これまでの常識をくつがえす新たな発見を、大英博物館の収蔵品を通して描く3回シリーズの1回目。舞台は古代エジプトです(6月24日放送)。
「古代エジプトは絶対的な力をもつファラオによって3千年の繁栄を成し遂げたとされてきました。一方、古代エジプトの民たちは、ファラオのもとで過酷な暮らしを強いられたと言われてきました」(番組のナレーションより)。
巨大なピラミッドをはじめとする建造物は、支配者たちが奴隷を使って建造したものではなく、農閑期で仕事がない庶民の暮らしを支えるための公共事業だったという説があることを、以前、テレビ番組で知りました。今回は、それを上回る発見です。
私は、人間の歴史や文明は、一部の支配者がつくってきたものではなく、庶民たちがつくってきたものだと考えています。しかし、教科書をはじめ、これまで一般的に知られているエジプトの歴史は権力者の歴史です。
番組では、大英博物館の収蔵庫に眠っていた庶民のミイラや遺跡から、当時の庶民の暮らしぶりを解き明かしていきます。
スーダンのアマラ西遺跡は、およそ3300年前の庶民の住んだ町の遺跡です。当時からごみ問題に悩まされていたという事実も明らかになりました。窓からごみを投げ捨てていたために、ごみの山が床より高くなれば、家を建て替え床の位置を高くしたという話には驚きです。路地という路地はごみだらけ!!ってことでしょうか。
遺跡から発掘された遺骨からは、痛風の跡までみつかりました。庶民の食生活を知る大きな手がかりとなるそうです。さらに骨を分析すると、3300年前の人々が穀物だけでなく草食動物の肉を食べていたことが明らかになりました。「ほかの文明と比べても突出して豊かな暮らし」(番組名レーションより)だったそうです。
私の興味を引いたのは、当時の庶民が残したパピルスです。当時の手紙、教科書、会計簿、さらにはラブレターまで。なかでも円周率を知らなかった古代エジプト人が、円の面積を独自の方法で導き出していた・・・という話には驚きを超えて感動しました。
たとえば、直径9mの円の面積は、半径×半径×円周率(3.14)ですから・・・
4.5×4.5×3.14=63.585平方メートルです。
古代エジプト人は、(直径-直径×1/9)二乗という計算方法で円の面積を求めていました。この式にあてはめてみると・・・
(9-9×1/9)二乗=8の二乗=64
ほとんど誤差がありません。エジプト文明がいかに高度であったことかを示すひとつの例だと思います。
さらに、当時はすでに建設されていなかった巨大ピラミッドをつくるための問題まで記されていました。なぜか? パピルスの最初の部分には「これは200年前のパピルスから書き写したものである」と書かれているそうです。人類の英知を庶民が後世に伝えてきたことが、エジプト文明の繁栄を築いたといえるのではないでしょうか。
人類史上初のストライキの記録もパピルスに残されています。戦争による穀物不足による給料の遅配(当時はパンや麦が給料だった)に抗議するストライキです。パピルスには政府の出先機関での座り込みの様子や、政府にたいする抗議の声が記されているといいます。
絶対的権力を誇ったファラオはどうしたか。戦争や混乱による穀物不足という状況のなかでも民の声を優先したそうです。どこかの国の首相に聞かせてあげたいですね。
歴代のファラオに綿々として語り継がれてきたのは、「庶民の暮らしを守れ」ということでした。パピルスには、こう残されています。
「良き行いにより お前の下にいる民を栄えさせよ」
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます