貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

サーペンティン/ボーウェナイト/スティヒタイト

2022-11-18 13:23:29 | 単品

サーペンティン(Serpentine 蛇紋石)。
蛇紋石とか蛇紋岩と言われると、ありふれた石じゃない? と思ってしまう。
ところがどっこい。(古っ)
美しいのです。



ロシア産。24ミリ。セルフクリエイションさんより。
こういう緑が主体で、いろいろな模様が入る。緑は黒っぽかったり黄色っぽかったり。
磨き石にすると、石の内部の複雑さがあらわになって、とても美しい。
原石志向のコレクターさんは興味を持たないかな。

サーペンティン(蛇紋石)は詳しく言うと、
  アンチゴライト(Antigorite) (Mg,Fe)6Si4O10(OH)8
  クリソタイル(Chrysotile)  Mg6Si4O10(OH)8
  リザーダイト(Lizardite)  クリソタイルと同じ(異形)
の総称。
あれ? この名前、どっかで書いたな。ああ、デューイライトのところだ。サーペンティンの変種らしきよくわからない石で、蛍光が美しいやつ。

蛇紋石が主体になっている岩石が蛇紋岩(サーペンティナイト)。
蛇紋岩は上部マントルを構成する橄欖岩(Peridotite、橄欖石や輝石などからなる)が地殻プレートの沈み込みや衝突によって加水変成したもの。詳しくはこちら
まあ要するに、橄欖岩の水煮ですな。(はあ?)
  橄欖石     (Mg,Fe)2SiO4
  アンチゴライト (Mg,Fe)6Si4O10(OH)8
HとOがやたらにぶち込まれている。(変なギャグはよせよ)

橄欖岩は密で硬いけれど、蛇紋岩は租で柔らかい。水煮だものね。(……水煮ねえ)
蛇紋岩質の山は崩れやすい。石綿が含まれていたりもする。厄介な地質。「蛇紋」という名前もあいまって、あまりいいイメージはない。
けど、こういう磨き石を見ていると、ベーシックな鉱物らしい重厚な風情があってとてもいい。特に丸玉は高雅な趣がある。

     *     *     *

サーペンティンの一種に、ボーウェナイト(Bowenite)というのがある。アンティゴライトで、サーペンティンだけど透明、という変わり者。

ネフライト(軟玉、広義の翡翠の一種)と混同されたりもする。
で、翡翠にあやかって「ニュージェイド」と呼ばれることもある。ちょっと詐称っぽい。
翡翠と並べてみると、色は似ている。けど質感が全然違う。翡翠は重く稠密な感じ。ボーウェナイトは軽い。むしろカルセドニーに近いか。

最初手に取った時は、「まあな」みたいな感じだった。特色がなくて凡庸かな、と。
けど何度も見ていると、その柔らかな色と質感がとても魅力的に感じられてくる。
しかしサーペンティンとはとても思えない。半透明なんだぜ? 蛇紋石が透き通るなんて、そんなばかな。



というわけでけっこう珍しい石、みたい。あまり人気はないみたいだけど、いい石なんじゃないかな。

     *     *     *

Stichtite。読み方わからん。スティヒタイト、スティッチタイト、スティクタイト……
原産地タスマニア州クィーンズタウンの鉱山鉄道会社のゼネラルマネージャー(長いね)、Robert Carl Sticht から命名。もともとはドイツ語「シュティヒト」だろうけど豪州人だからスティクトかな。スティヒトとは発音しないんじゃないかな。でも原綴がわかりやすいからスティヒタイトでいいのかも。(うざいねw)

Mg6Cr2(OH)16[CO3]・4H2O。マグネシウムとクロムの含水炭酸塩鉱物。ピンクから紫色を呈する。Hydrotalcite(ハイドロタルク石)グループに属する。粘土鉱物の一種。
似たような組成の石にクロムクリノクロア(Chromian Clinochlore 菫泥石 Mg5(Al,Cr)2Si3O10(OH)8)がある。こっちはケイ酸塩鉱物で緑泥石の一種だけど、クロムのせいか色は似ている。マグネシウムの炭酸塩だとドロマイト(CaMg(CO3)2)があるけど、クロムではなくカルシウムなので色合いは違う。鉱物は組成が近くても種族やでき方が全然違うのがあるのですな。

で、これがサーペンティンと一緒に出る。そのため「サーペンティンの変種」と書かれることもあるけど、炭酸塩だからそうではない。
緑のサーペンティンに紫のスティヒタイトの水玉模様が浮かんだものを「アトランティサイト」と呼ぶ。いろんな石に新たな名前を付けている霊能者?メロディさんの命名らしい。
原産地のタスマニアはちょっと特異な土地。特産の「アトランティサイト」も特異な何かを持っているかもしれない。アトランティスというのはちょっと誇大な気がするけど、蛇紋岩の大陸があったら崩壊してもおかしくはないか。いや、でもアトランティスは大西洋じゃなかったかな。(余計なことをごちゃごちゃと)

これは「スティッチタイト」として買ったもの。紫の部分がかなり多い。でも黒っぽいサーペンティンの部分もある。アトランティサイトと呼べないこともない。別に呼ぶ必要もないけど。通常光だとかなり暗いけれど、強い光だと鮮やかな紫に輝く。

紫の石なのでチャロアイトやスギライトの「代用品」みたいに思われていたりもするけど、けっこう稀産。純粋なものはなかなか高価。

しかし Mg6Si4O10(OH)8 と
    Mg6Cr2(OH)16[CO3]・4H2O 
が一緒に出てくるというのはどういうことなのか。さっぱりわからん。ケイ素とクロムが置換した? 炭素はどっから来た?
うーむ。鉱物の生成の仕組みというのは複雑難解ですねえ。


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