりんだけではない、トカマクも場外へ投げ飛ばされた壁への衝撃を堪えながら放心状態でいる。
トカマク『・・・クルス・・・』
『クルス選手!ものすごい剛力だぁ~!準決勝なんなく進出~!!!』
『わぁぁぁぁああああぁぁぁ!!』
『あああああああぁぁぁぁぁぁあぁ!!』
アメル『ぁ・・・試合おわった(ノwノ )?』
オムー『おわったぉ=ω=.』
直視できなかったアメルも薄目をあけリングの様子をみている。
アメル『あぁ!!トカマク様無事だっ(;w;´)ノ!!』
王様『えがったのぉ(■ω■.)』
エビちゅ『勝敗は場外で決まりまちたよ( ̄ω ̄ )』
オムー『戦うのは獅子である俺たちだけで十分っつーことかな=ω=.』
第一師団の衛兵たちに抱えられながらトカマクも通路へ戻っていく。ハンカチを手にし目元へそっと持っていくりんは、歓声の中通路へ消えていくクルスが涙で滲んでみえない。
アメル『あれ・・もしかして次の試合ってオムさんとりん(・w・´)!?』
オムー『そうだぉ=ω=.』
りん『・・そうだったりする(*^▽^*)』
王様『楽しみだのぉ(■ω■.)』
ファラン『まったくじゃ■ωー』
この世の平安を取り戻す為に生まれてきた天才戦士たちである伝説の獅子たちは、敵対する国からファンブルグ国を守る戦いだけに徹してきた。しかし今大会の目的は違う。己の強さを証明するためだ。
真価を問うべく集まってきている勇士あるものたち。
それはトカマクのように、全てを、生死を掛けた戦いなのである。
そして次なる試合は、未だかつてなかった伝説の獅子と呼ばれた者同士の戦い。魔法剣を使いこなすオムーと弓術の天才りん。
その戦闘は本物と呼ぶにふさわく、壮絶極まりない戦いになることは避けて通れない。今の今まで観覧席にて仲間として話し合うオムーとりんも、その数分後には死闘を演じていることになる。
オムー『・・さて・・いくかな=ω=.』
りん『・・・そろそろね^^』
百戦錬磨として無敗を誇ってきた伝説の獅子である二人。
軍配が上がるのはどちらなのであろうか。
本当の戦いは、これからだ。