丘を越えて~高遠響と申します~

ようおこし!まあ、あがんなはれ。仕事、趣味、子供、短編小説、なんでもありまっせ。好きなモン読んどくなはれ。

クリスマス株式会社 ~チビ子とチビ太郎 そして子供達へ~

2006年11月23日 | 作り話
 そろそろ冷たい北風が吹く季節になってきました。夏の間セミがいっぱい鳴いていた桜の木も、葉っぱの色が赤や黄色に変わって、風が吹くたびカサコソ言いながら地面に落ちていきます。おうちで飲む冷たい麦茶が美味しくなくなってきて、かわりにココアやホットミルクが飲みたくなるのです。そして、もうすぐ楽しい日がやってきます。そう!クリスマスです!!
 
 日曜日の朝、モモカちゃんのお母さんが言いました。
「今年のクリスマスはサンタさんに何をもらうか、決めたの?」
「う~ん。」
 モモカちゃんはココアを飲みながら考えました。ピカピカ光る赤い自転車も欲しいし、ピンクのリボンのついた可愛いスカートも欲しいし、遠くのお星様が見える望遠鏡も欲しいし、小さな小さなバイキンが見える顕微鏡も欲しいし、ぱたぱたしっぽを振る犬のおもちゃも可愛いし・・・。なかなか決められないのです。
「早く決めて教えてくれないと、サンタさん、困るんじゃないの?」
 お母さんは台所でお皿を洗いながらモモカちゃんに言いました。
「ねぇ、お母さん。」
 モモカちゃんはココアを飲み終わって、空になったコップをお母さんに渡しながらいいました。
「サンタさんって、なんで私が欲しいもの知ってるの?」
「そりゃ、お母さんやお父さんがサンタさんに電話をするからじゃないの。」
 モモカちゃんは目を丸くしました。
「ええ?お母さんが電話するの?どうやって?」
 お母さんは笑いながら言いました。
「国際電話よ。だって、サンタさんって外国の寒い国に住んでるでしょう。」

あたり一面真っ白に雪が降り積もった寒い寒い国にサンタさんは住んでいます。サンタさんの家は広い森の奥の、そのまた奥の、も一つ奥に拓けている広い雪の野原の真ん中です。その野原の真ん中に、雪と氷で出来た大きなお城のような建物がぽつんと建っているのです。
 建物の入口にはなにやら大きな看板がかかっています。
『クリスマス株式会社』
 ほら、氷で出来た自動扉が開きましたよ。ちょっと入ってみましょうか。

 中に入ると、外の寒さが嘘のような南国のような、暖かい玄関が広がっています。生クリームみたいなふわふわの白い絨毯が敷き詰められていて、玄関の奥には重い樫の木で出来た立派なカウンターがありますよ。なんだかクリスマスケーキみたいです。おや、そこには赤い鼻のトナカイが座っています。
「いらっしゃいませ。ようこそ、クリスマス株式会社へ!」

 玄関の隣の部屋が社長室です。え?社長は誰かですって?そんなの決まっているじゃありませんか。社長は勿論サンタのおじいさん、サンタ・クロースですよ。
 社長室には大きな大きな地球儀が真ん中に置かれています。赤い印や青い印がアチコチにつけられています。これでサンタさんはプレゼントを配るおうちを調べているのです。壁には色々な国に行った時に撮った写真がいっぱい飾ってあります。おや、赤い海水パンツ姿もありますよ。
 今日は残念ながら社長さんはいないようです。

 社長室を出て、赤鼻のトナカイさんの案内で隣の建物に行ってみましょう。

 隣の建物へは金色のきらきら光る渡り廊下を通っていきます。廊下の窓から外を見てごらんなさい。ほら、天使たちが忙しそうに飛び回っていますよ。手には暖かそうなオレンジ色の光の玉を持ってます。あれはいったいなんでしょうか・・・。

 隣の棟はおもちゃを作っている工場です。自動扉を一つくぐって、その奥にもう一つ扉があります。その扉もくぐって・・・・。

 ほら、すごいでしょう!

 向こう側が見えないくらい広い広い工場の中には、たくさんのロボットと、サンタさんと同じ服を着た天使たちが忙しそうに働いています。あちらの機械からは男の子のおもちゃがどんどん出てきますよ。あ、こっちの機械は女の子のおもちゃかな?
 お人形にミニカー、ラジコンの飛行機、ピアノ、くまのぬいぐるみ、かわいいドレス・・・ああ、もう目が回りそう!世界中のおもちゃ屋さんが集まったみたいです!

 出来上がったおもちゃを一つ一つ調べている天使たちがいますね。あ、ほら、天使たちの横にはさっきのオレンジ色の光の玉が山のように積まれています。あれをどうするのかな・・・。
 赤鼻のトナカイさんがそっと教えてくれました。
「おもちゃが具合の悪いところがないかどうか調べた後、この光の玉に入れるんだよ。」
 あ、本当だ。光の玉におもちゃをいれましたよ。光はピカピカ光りながら、おもちゃの中に吸い込まれていきました。
「あの光の玉はね、プレゼントをもらった子供達が皆幸せになりますようにっていう魔法が入っているんだ。その魔法の元はなんだか知ってるかい?お父さんとお母さんの心だよ。・・・これは企業秘密だから誰にも内緒だよ。」
 トナカイさんはにっこり笑いました。

 広い工場の中をゆっくりと歩きながら、次の部屋に向かいましょう。次の部屋は何かな?

 今度はたくさんの机と電話が並んでいますよ。机の前には可愛いお姉さん達が座っています。あ、目の前の電話が鳴りました。
「はい、クリスマス株式会社です。クリスマスのプレゼントですね。お伺いいたします。」
 向こうの方にはコンピューターもありますね。インターネットなんてものも使えるみたいです。いやぁ、サンタさんの会社も大変ですねぇ。
「この部屋でクリスマス・プレゼントの注文を聞いているんだ。世界中のお父さんやお母さん達が電話やネットで注文してくるんだよ。」
 そうかぁ、モモカちゃんのお母さんもきっともうすぐここに電話をかけるんですね・・・。

「え~?!それって本当の話なの?!」
 モモカちゃんは叫びました。お母さんはニコニコ笑っています。
「本当よぉ。見学にも行けるらしいわよ。」
 モモカちゃんは目を丸くしました。
「すごぉぉぉい!私も行きたい!ねぇ、私も行きたいな!!」
 お母さんは声をひそめて言いました。
「でもね、誰でも行ける訳じゃないみたいよ。その一年間でいい子にしていた子供の中でも、世界で一番いい子にしていた子が行けるんだって。一年間に一人ってことよね、それって。」
「え~・・・。」
 モモカちゃんはちょっとがっかりしました。世界で一番かぁ・・・。ちょっと難しそうな話です。でもモモカちゃんは決めました。
「よし、わたし、頑張るよ。世界で一番になるように来年は頑張るぞぉ!!」
「おお、凄い凄い。その意気でがんばってね。」
 そう言いながらお母さんはくすくす笑いました。
「そういう訳だから、早くサンタさんのプレゼント、決めてね。」
「うん。でも何がいいかなぁ・・・。ああああ、悩むなぁ・・・。」

 さてさて、モモカちゃんは何を決めるのでしょうね。早く決めてくださいな。

                                    了


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2 コメント

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ナイショ! (takky)
2006-11-23 21:14:11
かわいい話ですね抜粋して子供に聞かせます。
うちは「サンタさんに何を頼むの?」と聞いても「ナイショ」と言うだけで答えてくれないのです。仕方なく「じゃあ、クリスマスツリーに欲しいものを書いて飾ろうか」ということになりました。ちょっと七夕みたいですが、中々教えてくれないので・・・。サンタとしては値の張ってないものがいいんですけどね(笑)
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内緒か~(汗) (ちえぞー)
2006-11-23 23:27:40
takkyさま
 クリスマスツリーに吊るすんですね(笑)。早い目にツリー出さなきゃだめですね。クリスマスに間に合わないや。
 あんまり高価な物をリクエストされたら困るというのが現実ですね(笑)。親にとってはクリスマスじゃなくてクルシミマスですわ。
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