夢の中で私たちは、
非常な速さで創作します。
あまりの速さに
自分たちが創作していることと
自分たちの思考とを
取り違えてしまうほどです。
私たちは本を読む夢を見ますが、
本当は本の一語一語を創作しているのです。
けれど私たちはそれに気づかず、
その本を他人のものだと思うのです。
(ボルヘス『七つの夜』より)
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夢の本質、読書の本質、
創作の本質を言い当ててるように思う。
. . . 本文を読む
『遊びと人間』
フランスの思想家、
ロジェ・カイヨワによると、
遊びには4つの要素があるという。
1.アゴン Agon (競争)
2.アレア Alea (運)
3.イリンクス Ilinx (眩暈)
4.ミミクリ Mimicry (模擬)
「競争」、「運」は
まだ分かりやすいと思うけど、
「模擬」というのは、
たとえばオママゴトみたいなもの。
何かになりきる遊び。
「眩暈」は、
カ . . . 本文を読む
また、罪の文化では、
罪を犯したものはそれを告白することで
心の重荷を下ろす。
しかし、恥の文化では、
罪を告白しても心は軽くならない、
それどころか悪い行いが世間に知れない限り、
心は悩まないのです。
(http://www.wa.commufa.jp/~anknak/a-kotowaza-12-tsumi.htm)
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日本の「私小説」というジャンルは、
基本的に「告白」をす . . . 本文を読む
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ガルシア=マルケス『族長の秋』
去年、新版として出た文庫本で読んだ。
本編は358ページ(?)だけど、
たったのそれだけ!? と思わせるくらいに、
かなり重量感のある読み物だった。
気分的には600ページ以上読んだ心地です。
章立てが成されてるわけじゃないけど、
要所要所に区切りがあって、
それが6箇所あるので、
実質6章立てという構成になると思う。
おもしろいのは、
本のカバーの見返 . . . 本文を読む
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季刊『アルテスVol.1/2011 WINTER』
ようやっと入手して、読んでます。
「たっぷり紙幅をとって
質の高い評論や批評、研究を書いてもらえる
メディアを作りたい」という
木村さん、鈴木さん等の思いもあってか、
非常におもしろい内容になってる。
特に片山杜秀の3.11と12.8に関する論考、
高橋悠治へのインタビューは
強力な磁場を発生させてて、
思わず吸い寄せられてしまう。
( . . . 本文を読む
対社会という意味では、
自分は文学者だと思っています。
そして、今の世の中では、
俺は本当にマイノリティに属してるんだな
と思うんです。
で、マイノリティの重要さ
というのを確信すればするほど、
いかにマジョリティに対して
戦略的にアプローチするかってことを
考えざるをえないんですね。
啓蒙主義的に
「マイノリティのことを尊重しなさい」
とか言っても意味がないし、
そういう中で、マーケットに . . . 本文を読む
芥川賞選考委員に対する憎しみというか、
負のエネルギーをひしひしと感じる
おもしろい文章があった。
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「賞を得た人間が、
その文学賞配給企業御用達の選考委員諸氏に対して
麗麗たる感謝の言葉を並べている現状は、
田舎の結納式みたいに滑稽に見える」
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田舎で結納式あげた人には失礼な言い種だけど、
まあなるほど。
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「新しく登場する小説作品が、
もし仮に旧態依 . . . 本文を読む
田原総一朗、東浩紀
http://www.ustream.tv/recorded/19316059
『一般意志2.0』についての対話。
いろいろ面白い話が満載なんでぜひ見てほしいんだけど、
ここではいろいろ思ったことのひとつについて。
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高度経済成長期の日本って
「欲求」が商品という形で目の前にあったから
動物化するのが容易だったんだけど、
その一方で「欲望」がなかったんじゃないかし . . . 本文を読む
『○○入門』という新書がよくある。
ニーチェ入門
精神分析入門
行動心理学入門
日本近代文学入門
イギリス経済学入門
ドラッカー経営学入門
日本憲法入門
合気道入門
・・・
「日本人はやたらと入門書が好き」
みたいな話を、
どっかで聞いたことがあるんだけど、
入門書だけ読んで、
結局、現物には一生当たることがない。
なぜか?
はっきり言って、
この手の新書 . . . 本文を読む
例えば今も僕たちはカントを読みますね。
カントの思想それ自体は
単に非科学的だったりするのに、
今も読めるのは、
つまりはその後の二世紀の哲学が
カントが作ったコンテクストでの内部で
動いているからです。
だからアクチュアリティがある。
けれども、カントと同世代にいた人間は、
単純に生き残ってないので、
時代を越えて読み直すコンテクストが
もう作れないわけです。
そのコンテクストを
複数化する . . . 本文を読む
そしてこの時期に「推理小説」が生じた背景として、
笠井は第一次世界大戦で生じた
数百万単位の「無意味な死」という事態を挙げ、
戦場にはならなかったアメリカとイギリスでは
特権化された「死」を演出する「本格推理小説」を、
実際に戦場となったドイツでは
ハイデガーの死の哲学と
作品ではなくベンヤミンらの推理小説評論を
生み出したとしている。[笠井;1995,1996]
(吉野ヒロ子 犯人は告白する . . . 本文を読む
自分の興味ある分野に詳しい人を巻き込んで
読書会をして、知識とか知恵を盗む。
その後に
「○○入門」(ニーチェ入門とかドラッカー入門とか)を読んで、
自分より詳しくない人に
どういう風に説明すればいいのかを考える。
これが、この大学生活でいちばん
「ためになる」勉強法だった。
常に詳しい人と詳しくない人との間に立って、
両者の間を行ったり来たりすること。
いわば「知のメディア」とでも言う . . . 本文を読む
ドストエフスキーが死んだのは
1881年の1月9日。
それはなんか、なんとなく知ってた気がする。
けど、画家クラムスコイが、
彼の死に顔をスケッチしてたとは知らなかった。
クラムスコイは、
その頃のロシアの権威主義的な画壇に反発して、
生涯、「ふつうの人」しか描かなかった。
もちろんドストエフスキーは天才だ。
けど、この死に顔は、
天才である前に、
彼もまた「ふつうの人」だった . . . 本文を読む
〈Augmented Reality〉(略してAR)は、
宇野常寛『リトル・ピープルの時代』では
〈拡張現実〉って訳されてるけど、
平野啓一郎の『ドーン』では
〈添加現実〉って訳が当ててある。
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AR(Augmented Reality)を「拡張現実」と訳すことには、
それなりの歴史があるのだと思うが、
意味的に今ひとつピンと来ないので、
『ドーン』ではあえて、「添加現実」とい . . . 本文を読む
僕は若い人から
彼らが書いた批評を読んでくれ
と言われることが多いわけですけど、
批評の良し悪しって
本当に驚くくらい簡単にわかるんです。
段落の長さとか、
一段落の中にどのくらい固有名が入ってるか、
そういうリズムだけですぐわかる。
なぜかというと、
そのリズムは構造化のリズムだからです。
構造化の精度は、
結局その人間がどのくらい
頭がクリアになってるかを示している。
じつは僕が . . . 本文を読む