19歳の時に
ジェイムス・ジョイス『ユリシーズ』
全4巻を買った。4800円。
これが初めての「大人買い」だったかもしれない。
ただ、これはワクワクしながら
ページをめくって、数ページで挫折した。
当時の敗因として、
すべての「註」にいちいち目を通すなどという、
アホらしいことをしてたことが挙げられる。
(※『ユリシーズ』文庫版は、註だけで150ページ以上あるのだ)
アホらしいことをする → ページが進まない
ページが進まない → 話が進まない
話が進まない → ストレスがたまる
と、こんな調子で、
『ユリシーズ』は、ぼくにとって、
「鬼書」(奇書ではなく)として本棚の隅を占めていた。
そうして4年が経ち、
卒業間近となったこの時期に、
なぜかふと急に『ユリシーズ』を手にとって、
読み始めた。
なんだこれwww超おもしろいじゃんwww
文頭、文末に「*」マークがあるのを見つけても、
ガン無視して読んでいくと、
「ハリーポッター」を読んでる時のような、
ワクワクした気分が蘇ってくる。
登場人物が、ギリシャ悲劇の人物名とか、
聖書の中の一節を引用したりするんだけど、
そういうわけの分からない言葉が、
まるで未知の世界でしか通用しない単語とか、
あるいは呪文のように見えてくるのだ。
「蛙チョコレート」とか
「ウィンガーディアムレビオーサ」とかと、
何ら変わらないわけだ。
買った当初のぼくは、
「分かろうとしてた」からいけなかった。
こんなの、「ハリーポッター」と一緒で、
分かるわけがない。
誰にも分からないんだと思うと、
すごく楽な気持ちで楽しんで、
かなり面白く読める。
特にぼくがグッと来たのは
次のフレーズ。
この勢い、もはや詩だ。
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へえ、1パイントが2ペンスの7日で
2の7倍の1シリング2ペンスと、
ここ3日は1クォートが4ペンスの3クォートで1シリング。
しめて1シリングと1シリング2ペンスが、
2シリング2ペンスで。
(ジェイムス・ジョイス『ユリシーズ』第1巻より)
*****
なんだ、ただ単に金の計算してるだけじゃないか、
と思うかもしれないけど、
口に出してみるとその凄さが分かる。
これはもちろん翻訳のたまものだけど、
原書ではどうなってるのか是非とも知りたい。
その他にも、この書物の中は、
言語実験で溢れかえってる。
とんでもない本が部屋の片隅に眠ってたもんだ。