ひからびろ 3.0

密かに輝くラクダとビロード、ロバ。お願いだから、ひからびてほしい。

夢の本質、読書の本質、創作の本質。

2012-01-31 | 文学
夢の中で私たちは、 非常な速さで創作します。 あまりの速さに 自分たちが創作していることと 自分たちの思考とを 取り違えてしまうほどです。 私たちは本を読む夢を見ますが、 本当は本の一語一語を創作しているのです。 けれど私たちはそれに気づかず、 その本を他人のものだと思うのです。 (ボルヘス『七つの夜』より) ***** 夢の本質、読書の本質、 創作の本質を言い当ててるように思う。 . . . 本文を読む

遊びの4要素。

2012-01-27 | 常々
『遊びと人間』 フランスの思想家、 ロジェ・カイヨワによると、 遊びには4つの要素があるという。 1.アゴン Agon (競争) 2.アレア Alea (運) 3.イリンクス Ilinx (眩暈) 4.ミミクリ Mimicry (模擬) 「競争」、「運」は まだ分かりやすいと思うけど、 「模擬」というのは、 たとえばオママゴトみたいなもの。 何かになりきる遊び。 「眩暈」は、 カ . . . 本文を読む

「恥の文化」と私小説。

2012-01-25 | 常々
また、罪の文化では、 罪を犯したものはそれを告白することで 心の重荷を下ろす。 しかし、恥の文化では、 罪を告白しても心は軽くならない、 それどころか悪い行いが世間に知れない限り、 心は悩まないのです。 (http://www.wa.commufa.jp/~anknak/a-kotowaza-12-tsumi.htm) ***** 日本の「私小説」というジャンルは、 基本的に「告白」をす . . . 本文を読む

ガルシア=マルケス『族長の秋』を読んだ。

2012-01-24 | 文学
■ ガルシア=マルケス『族長の秋』 去年、新版として出た文庫本で読んだ。 本編は358ページ(?)だけど、 たったのそれだけ!? と思わせるくらいに、 かなり重量感のある読み物だった。 気分的には600ページ以上読んだ心地です。 章立てが成されてるわけじゃないけど、 要所要所に区切りがあって、 それが6箇所あるので、 実質6章立てという構成になると思う。 おもしろいのは、 本のカバーの見返 . . . 本文を読む

『アルテス』読んで思ったことひとくさり。

2012-01-23 | 音楽
■ 季刊『アルテスVol.1/2011 WINTER』 ようやっと入手して、読んでます。 「たっぷり紙幅をとって 質の高い評論や批評、研究を書いてもらえる メディアを作りたい」という 木村さん、鈴木さん等の思いもあってか、 非常におもしろい内容になってる。 特に片山杜秀の3.11と12.8に関する論考、 高橋悠治へのインタビューは 強力な磁場を発生させてて、 思わず吸い寄せられてしまう。 ( . . . 本文を読む

文学が変わるってそういうことだと思う。

2012-01-22 | 常々
対社会という意味では、 自分は文学者だと思っています。 そして、今の世の中では、 俺は本当にマイノリティに属してるんだな と思うんです。 で、マイノリティの重要さ というのを確信すればするほど、 いかにマジョリティに対して 戦略的にアプローチするかってことを 考えざるをえないんですね。 啓蒙主義的に 「マイノリティのことを尊重しなさい」 とか言っても意味がないし、 そういう中で、マーケットに . . . 本文を読む

〈一般意志2.0〉を芥川賞に導入?

2012-01-21 | 文学
芥川賞選考委員に対する憎しみというか、 負のエネルギーをひしひしと感じる おもしろい文章があった。 ***** 「賞を得た人間が、 その文学賞配給企業御用達の選考委員諸氏に対して 麗麗たる感謝の言葉を並べている現状は、 田舎の結納式みたいに滑稽に見える」 ***** 田舎で結納式あげた人には失礼な言い種だけど、 まあなるほど。 ***** 「新しく登場する小説作品が、 もし仮に旧態依 . . . 本文を読む

高度経済成長と動物化。

2012-01-19 | 思想
田原総一朗、東浩紀 http://www.ustream.tv/recorded/19316059 『一般意志2.0』についての対話。 いろいろ面白い話が満載なんでぜひ見てほしいんだけど、 ここではいろいろ思ったことのひとつについて。 ■ 高度経済成長期の日本って 「欲求」が商品という形で目の前にあったから 動物化するのが容易だったんだけど、 その一方で「欲望」がなかったんじゃないかし . . . 本文を読む

「スケベ心」について。

2012-01-19 | 常々
『○○入門』という新書がよくある。 ニーチェ入門 精神分析入門 行動心理学入門 日本近代文学入門 イギリス経済学入門 ドラッカー経営学入門 日本憲法入門 合気道入門 ・・・ 「日本人はやたらと入門書が好き」 みたいな話を、 どっかで聞いたことがあるんだけど、 入門書だけ読んで、 結局、現物には一生当たることがない。 なぜか? はっきり言って、 この手の新書 . . . 本文を読む

批評と小説の違いとか。

2012-01-17 | 常々
例えば今も僕たちはカントを読みますね。 カントの思想それ自体は 単に非科学的だったりするのに、 今も読めるのは、 つまりはその後の二世紀の哲学が カントが作ったコンテクストでの内部で 動いているからです。 だからアクチュアリティがある。 けれども、カントと同世代にいた人間は、 単純に生き残ってないので、 時代を越えて読み直すコンテクストが もう作れないわけです。 そのコンテクストを 複数化する . . . 本文を読む

死を意味付けるミステリー。

2012-01-16 | 常々
そしてこの時期に「推理小説」が生じた背景として、 笠井は第一次世界大戦で生じた 数百万単位の「無意味な死」という事態を挙げ、 戦場にはならなかったアメリカとイギリスでは 特権化された「死」を演出する「本格推理小説」を、 実際に戦場となったドイツでは ハイデガーの死の哲学と 作品ではなくベンヤミンらの推理小説評論を 生み出したとしている。[笠井;1995,1996] (吉野ヒロ子 犯人は告白する . . . 本文を読む

大学生活でいちばん「ためになる」勉強法。

2012-01-15 | 日記
自分の興味ある分野に詳しい人を巻き込んで 読書会をして、知識とか知恵を盗む。 その後に 「○○入門」(ニーチェ入門とかドラッカー入門とか)を読んで、 自分より詳しくない人に どういう風に説明すればいいのかを考える。 これが、この大学生活でいちばん 「ためになる」勉強法だった。 常に詳しい人と詳しくない人との間に立って、 両者の間を行ったり来たりすること。 いわば「知のメディア」とでも言う . . . 本文を読む

ドストエフスキーの死に顔を描くクラムスコイ。

2012-01-14 | 常々
ドストエフスキーが死んだのは 1881年の1月9日。 それはなんか、なんとなく知ってた気がする。 けど、画家クラムスコイが、 彼の死に顔をスケッチしてたとは知らなかった。 クラムスコイは、 その頃のロシアの権威主義的な画壇に反発して、 生涯、「ふつうの人」しか描かなかった。 もちろんドストエフスキーは天才だ。 けど、この死に顔は、 天才である前に、 彼もまた「ふつうの人」だった . . . 本文を読む

〈拡張現実〉よりも、〈添加現実〉。

2012-01-13 | 思想
〈Augmented Reality〉(略してAR)は、 宇野常寛『リトル・ピープルの時代』では 〈拡張現実〉って訳されてるけど、 平野啓一郎の『ドーン』では 〈添加現実〉って訳が当ててある。 ***** AR(Augmented Reality)を「拡張現実」と訳すことには、 それなりの歴史があるのだと思うが、 意味的に今ひとつピンと来ないので、 『ドーン』ではあえて、「添加現実」とい . . . 本文を読む

「構造化のリズム」、「画面上の長方形の形」、原稿の視覚性。

2012-01-12 | 日記
僕は若い人から 彼らが書いた批評を読んでくれ と言われることが多いわけですけど、 批評の良し悪しって 本当に驚くくらい簡単にわかるんです。 段落の長さとか、 一段落の中にどのくらい固有名が入ってるか、 そういうリズムだけですぐわかる。 なぜかというと、 そのリズムは構造化のリズムだからです。 構造化の精度は、 結局その人間がどのくらい 頭がクリアになってるかを示している。 じつは僕が . . . 本文を読む