KISSYのひとりごと

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NHKスペシャル「知られざる大英博物館」(2)古代ギリシャ“白い”文明の真実

2012-07-03 19:22:26 | 教養・ドキュメンタリー

 これまでの常識をくつがえす新たな発見を、大英博物館の収蔵品を通して描く3回シリーズの2回目。舞台は古代ギリシャです(7月1日放送)。

 古代ギリシャといえば、パルテノン神殿に代表される巨大神殿や、ミロのヴィーナスなどの彫像が有名です。どちらも材質は大理石、色は「白」。ギリシャ文明が「白い文明」と言われる所以です。ところが、大英博物館の収蔵品の調査の結果、それがくつがえされました。大理石の彫像から色の痕跡が発見されたのです。

 強力なライトを当て、特殊なカメラで撮影すると、青い色を感知するという大英博物館が開発した最新技術で「トロイヘッド」とよばれる彫像の目映し出してみると・・・なんと瞳の部分に反応が。いまは真っ白な彫像に青い色が使われていたことが明らかになりました。

 現在、パルテノン神殿の隣にあるエレクティオン神殿でも同様の調査が行なわれています。こちらも天井の部分に青い色が使われていました。

 ドイツのリービッヒハウス博物館のヴィンツェンツ・ブリンクマン博士は、青だけでなく他の色の研究も行なっているそうです。色には独自の波長があります。この波長と彫像の波長を比較し、もともとの色彩を再現したのです。最新の調査結果をもとに再現されたCGは、古代エジプトの壁画にみられるような、豊かに彩られた世界でした。

 これには理由があります。古代ギリシャ文明は、古代エジプト文明の影響を大きく受けていたからです。たとえば「トロイヘッド」の瞳に使われていた青い色は、古代エジプトの壁画につかわれているエジプシャン・ブルーとよばれる色とまったく同じだということも明らかになりました。

 エジプトの文明をギリシャに伝えたのは誰か? それはエジプトのファラオに雇われたギリシャの傭兵たちでした。エジプトの巨大建造物や巨大な彫像、色鮮やかな壁画を目の当たりにした兵士たちは、やがて帰国し、自分たちの故郷でエジプトで見聞した文明を伝えたといいます。驚くことに、エジプトのアブシンベル神殿の前に立つラムセス2世の像には、兵士たちの落書きが残されているそうです。観光地に落書きをするのは今も昔も同じだったようです。

 では、なぜギリシャ文明が「白い文明」とよばれるようになったのか。もちろん、長い年月をへて色が消えてしまったということもあるでしょう。しかし、250年前までは、ギリシャ文明が「白い文明」ではなかったことが、常識として伝えられていたそうです。

 ところが、18世紀に発掘されたポンペイ(イタリア)の遺跡が、歴史を歪めるきっかけとなりました。時は産業革命でヨーロッパが台頭しはじめたころ。ヨーロッパの優位性をしめすために、ギリシャの文明は「純粋で高度で白い文明」という価値観がつくられたのです。ドイツでは古代ギリシャ語を必修とする教育改革が行なわれ、現在も続いているとのこと。

 そして19世紀のイギリス。ヴィクトリア女王が純白のウエディング・ドレスを着用したことで、白い色には「純粋でけがれのない理想的な色」という価値観がつくられました。この価値観は現在も変わっていませんね。

 さらに番組は、衝撃的な事実を伝えます。

 白い色に対する価値観は、「ギリシャ彫刻は白でなくてはならない」という価値観をも生み出しました。先にも書きましたが、19世紀にはギリシャ彫刻は、色がうすれ「白く見えた」そうです。もちろん、かつての色をわずかに残していた彫刻もあったとのこと。しかし「ギリシャ彫刻は白くてはならない」という価値観が、大事件を引き起こしたのです。

 歴史的遺物を厳重に保管しなければならない大英博物館には、ギリシャ彫刻を「洗浄した」という記録が残されています。表面の色を落とし、より白く見せるためです。張本人は大英博物館のスポンサー。事件当時は、大スキャンダルになったそうです。

 昨日のエジプト文明の日記にも書きましたが、歴史をつくってきたのは名もない多くの庶民です。それが一部の権力者によって捏造されてしまう・・・。それはギリシャ文明に限ったことではないのではないかと感じさせてくれた番組でした。

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