いつものようにチビ太郎を車に乗せて、保育園へ向かう。いつもの時間、いつもの道。窓に張り付いて外を見ていたチビ太郎がふと声をあげた。
「なんか、いつもと違う……」
「へ? 何が?」
「なんか、違うねん。別に工事してるんでもないし、同じ道やし……。でもなんか違うねん」
「どう違うん?」
「……ん~……。ビミョーに違う……」
ビミョーには思わず笑ってしまったが、なにやらいつもと違うという事を言いたくて、一生懸命言葉を探しているのはよくわかる。
「家の外の、木がいっぱい生えてるやろ? あれがな、虫がおるとか、風が吹いてるとか、そんなんちゃうんやけど、なんか賑やかな感じ……」
どうやら道に面している住宅の植え込みや垣根の緑の様子が違っているという事を言いたいらしい。そう言われて、改めてチラチラと通り過ぎる街並を見る。
確かに、生垣のアカメガシには燃える様な赤い新芽がたくさん出ているし、家庭菜園には菜の花が揺れている。桜は花こそまだ少ないけれど、木全体がなにやら薄紅色にほんのり染まって見える。
「春が来たんやなあ」
チビ太郎がしみじみと呟いた。
昼からの仕事の途中、ホームから駐車場までのわずかな道のりを歩く。花水木の芽が丸く丸く膨らんでいる。すれ違う人々の上着は先週よりも一枚少ない。自転車に乗った子供は髪をなびかせて、オデコ全開で駆け抜ける。空は雲ひとつない抜けるような水色。ツバメが柔らかな日差しの中でまっすぐな線をひいていく。
先週は下を向いて歩いていた私も、今日は顔を上げて歩いている。
春、ですね……。
「なんか、いつもと違う……」
「へ? 何が?」
「なんか、違うねん。別に工事してるんでもないし、同じ道やし……。でもなんか違うねん」
「どう違うん?」
「……ん~……。ビミョーに違う……」
ビミョーには思わず笑ってしまったが、なにやらいつもと違うという事を言いたくて、一生懸命言葉を探しているのはよくわかる。
「家の外の、木がいっぱい生えてるやろ? あれがな、虫がおるとか、風が吹いてるとか、そんなんちゃうんやけど、なんか賑やかな感じ……」
どうやら道に面している住宅の植え込みや垣根の緑の様子が違っているという事を言いたいらしい。そう言われて、改めてチラチラと通り過ぎる街並を見る。
確かに、生垣のアカメガシには燃える様な赤い新芽がたくさん出ているし、家庭菜園には菜の花が揺れている。桜は花こそまだ少ないけれど、木全体がなにやら薄紅色にほんのり染まって見える。
「春が来たんやなあ」
チビ太郎がしみじみと呟いた。
昼からの仕事の途中、ホームから駐車場までのわずかな道のりを歩く。花水木の芽が丸く丸く膨らんでいる。すれ違う人々の上着は先週よりも一枚少ない。自転車に乗った子供は髪をなびかせて、オデコ全開で駆け抜ける。空は雲ひとつない抜けるような水色。ツバメが柔らかな日差しの中でまっすぐな線をひいていく。
先週は下を向いて歩いていた私も、今日は顔を上げて歩いている。
春、ですね……。
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