初冬を迎えて間もないうちに、厳しい寒さに見舞われています。確か昨年の今頃も初雪が降ったように思います。今週は勤労感謝の日、すなわち新嘗祭も迎えます。運動公園の美しい紅葉も足早に散り始めているようです。九月から縁あって下総国、古河に赴任して早三か月。見るものすべてが興味深く、時間の経つのも忘れてしまうようでした。今日は午後から研修のため、半日古河の史跡をめぐることができました。
少し遡りますが、渡良瀬側沿線から見える三国橋です。九月半ばに見た景色でとてもきれいに見えました。渡良瀬川は茨城県西部と武蔵の国埼玉県の県境を流れる一級河川で、利根川の支流にあたります。長さは約110km。その源は栃木県北、西部にある庚申山と言われています。渡良瀬遊水地で巴波川、思川と合流し、北川辺との境を流れ、利根川に注いでいます。古くから海上交通の要所となったところで、八世紀に成立した万葉集巻十四の東歌の中に、『許我』、『許賀』と表記された歌が二首見られます。いづれも『麻久良我の』という枕詞に続きます。
逢わずして 行かば惜しけむ真久良我の 許我漕ぐ船に 君に逢はぬかも
(大意)お会いしないまま出かけてはとても残念です。まくらがの許我を漕ぐ舟の上の貴方にお会いできたらいいのですが
真久良我の 許我の渡しの韓かぢの 音高しもな 寝なへ児ゆゑに
(大意)まくら我の許我の韓かぢの音が高いように 噂が高く立ったなあ。未だ共寝をした娘ではないのに
韓かぢとは船を進めるかいのことのようです。
いづれも詠み人知らずではありますが当時のはかない恋歌であるようです。共に河川交通を推し量る歌となっていて、今も川辺に立つと情景が思い浮かぶようです。千年以上の時を超え今日にいたるまで絶えることなく続く川の流れに、この地の歴史と文化を感じることとなりました。