KISSYのひとりごと

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過去から学ぶべきものは何か~ETV特集「摩文仁 沖縄戦 それぞれの慰霊」

2013-09-02 00:19:21 | 教養・ドキュメンタリー

 昨日から泊りがけで出張。宿泊先で「摩文仁 沖縄戦 それぞれの慰霊」を見ました(NHK、8月31日日放送)。

 沖縄本島南部の摩文仁の丘。いまから68年前の6月23日、沖縄を守る第32軍司令官の牛島中将は、この地で参謀とともに自決、米軍はこの丘に星条旗を立てました。そして沖縄における日本軍の組織的抵抗は終わりを告げることになります。沖縄戦でもっとも多くの犠牲者を出したのが、この摩文仁だと言われています。

 その摩文仁で、さまざまな慰霊が行なわれています。沖縄県民はもちろん、戦友会、各県の遺族会、さらには自衛隊、そして米軍まで。日米両軍の将兵として沖縄で戦死された方、武器も持たず戦闘の巻き添えになった多くの民間人・・・ひととつの命の重さに違いはありませんが、それぞれの慰霊のあり方の違いをあらためて感じさせてくれた番組でした。

 摩文仁の地に沖縄戦の犠牲者を供養する碑がはじめて建立されたのは1946年のことです。摩文仁で戦争の犠牲者の遺骨を収集し、供養したのがはじまりだといいます。遺骨収集をはじめたのは地元の人たち。「遺骨収集は反米感情をあおる」という米軍の反対をおしきっての遺骨収集でした。その数3万5000体。故人の遺骨が遺族のもとに帰ることがほとんどなかった沖縄にとっては、このとき建立された「魂魄の塔」は、「お墓にも似た場所」だといいます。 

 しかし沖縄の日本本土復帰で摩文仁の慰霊は大きく様変わりをします。旧日本軍の戦友会、各県の遺族会による「慰霊塔」が摩文仁に建てられたといいます。その数、40超。カメラが追う慰霊碑には「大義に殉じた」「英霊」の文字が並びます。いまでは沖縄戦だけではなく、アジア・太平洋全域で「戦死」した方々の慰霊の地となっているそうです。

 私は、あの戦争で戦死された多くの方々は、天皇制政府の犠牲者だと思っていたので、同じく慰霊するべきではないか? と思っていましたが、沖縄では複雑な思いがあるようでした。

 番組では「日本兵がガマに入ってきたためにガマを追い出された」「米軍とたたかっているのは自分たち(日本兵)だ」という証言が流されます。沖縄戦を通じて、「軍は自分たちを守ってくれない」という気持ちが沖縄の人たちの心に刻まれていったようです。

 さて、その軍のトップだった牛島満中将の慰霊塔を参拝する人たちがいます。沖縄に駐屯する自衛隊の幹部たちです。隊員は「個人的に参拝しています」といいますが、頭からつま先まで制服姿。彼らの背中に「私的参拝なら制服はやめてください」という県民の声がかかります。国会議員による靖国神社参拝が、国際問題になる(「内政問題だ」と言った自民党幹部もいますが)一方で、沖縄では制服組による牛島中将の慰霊塔参拝への抗議が行なわれていることをはじめて知りました。

 沖縄に駐留している在日米軍もまた「沖縄慰霊の日」に慰霊を行なっています。元沖縄県知事の大田昌秀さんは、「軍人、民間人、国籍を問わず沖縄で犠牲になった」方々を慰霊する目的で平和の礎の建立をよびかけました。そこには沖縄戦で亡くなった米軍将兵の名前も刻まれています。在沖米軍は、6月23日、この平和の礎にたいして慰霊を行ないます。

 ところが、その一方で在沖米海兵隊が行なっている「教育」に、沖縄県民の慰霊とは正反対の姿を見せつけられました。

 米海兵隊は沖縄に配属された新兵に、沖縄戦の激戦地を見学させる「教育」を行なっているといいます。「過去から学ぶ」ためだそうです。そこで学ぶのは、日本軍の抗戦がいかに激しかったか、多くの犠牲を払いながら米軍が日本軍を圧倒したという「事実」です。

 「沖縄戦から何を学ぶか」・・・日本人の私は、「他国への侵略はもちろん、『友軍』が国民を犠牲にするような戦闘を繰り返してはならない」と考えるのですが、若い海兵隊員たちは違うようです。ある海兵隊員は「過去の戦争から学ぶことはとても大切です」「歴史から教訓を得て同じ失敗を繰り返さないためです」といいます。「経験と知識を受け継いでいくのが海兵隊の伝統なのです」と。彼らが学ぶのは、多くの民間人を犠牲にしたことではなく、海兵隊がいかに犠牲を少なく目的を達成するか・・・にあるようです。

 安倍政権は、その米軍とともに世界的規模で自衛隊が活動できるようにしようと、これまでの政府見解を変えて集団的自衛権の行使を容認しようとしています。沖縄で失われた多くの命が、それを望んでいないのではないか・・・と改めさせて考えさせられる番組でした。

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