思わぬ伏兵。(だからそれは同語反復だっちうに)
シデライト。Siderite。古ギリシャ語の「鉄」である「シデロス」を堂々と名前にする石。つまり「鉄石」。ちなみにヘマタイトのヘムは「血」。
和名は菱鉄鉱。名前はおぼろげに聞いたような気がするくらいで、知らないに等しかった。
ところが先日、ヤフオクでこれを見つけて、おう、なかなかと思ってポチっ。
中国貴州省産。
普通の光だと地味。赤っぽい、何とも言い難い色をしている。
ところが強い光を当てると緑色に変わる。カラーチェンジじゃないですか。
透き通る。前にヴィヴィアナイトのとこで「鉄が透き通るなんておかしくね?」と書いたけど、この石も透き通る。不思議。
菱鉄鉱という名前の通り、菱形結晶が美しい。
さらにすごいのは輝き。クラスターがピカッピカッと輝くのはよくあるけど、これはピッカーッピッカーッ。(ひどい表現だね) 写真には写らないけど。
宝石のカットルースは光をうまく集めてピ略と放射するけれど、それに匹敵するくらいの強い輝き。どういうことなんでしょうね。
いやあ、すごい役者。
FeCO3。鉄の炭酸塩と単純。
菱鉄鉱の菱というのは、炭酸のことかと思ったら結晶が菱面体だからだそうで。菱亜鉛鉱(スミソナイト)、菱苦土鉱(マグネサイト)、菱マンガン鉱(ロードクロサイト)。みんな炭酸塩。しかし同じ単純炭酸塩のカルサイトやセルサイトは菱~とは言わない。菱形じゃないということかな。しかしアデュラリアのことを菱長石とは言わないね。(ごちゃごちゃうるさい)
火成岩、堆積岩、変成岩のいずれもから出る汎産鉱物。
けど、あんまり鉱物標本商品としては見ない。美しくないのか。
と思って mindat のフォトギャラリーを見て唖然。色にしろ形にしろ、何と多彩なことか。
花弁状の結晶集合もある。ヘマタイト・ローズというのは見たことがあるけど、シデライト・ローズというのもあるんですな。
いやいや。パイロモルファイトでも唖然としたけど、鉱物というのは組成や結晶構造なんかどこ吹く風みたいに勝手な色や姿を取ることがあるんですな。
造化の妙というか、ガイアの子分たちの傑作というか。(だから誰だよ)
鉄鉱物の美麗商品としては、ヴィヴィアナイト、パイライト、エジリン、ショール、アルマンディンくらいですかね。けど、シデライトももう少し出回ってもいいのではないかな。
がんばれ、「鉄石」。
で、おまけに「鉄が主役の鉱物」メモを別項で。(暇だねw)