貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

翡翠番外編 ロシア翡翠とネフライト

2022-10-15 09:53:16 | 単品

原宿のコスモスペースさんで買ったプチプラ品の翡翠。
一つは、ロシア翡翠。
翡翠はあちこちで採れるらしいけど、ロシアも結構いろいろな翡翠が出る。まあ今はこの国名にあまり触れたくないけど。
中でも青いものは「ダイアナイト」という商品名が付けられてえらく高価。この命名、あのダイアナ妃に因んだものという話がある。本当かしら。不吉と取られないかな。(余計なことを)
これは1000円の緑の小さな磨き石。

透明度がまったくない。河原に落ちている石じゃない?と言われると返答に窮する。
しかしですな、クローズアップしてみると、美しい結晶がきらきらと光る。

色合いも独特だし、なかなかいいと思うのです。「産地関心」以外にこれをわざわざ買う人がいるとはあんまり思えないけれど。

     *     *     *

もう一つはネフライト。さあややこしい石が出てきた。(また首突っ込むのかい)

ネフライトは翡翠(ジェイド)に含められるけれど、本翡翠(ジェイダイト、翡翠輝石、硬玉。NaAlSi2O6)とはまったく違う石で、トレモライト(透閃石)とアクチノライト(緑閃石)の混合「岩石」。軟玉。非常に広汎に見られる変成岩。蛇紋岩から生まれるらしい。
ちょっとこれよくわからん。トレモライトとアクチノライトは組成式では「Ca2(Mg,Fe)5Si8O22(OH)2」で、マグネシウムと鉄の比率が違うだけ。鉱物学の原理的には本来統一されるべきもので、「ええ?これどっちかにするのかよ」というブーイングがあるのでしていないだけ。(ほんとか?) だから両者が混合して「岩石」というのは変。トレモライトないしアクチノライトに他の鉱物が混合した岩石ということ? けど透明で純粋なネフライトもあるぜよ。それはネフライトじゃなくてトレモライトなのではないかい?
あちきはけっこうきれいなクロムトレモライトを持ってるけど、これ、ネフライトと同じ? トレモライトもアクチノライトも広い意味での「アスベスト」だけど、ネフライトは違うの? ネフライトを加工で削ったりするのはやばいんじゃないかね?

1863年にフランスの鉱物学者アレクシス・ダムールが翡翠と呼ばれている石の中にジェイド輝石とネフライトがあることを明らかにした。
ネフライトの nephr- は「腎臓」のギリシャ語から。翡翠(ジェイダイトとネフライト両方)は古代では腎臓結石を治療する石だと考えられており(ほんとかいな?)、「リトス・ネフリチコス」と呼ばれた。それがスペイン語で「ピエドラ・デ・イジャーダ」と翻訳され、その「イジャーダ」が翡翠の「ジェイド」の語源となった。で、2種類あることがわかって、片方は「ジェイド石」、もう一方はギリシャ語まで遡って「腎臓石」となった。
つまり、ネフライトはギリシャ語風「腎臓石」、ジェイダイトはスペイン語風「腎臓石」、つうことね。
ああややこし。

ネフライトは中国で古くから珍重されてきた「玉」で、内モンゴル、天山山脈などで採れる。特にシルクロードの要衝ホータン(和田)で産出する「和田玉」(どうしても「わだだま」と読んでしまうね)は最高品とされ、さらにその中でも白い半透明のものは「羊脂玉」と呼ばれて珍重された。この「羊脂玉」は純粋トレモライトだという。は? じゃあネフライトじゃないじゃん。
その後、清時代にビルマから本翡翠がもたらされ、釣られて緑のネフライトが人気になったらしい。
中国人は道教の「三徳」=「福(子孫繁栄)・禄(金銭的豊かさ)・寿(健康長命)」を象徴する「赤・黄(金)・緑」を好み、緑のネフライトは長寿の縁起物の意味があるらしい。ちなみに三色の石を取り混ぜた「福禄寿ブレスレット」なんてのもネットで時々売ってますな。
現代中国人のネフライトに対する情熱はものすごい。GIAのリサーチ&ニュースにある「ネフライト(軟玉)ジェードの道」はそのものすごさを伝えています。これ長い文だね、あちきの駄文など目じゃない。

【ついでにメモ】
本翡翠=ジェイダイトは NaAlSi2O6。純粋なものは白色だが、微量の鉄やクロムを含有すると緑色、微量の鉄やチタンを含有すると紫色になる。
Al が Fe3+ に置換したものがエジリン輝石、Cr3+ に置換したものがコスモクロア輝石。ええ? あの不羈奔放のエジリンと兄弟かよ。
翡翠とよく一緒に出てくるオンファス輝石は (Ca,Na)(Mg,Fe2+,Al,Fe3+)Si2O6 で、主に透輝石(ダイオプサイド。CaMgSi2O6)とヒスイ輝石の固溶体に相当し、灰鉄輝石(ヘデンバージャイト。CaFeSi2O6)およびエジリン輝石成分も含む。
何のこっちゃ。再整理。
  ジェイダイト     NaAlSi2O6
  エジリン       NaFeSi2O6
  コスモクロア     NaCrSi2O6
  ダイオプサイド    CaMgSi2O6
  ヘーデンバージャイト CaFeSi2O6
  オンファサイト    (Ca,Na)(Mg,Fe,Al)Si2O6
アナグラムやってるみたいだな。

ついでにダイオプサイド。

はあ。疲れた。(よしときゃよかったのにねw)
まあ要するに本翡翠は輝石、ネフライトは角閃石、つうことね。

ネフライトはなぜか日本ではあまり見ない。中国人が買い占めてしまうので回ってこないのか、本翡翠が人気でその代用品みたいなイメージがあるのか、濃くて強い色が好まれないのか、理由はよくわからない。あちきも個人的には中国のネフライトの彫刻品なんかを見てもあんまり惹かれない。どぎつくないですか?

で、そのネフライトが原宿さんにあった。(ようやく辿り着きましたなw)
小さな磨き石と半透明のカボッション。いずれも300円。300円? 何ですかこの値段。
磨き石は不透明の緑の石で、うーむという感じ。河原に落ちてそう。けれどカボッションのほうは、ちょっとびっくり。

薄緑と濃い茶(紫や青が混じったよくわからない色)が方向によってゆらゆらと揺れる。
そしてキャッツアイのような光学効果が見られる。キャッツアイだと? トレモライトのキャッツアイなんて聞いたことがないぞ?
深みとか翡翠の「ぬめっと」した感じはないけれど、何とも捉えにくくて妖しい美しさがある。
「ネフライト・キャッツアイ」とかいう名前にして数千円で売っても売れそうな感じ。
何で300円なんだろう。(しつこいw)
ネフライト、わけわからん。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿