貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

30億年前の万華鏡 ヌーマイト再び

2022-01-14 22:00:07 | ややレア

30億年前の万華鏡じゃあ!(いきなりふかすな)







 

ヌーマイトについては前にちらっと書いたのですけど、どうもなかなかすごい石なので、改めて。(写真撮り直したのね)
ヌーマイト、思えど今日の寒さかな。(やると思った)

ヌーマイトは、角閃石片麻岩で、1982年にグリーンランド・ヌーク地方で発見された新鉱物。新だけど形成されたのは約30億年前――ええいこの馬鹿変換ソフト、おくねんが出ねえよ(だからATOK買い直しなさいと何度言ったか)――と言われ、「地球で最も古い石の一つ」と喧伝される。
直閃石(アンソフィライト Anthophyllite Mg7Si8O22(OH)2)と礬土直閃石(ジェドル閃石/ジェドライト Gedrite Mg5Al2Si6Al2O22(OH)2)の混合物で、「片麻岩」というのは変成岩、加熱加圧処理済みということ。直閃石はグループ名で、角閃石(アンフィボール Amphibole アスベストを含む巨大グループ)の一種。ああめんどくせえ。

30億年前というのは、先カンブリア代の内の始生代に当たる。
  先カンブリア代 Pre-Cambrian Era 46億年前から5億4000万年前まで
    冥王代(Hadean Era)46億年前~40億年前
    始生代(Archaean Era)40億年前~25億年前
    原生代(Proterozoic Era)25億年前~5億4000万年前
始生代は生命の発生とそれに続く光合成植物出現の時代で、動物はまだ単細胞だったと考えられている。始生代の地層には化石がきわめて少ないが、生物源と思われる石灰岩(ストロマトライト)、石墨などが存在する。
まああくまで現在の最有力説によればの話。ほんとかどうかは誰にもわからない。(懐疑的だね) しかし階級が違う概念に同じ「代 Era」を使うかねえ。普通変えるだろ。(難癖をつけるな)

「30億年前の万華鏡」と言ったけど、これは半分嘘で、25億年前に大陸地殻が形成される大造山運動があったせいで、始生代の地層はほとんど変成岩に変わっている。圧し潰され熱されぐちゃぐちゃになったということね。まあ「25億年前の万華鏡」と言っても大して違いはない。(だいぶ違うと思う)

ともかく、30億年前にできて25億年前に再調理された(違うと思う)石です。
このキラキラは、2つの成分が違う直閃石の境界面で光が屈折することによって起こるらしい。ラブラドライトは長石だけど、成分の違う2つの長石が層をなしていて、その境界面でキラキラが起こる。それと同じ仕組みだけれど、ラブラドライトは面で光るのに対して、ヌーマイトは多く針状で光る。そのせいで針状結晶がインクルードされた石のようにも見える。


ちなみに、発見されている最古の岩石は、カナダのアカスタ片麻岩(Acasta Gneiss)で約40億年前とされている。花崗岩や角閃岩が変成したもので、含まれたジルコンの放射年代測定から40億年前という年代が推定されている。こちら参照。
このアカスタちゃん、なかなか売っていない。売っていてもべらぼうに高い。五反田さん(誰だよ)のブログによれば、仕入れるとすぐに売れてしまうとのこと。地味な石だけど、40億年という印籠は実に強力。石屋さんたち、頑張って仕入れてもう少し安く売ってくださーい。

といっても、岩石・鉱物の年代測定というのは、かなり難しい話。
火成岩(マグマが冷えたやつ)の中の鉱物に、放射性元素カリウム40かウランが含まれていれば、「カリウム-アルゴン法」か「ウラン-鉛法」という年代測定法が使えるけれど、そううまく問屋は卸さない。堆積岩や熱水産の鉱物だと、周りの地層などの様々な要素を検討して推定するしかない。ちなみに年代測定でよく使われる炭素14法は、半減期が短か過ぎて数万年前くらいまでが限界。
カリウム40やウランを含まない鉱物(だいたいがそうですね)がぽんとあっても、できた年代は測定てきないということね。
この年代測定で活躍するのがジルコン(風信子鉱、ZrSiO4。元素ジルコニウムともダイヤモンドの代替人工鉱物キュービックジルコニアとも違うもの)。壊れにくく、ウランを含みやすいので「ウラン-鉛法」が使えることがある。
このジルコンという石、いろいろな色があって宝石として珍重されるけれど、標本系は地味な石。そのくせ高い。どうも正体不明のところがある。
これは、アフガン・ブラザーズさんで売っていた200円(は?)のジルコン。ちょっと赤黒いけど結晶面がキラキラしてきれい。

で、このジルコンという鉱物、「日本最古の鉱物」にもなっている。黒部市宇奈月の花崗岩から出たジルコンは、37.5億年前と測定されたという。あれ、ヌーマイトより古いね。まあ小さな砂粒だしいいでしょう。(何がいいいんだよ) 花崗岩自体は2.5億年前くらいの形成らしい。こちら参照。

まあ鉱物の年代の話はややこしくて難しいので、細かいことには首を突っ込まないことにして。(まあそれが無難だね)
ヌーマイトは、とにかく古い。地殻の一番基礎という雰囲気を湛えている。
で、これを見つめて、一応30億年前と言われる地殻形成と25億年前だかの大変動を想像する。いや想像なんてできやしない。できやしなけれど、何となく思いをはせる。
まだほんのわずかな物質生命体が生まれたばかりの地球。後の生命爆発を準備するための巨大で猛烈な物質掻き回しが行われていた時代。大陸を造り、山々を造り、深い海を造りながら、地球を司る神々は何を思い描いていたのか。
そのかすかな痕跡がこの石に刻まれていないか。この不思議な輝きは、人間が太陽光の下で見るものではあるけれども、何かを物語っていないだろうか。
と、壮大な妄想狂になって、石を見つめることも、また風雅ではないでしょうかね。(風雅かねえ)
まあ年代のことは別にしても、黒くてキラキラして、いい石です。


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