美しい紅葉に包まれたものづくり大学キャンパス。気が付けば11月も10日を過ぎ、暦の上では立冬を過ぎた初冬の季節となりまた。行田市民大学9期生第14回講義は「自然の大切さみんなで学ぼう」とのテーマで、環境問題に関する講座でした。講師は埼玉県生態系保護協会事務局長、堂本泰章先生です。
まず環境問題とは種類に分けられ、一つはごみ問題。そしてもう一つが今日のメインテーマである生物多様性の問題です。
生物多様性を考える前提として、自然に対する考え方を見直すべきだとおっしゃっていました。何を以て私たちは自然とするのか。人間から見てその自然度はどれくらいか。そうした観点から本物の自然に対するとらえ方が大事とのことです。
例として美しい芝桜の画です。これをも持って自然度が高いとすると、生物多様性は喪失されるといいます。自然とは景観の良さに左右されるべきものではないそうです。さらに農業や林業でも自然破壊の第一歩であるといえるそうです。自然生態系の五つの基本要素とは生物の多様性、太陽光、大気、土壌、水。多様な生物が連鎖することで、自然の生態は成り立っている。連鎖であり共存することが自然の要素であるといえそうです。聞きながら農耕祭祀を起源とする神道に通じるものがあると思いました。神道も八百万の神とされる多くの神々への信仰が根底にあります。絶対の一つではなく、連なりあって共生しながら生きていくことの大切が感じられるのです。
自然生態系の五つの基本要素は、社会資本でありすなわち生存の基盤であるといえます。現代の過度な利便性の追求から大量生産、流通、消費の過程でそうした基盤が傷つけられている側面があります。こうしたことから、世界が目指すべき「持続可能な社会」の実現に向け多くの提言がされています。先進国はやはり欧州です。自然環境を社会資本とみなして保全する政策は、日本と比べても格段と進んでいるそうです。
では日本の地域づくりの中で、持続可能な取り組みは何か。人とのふれあいであったり、公共交通の活用、生存基盤である農地の保全など取り組むべき課題は多いようです。その中で歴史や文化的資源を大切にするというのもありました。地域に暮らす人々が、自分の地域に誇りを持つこと。それが持続可能社会の要素になりえるそうです。
こうした話をしながら、講師の先生自身が住む地域の自治会ではごみの問題に取り組むことが難しいと嘆いていました。「環境問題」というのは行政や政治の世界においてはまだまだ力の弱い分野だそうです。経済優先主義。目先の損得でしかことが進まい現実が実際あります。こうしたことに取り組むことは市民団体の役割のようです。
講義の終わりの質疑応答で、屋敷の森の保全が取り上げられました。行田市においても今年「小宮の森」と呼ばれた屋敷森が引き継ぎ手がなく、伐採され現在宅地化分譲されました。戦国時代にさかのぼる名家の家の森であったものが、時代の流れと共にその姿を消してしまったことに対して、意見を出した方がいました。振り返って鎮守の森と言われる神社境内の木をどう保全していったらいいか。講義後に思い切って相談してみたところ、緑地保全地域の指定や、市町村による緑の基本計画等、行政による支援が宗教団体でも受けられる可能性もあると聞きました。名刺までいただき協会でも支援できることがあれば協力していただけると話してくださいました。
「持続可能な社会」への実現に向けて個人でできることは小さなことです。私にできることは何か常に自問していきたいと思います。