今年の冬の寒さは厳しいものでしたが、ようやく関東の平野部では、4月に入り気温が上がる日々が続いてきた。すると、春からの復活の早い植物は生育スタートしてきました。しかし、関東でも寒冷地に入る那須では、まだまだ春が始まったばかりで、桜がちょうど4月頃に満開になっている。今回は、2月に八王子を視察したので、今回はより寒さが厳しい那須塩原の植物を観察・視察を行った。
2018.3.16
・黒磯や市街地は那須高原よりも温暖である。
平野部黒磯や那須塩原の市街地は、建造物が多く標高が低いので、那須高原と比べると気候は温暖で積雪は年に数回ほどで積る事は少ない。(2018年は寒波の影響で、積雪および回数の頻度が多かったという)しかし、那須岳からの吹きおろしで、寒さは厳しく、終日氷点下の日が年に3日程ある。最低気温は氷点下10℃以下を記録している。
2018.4.28
シダレザクラ 那須高原
植栽される植物の中には亜熱帯性の植物も・・。
・シュロ
民家の庭先や植栽には、寒い那須でもシュロは庭木としてよく利用されている。また、本種はより寒さの厳しい那須高原の方面でも植栽されており、どの株も寒さのダメージが見られ無かった。那須で温暖な黒磯や那須市街地では、野生化したと思われるシュロの幼木も見つかっており、本種の耐寒能力の高さが分かる。
2018.4.28
2018.5.6
2018.4.8
2018.4.28
八重桜と棕櫚(シュロ) ヤシと桜の組み合わせは日本ならではの景色である。
2018.4.8
幼株 黒磯(低地)~那須高原SAまで周辺まで見られる。
2018.5.12
・ユッカ(キミガヨラン)
ユッカもシュロ同様に、軒下ではない完全な野ざらし下で露地栽培されていた。当地(那須)は、夏も25℃前後と比較的涼いので、熱帯植物には冬以外も気温が低い。また、本種は自生地が高温になる乾燥地帯に自生しており、生育はゆっくりなので、温度不足になって生育は難しい思われた。
2018.4.6
しかし、植栽株は、株立ちして旺盛に成長しており、どの株も寒さのダメージが見られない事から上手く寒冷地での環境に適応していると思われる。
2018.4.15
・温州ミカン&ビワ
那須はクライメートゾーン8bなので、ビワが北限である。
温州ミカンも庭先で露地植えされていた。寒さに強い品種だった為か、葉や枝にもダメージが見られ無かった。高さは2メートルほどで10年ほどの成木だろうか。長くこの地で越冬しているので、耐寒性は相当ある品種なのが分かる。寒冷地では、ユズやカラタチ以外にも温州ミカンは品種次第で、露地栽培可能なのだろうか。
温州ミカン 2018.4.28
2018.4.15
ビワとシュロ
・オリーブ
オリーブも、市街地では植栽されていた。耐寒性はあるが、栽培地は温暖な地域が中心の為、-10℃以下では厳しいと思われた。しかし、2メートルほどまで生育し、寒さのダメージが見られないので、根ずけば耐寒性が向上して越冬できるのだろうか。また、積雪の多い地域では雪害で枝が折れやすいので、真っ直ぐに円錐形もなる種類が積雪の多い地域での植栽には向いている。
2018.4.15
・ミモザ
本種は、オーストラリア原産で温暖な地域が原産。寒さに強く、-5~6℃になる地域でも容易に越冬しているので、環境適応能力が高く丈夫な為に那須でも越冬できていると思われる。春には黄色の花、シルバーの葉も観賞価値が高いので、場所を選べば寒冷地でも扱える数少ないオーストラリアプランツ。
2018.4.15
・キョウチクトウ
キョウチクトウは、インド原産で夏に鮮やか花はトロピカルで、熱帯植物のようである。また、この仲間は熱帯・亜熱帯中心の為か、寒さには比較的弱いグループである。冬に-10℃以下の那須では、温暖な市街地方面を中心に、大きく生育した成木のみ露地栽培が見られた。寒さの影響なのか、葉先が茶色く痛んだ株も見られた為、幼木の場合防寒対策が必要だろう。しかし、越冬後は生育旺盛なので復活は早いと思われる。
2018.5.12
・フィカス・プミラ
熱帯・亜熱帯原産のフィカス・プミラも、標高の低い黒磯では市街地のみ越冬可能なようだ。
建物の多い黒磯では、若干のヒートアイランド現象(コンクリートの蓄熱など)の影響で越冬可能になったようだ。
2018.4.15
その他。ツルニチソウ(斑入り)、オモト、マツバギクの仲間、セダム(虹の玉)が見られた。
常緑樹では、シラカシ、ツバキ類、ユズリハ、カクレミノ、アオキ、ヤツデなど。
2018.5.12
マツバギク
センペルビウム 2018.5.6
ゼラニウム・シノブ
2018.5.12
ゼラニウムはは軒下で、越冬できる事が分かった。おそらく最北で屋外越冬しているゼラニウムだろう。
・万年青(オモト)
2018.4.15
ハラン やや葉先に痛みがあるが、春には生育すれば復活可能な程度。
2018.4.8
那須高原の気候
山(那須山)からの吹きおろしで、夏は比較的冷涼しい。冬の寒さが厳しく、終日氷点下になる事もある。(年に3、4回ほどある)
冬季の最低気温は、-10℃を下回る事もある。年中、風が強いので、那須高原では耐寒性があり、日当たりと乾燥を好むカラマツやアカマツ、タケカンパが多い。また、成長が早い樹木が林床を優勢となる。
アカマツ 2018.4.28
2018.4.21
2018.4.22
カラマツ 2018.4.28
林床は笹類で覆われる。2018.4.21
池回りや湧き水では冷涼な気候を好むコゴミが見られる。
2018.5.6
寒冷地でも越冬できる常緑樹(最低-10℃)
ベニカナメ 中国南部原産
2018.4.28
2018.4.28
2018.4.28
2018.4.28
シラカシ
2018.4.8
2018.4.28
マサキ
2018.4.28
ヤツデ
那須では最北のヤツデ(これより標高の高い場所では自然繁殖が見られなかった)周囲は木々がうっそうと茂っているので、冬期は風よけなどの効果があると思われる。
2018.5.12
2018.5.12
5.12
すぐ近くには、植栽されたがヤツデを発見。ここから鳥によって種子散布されたのだろうか。
2018.5.12
ツバキ(園芸種)葉も枝も青々として元気である。那須高原と黒磯(低地)の中間地点といったところ。
2018.5.12
しかし、平地の黒磯・西那須では越冬可能な樹種も、那須高原では越冬しても寒害を受ける種類も多い。那須塩原(黒磯)はクライメートゾーン8bだが那須高原はクライメートゾーン8a(-12.2~-15.0)
で時に-15℃近くまで下がる事もあるという。同じ避暑地の軽井沢は、より寒さが厳しく、クライメートゾーン7a(-15.0~-17.8)でシュロやサルスベリの植栽北限を超えており、越冬できない。
寒害を受けたツバキ(園芸種)
那須高原でみたツバキ。枝先が痛んで枯れ込んでいる。葉も茶色く変色している。春になると生育して復活傾向になると思われる。
カクレミノ 黒磯方面 那須低地では植栽されているのを見かけるが・・。
2018.5.6
2018.4.30
アカメガシワは、関東以西~沖縄まで見られる。亜熱帯~熱帯まで見られる。海外では熱帯のマレーシアなど。もともと熱帯の地域の植物なようだが、環境的応力がある為、寒冷地の那須まで生育可能なのだろう。そのような植物は、(ネムノキ、ノウゼンカズラ、キョウチクトウ)がある。
那須は花持ちが良い。長く長期間ゆっくり咲く。
2018.4.28
チュ-リップ 那須フラワーパーク 4.28
シャクナゲ 2018.5.6
芝桜(シバザクラ) 2018.4.28