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クマ研究者 心で感じる生物多様性②

2010-01-11 12:55:35 | WWFマガジンより
 日本は、他の国に比べて、クマが多く生き残っている
ほうだ、と聞いたことがありますが。

―― 確かに、アジアクロクマ(ツキノワグマはその亜種)は
東アジアからパキスタンまで広く分布していたんですが、ほとんどの国で
もう絶滅寸前です。でも日本には、おそらく数万頭いるでしょうね。
韓国では今、北朝鮮とロシアからクマを連れてきて、智異山っていう
国立公園で野生に放しているんです。そのクマを見る機会があったんですが、
ぜんぜん、日本のものと違うんですよ。体重も倍以上あると思うし、
北海道のヒグマみたいなの。台湾のツキノワグマも大きなタテガミがありますし、
同じアジアクロクマといっても、まったく異質の生き物ですよ。
日本のツキノワグマは大陸のクマの亜種にすぎないじゃないか、
みたいなことを言う人もいるんですが、もう、ぜんぜん違う動物です。
地域独自の変化というか、それぞれの環境に適応した系統を
もっているわけですから、それぞれの地域で、そこのクマを
保全しなきゃいかんな、と思いましたね。

 日本にはまだ、クマの暮らせる自然が、ある程度は残って
いるのでしょうか。

―― 環境省が1978年と2004年にやった調査w比べると、ツキノワグマの
分布範囲って増えているんですよ。山里の人口が減って限界集落が
増えたりして、野生動物の領域が広がっているかもしれません。
それに気候的に雪深い地域とか、急峻な山とか、人が入りにくい場所が
あるので、そこが核になってクマが生き残ってきた可能性はありますね。
ただ、その動物を通して見るかで、違ってくる面もあると思いますよ。
クマにとっては比較的いい場所があるのかもしれないけど、例えば韓国では、
クマの絶滅寸前ですがカワウソはまだかなりいるんです。
でも、日本ではカワウソは絶滅した可能性が高い。ということは、
日本の河川生態系はかなり危機的だと見ることもできます。
ツキノワグマも、昔はもっと魚を食べていたかもしれなくて、
そうなると、彼らの生活を支えていた一つのシステムが崩壊している、
といえるかもしれないですし。

 ドングリの実がたくさんなるかならないかで、クマの暮らしが
大きく左右されるとも聞きますが。

―― 実はクマって結構、適応性が高くて、食べ物も地域ごとに
違うらしいですよ。ただ、そういう情報は、まだそれほどつみあがって
いないんです。ドングリが大事といわれるのは、ドングリがいっぱいある
地域の情報が多く集まっているからだと思います。
少し古いデータなんですが、神奈川県の丹沢で、ドングリ以外の食物を
たくさん利用していたクマの記録もありますしね。秋に大量に実るドングリ
がクマにとって大事なのは確かなんですが、じゃ春や夏はどうなのかとなると、
さらにバラエティがあると思います。もし、クマが地域ごとに違う生き方を
しているという情報がもっと集まったら、保護の仕方、管理の仕方も
地域ごとに変わってくると思いますね。日本にはまだクマがいるといっても、
狩猟と有害捕獲で毎年2000頭~2500頭くらい捕まってますし、
まあ、それだけ捕獲圧がかかてもとりあえず耐えられる個体数と、その数を
維持するだけの生活環境が、かろうじて残っているといえますが、
楽観できません。行政が先手を打って、クマの被害が出ている地域の人たちに
ちゃんと状況を説明して、意見を聞いて対策をとるということが必要でしょうし、
事故が起きたときは原因をきちんと分析して、どうしたら防げるかを
積み上げていくことも大事でしょうね。日本クマネットワークでは、
九州や四国のような、絶滅しかけている個体群をどう救っていくか、
生息環境をどう復元していくかという話もしていきたいと思っています。
クマがアンブレラ種だという意味では、そうした活動が、地域全体の
生態系の復元にもつながっていくはずですからね。(WWFマガジン)

 
 クマが日本では多く生き残っているほうだと分かって、ちょっと嬉しい(^^)
とはいえ遭遇するのは嫌ですよね。
とてもかなわないものね。
動物はずっと昔から進化と淘汰を繰り返してきたわけで、いずれは絶滅の危機も
起こるのでしょうね。でも、人間が原因なのはダメ。
いつか人間も絶滅する運命なのでしょうけど、自然の淘汰ではなく
人間のエゴのために、他の動物を滅ぼしたように滅んでいくのではないかと・・・
って、このところ考えています。
できたら、エゴのための絶滅は避けたいと、本気で思います。
私の出来ることは何なのか?















クマの研究者 心で感じる生物多様性

2010-01-11 12:12:11 | WWFマガジンより
 『クマが生きていける環境があれば 
たいがいの動物は生きられる』  クマ研究者 山崎晃司

 広大な生息地を持つ動物「アンブレラ種」と呼ばれ、さまざまな生きものを
守る傘(アンブレラ)に譬えられることがあります。
「アンブレラ種」を守ろうとすれば、多様な環境を、広い面積にわたって
残していく必要が出てきます。
それが結果的に、多種多様な生きものが暮らせる環境を守ることにつながる、
というわけです。
今回のインタビューのテーマは、日本を代代表的なアンブレア種、ツキノワグマ。
日本クマネットワーク代表の山崎晃司さんに聞きました。

 ツキノワグマが生きていくには、どのような環境が必要なのでしょうか。

―― クマは本来、山の奥に生活を閉じているものだと思われている場合も
多いのですが、実はそうではなくて、季節によっては人里近くにも来るんです。
それは山に食べ物がないとかいう単純な理由ではなくて、もともと人が住む
ところって、クマにとっても、いい場所なんですよ。でも、近世から現代に
かけて、クマみたいな動物は、出てくれば人間に捕えられたし、森でも薪を
取ったり焼畑をしたりで、山里は動物が住める環境じゃなかったんです。
それでクマも、一時的に山奥に閉じこめられていただけで、本来はもっと
広い範囲で、自由に生きる動物だと思います。

 一頭が行動する範囲も、相当、広いですよね?

―― 地域や性別でかなり違うんですが、あまり移動しない地域、
例えば東京の奥多摩だと、オスが100~150平方キロ、
メスで50平方キロくらいかな。栃木県の日光のような季節移動する地域だと、
オスは広すぎてわからない(笑)。200平方キロを軽く超えてると思います。
町ひとつが入っちゃう大きさですよね。そういう広い範囲で生息圏が
残っていないと、クマは世代交代していけないんです。いろんな食べ物が
季節ごとになくちゃならないし、冬眠に適した場所も必要ですし、クマが
生きていける環境なら、たいがいの動物は、孤立した集団になることなく
世代交代を重ねていけますよね。

 クマという存在が、その地域の生物多様性を代弁している、
ともいえるかもしれませんね。

―― 人間が、生物の相互作用みたいなものを全部わかっている
わけではないですしね。ただ、人間に被害を与えることもあるので、
クマなんていなくてもいいじゃないかという声もありますよね。
それに対して、頑張って理由を説明しようとするじゃないですか。
例えば、クマは大量に木の実を食べるし、移動能力も高いから、植物の種子を
数多く遠くに運んで散布する動物だということがわかってきてるので、
森林再生に貢献している、とかね。
でも、別に説明できなくてもいいのにな、とも思うんですよ。
これまで何万年も生きてきた動物は、微妙なバランスの上に存在してる
わけですから、これからも生きていく権利はあるはずなんで。
それに、理由がつけられる動物は、まだいいですよ。
少なくとも今の時点では、説明できないものが99%なわけですよね。
だとすると、やっぱり今まで連綿と続いてきた生物たちに関して、人間の側から
みて、存在の理由がわからなくてもいいじゃないかと思いますけどね。