イキイキと生きる!

縄文小説家・森裕行のブログです。身近な縄文を楽しみ生き甲斐としています。「生き甲斐の心理学」の講師もしています!

汚れたと感じるときに (青春時代を考える 5/10)

2018-09-09 | 第四章「愛とゆるし」

 高校2年生の時くらいに、現代国語で中原中也に出会い、なんとなくダダイズムの詩というイメージで「汚れちまった悲しみに・・・」 を愛唱したせいか、青春時代を汚れを背負って生きていたようなところがあった。それは、個人(自分)の問題も当然あったが、文化や時代の反映というような側面もあったと思う。学園紛争の時代が浅間山荘事件まで行ってしまったのも、真面目に汚れを感じ自己否定的になることは大切かもしれないが、破滅的に他者否定まで行ってしまうような時代の雰囲気があったことも確かだろう。

 しかし今、中原中也の「山羊の歌」や「汚れちまった悲しみに・・・」の詩をあらためて読んでみると、かつてのイメージとは違う宗教的な世界が広がっていることに気づく。実際、調べてみると宗教詩人ヴァレリーの影響や中原中也の祖父母がカトリックだったとか、晩年鎌倉でカトリック教会を尋ねていたということを知り、本当はちょっと違うものだったと思う。最後の「なすところもなく日は暮れる……」は、奥底に美とか朝のイメージが隠れているようで、絶望を反転させるような力を感じてしまう。

 ところで、日本神話を読んだり、寺社仏閣に行ったりすると、日本人には「汚れと禊ぎ」の文化が、キリスト教文化とは別の形で息づいていて、心身の汚れを清め健康的に生き抜く知恵を持つ文化であったことを知る。豊かな生命の森を抱き、清らかな川と海の水を保持する一方、自然災害の多い日本列島は、縄文時代から死と再生、「汚れと禊ぎ」の国であり続けていたのだろう。

 日本の国の原型ができた7世紀、藤原京を現実化した持統天皇は百人一首でも有名な和歌を残している。

「春過ぎて 夏来にけらし 白妙の 衣干すてふ 天の香具山」

 持統天皇(女帝)がこの歌を作った数年前には、甥の大津皇子を謀殺したとも言われ、さらにその前は内乱とも言える壬申の乱を天武天皇と共に戦い血縁のある大友皇子を殺害している。さらにその前には唐・新羅連合軍への敗戦を祖母・斉明天皇の死や父・天智天皇(中大兄皇子)と共に九州で青年時代をおくっている。持統天皇の政治家としての大きな汚れ。それを越えて新たに再生をするには、白妙の衣に自らを投影し、洗い清められ夏の風で軽やかに干されている姿を表すことで、歌による禊ぎを晴れやかに行ったのかもしれない。

ストレスを手品のように幸福に転換する、「汚れと禊ぎ」の文化。もちろん負の面もあるとは思うが、汚れた汚れたと自暴自棄になり不健康や自死に至るより、さっと神仏を通し禊ぎして明るく生きたほうが良いと思う。

青春時代を考える 5/10

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