19歳の時に
ジェイムス・ジョイス『ユリシーズ』
全4巻を買った。4800円。
これが初めての「大人買い」だったかもしれない。
ただ、これはワクワクしながら
ページをめくって、数ページで挫折した。
当時の敗因として、
すべての「註」にいちいち目を通すなどという、
アホらしいことをしてたことが挙げられる。
(※『ユリシーズ』文庫版は、註だけで150ページ以上あるのだ)
アホらしいこと . . . 本文を読む
夢の中で私たちは、
非常な速さで創作します。
あまりの速さに
自分たちが創作していることと
自分たちの思考とを
取り違えてしまうほどです。
私たちは本を読む夢を見ますが、
本当は本の一語一語を創作しているのです。
けれど私たちはそれに気づかず、
その本を他人のものだと思うのです。
(ボルヘス『七つの夜』より)
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夢の本質、読書の本質、
創作の本質を言い当ててるように思う。
. . . 本文を読む
■
ガルシア=マルケス『族長の秋』
去年、新版として出た文庫本で読んだ。
本編は358ページ(?)だけど、
たったのそれだけ!? と思わせるくらいに、
かなり重量感のある読み物だった。
気分的には600ページ以上読んだ心地です。
章立てが成されてるわけじゃないけど、
要所要所に区切りがあって、
それが6箇所あるので、
実質6章立てという構成になると思う。
おもしろいのは、
本のカバーの見返 . . . 本文を読む
芥川賞選考委員に対する憎しみというか、
負のエネルギーをひしひしと感じる
おもしろい文章があった。
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「賞を得た人間が、
その文学賞配給企業御用達の選考委員諸氏に対して
麗麗たる感謝の言葉を並べている現状は、
田舎の結納式みたいに滑稽に見える」
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田舎で結納式あげた人には失礼な言い種だけど、
まあなるほど。
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「新しく登場する小説作品が、
もし仮に旧態依 . . . 本文を読む
そのむかし、
「クロアチアのアンデルセン」
と呼ばれた女性がいた。
イワーナ・ブルリッチ=マジュラニッチ。
呪文みたいな。
イワーナ
魚みたいな。
ブルリッチ
ふざけてんのか、みたいな。
マジュラニッチ
もっとふざけてんのか、みたいな。
「・・・。」
すいません、冗談です。
. . . 本文を読む
東浩紀による
平野啓一郎『ドーン』評。
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僕は『ドーン』を評価しています。
『ドーン』は純文学の外部を
なんとか取り込もうとしている
それは言い替えれば、
平野さんは純文学を外部の読者に対して
開こうと思っている
ということだと思います。
つまり文学に責任を感じているわけです。
(【特別対談】情報革命期の純文学/東 浩紀+平野啓一郎 http://www.shinchosh . . . 本文を読む
村上春樹について語る東浩紀の話を
要約するだけの簡単なお仕事。
(本題は1分17秒くらいから)
1.ハルキの読まれ方
村上春樹は世界中で同じように読まれる作家。
韓国でも中国でも
ある時期になるとハルキが売れる。
つまり、消費社会がある段階まで進展すると、
ハルキ的な物語がウケる。
そういうある種のテンプレートとして、
世界中で流通してる。
だから、ある意味では、
日本が産み出した . . . 本文を読む
伊坂幸太郎さんが
エンタメに徹するということで書いた
『ゴールデンスランバー』を読んで、
「ああ、今みんなこういうのが気持ちいいんだな」
ってすごいよくわかったんです。
謎解きと逃亡っていう
ページを捲らせる二大エンジンがあって、
伏線とその回収がものすごくシンプルに、
前半と後半とできれいな線対称になっている。
構造的には、問題集みたいな作りです。
(【特別対談】情報革命期の純文学/東 . . . 本文を読む
平野啓一郎『ドーン』読んだ。
この小説の最大の面白さは、
「ディヴィジュアル」という考え方の提案だ。
僕は「分人主義 dividualism」ということを
『ドーン』に書いたんですけど、
あれは深遠にして複雑な思想を語りたいとかじゃなくて、
なるだけプラグマティックな、
生きていくうえで使い勝手のいい
デザインの概念にしたかったんですね。
キャラとか仮面とか、
いろいろな言われ方をしてた . . . 本文を読む
今ライトノベルとかケータイ小説とか、
もしくは『ダ・ヴィンチ』系のエンタメ小説が
なんで優位なのかというと、
あれは映像文化へのアクセスを持ってるからです。
つまり、彼らは実際の部数の
何十倍の影響力を持つ可能性がある。
純文学からはその回路が開けていない。
ここに決定的な差があって、
部数だけで見ると、
川上未映子さんの『ヘヴン』が
西尾維新と極端には違わないじゃないかといっても、
それはや . . . 本文を読む
舞城王太郎の小説には時々、
料理をしてるシーンが出てくる。
とりわけ『ピコーン!』に出てくる
トマトソース・スパゲッティは、
ナスとベーコンが入ってて美味しそうだ。
いつか作りたい。
いつか作れるように
ブログに作る手順を書いておく。
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ナスとベーコンのトマトソーススパゲッティ
1.にんにくの皮をむき、つぶす。
2.タカノツメを種を抜いて刻む。
3.ベーコンを用意。
4. . . . 本文を読む
すべては、伝統的な隠者の虚像、
あるいはそれと西洋伝来の芸術家の姿とを
二重焼付したものを、
愚直に、ないし必死に、
真似ようとした結果にすぎないのだ。
(丸谷才一『横しぐれ』より)
小説の文脈は、
種田山頭火という俳人についての考察なんだけど、
もっと広く、
「日本の芸術家」像に
当てはめられる一文だと思う。
「伝統的な隠者」+「西洋伝来の芸術家の姿」
=「日本の芸術家」
. . . 本文を読む
ニミットは両方の手のひらをさつきに向けた。そして強く首を振った。「ドクター、お願いです。私にはそれ以上何も言ってはいけません。あの女が申し上げたように、夢をお待ちなさい。あなたのお気持ちはわかりますが、いったん言葉にしてしまうと、それは嘘になります」
さつきは言葉を飲み込み、黙って目を閉じた。大きく息を吸い込み、吐き出した。
「夢を待つのです、ドクター」とニミットは言い聞かせるように優しく言 . . . 本文を読む
『吉本隆明[太宰治]を語る』で、
吉本隆明が言ってたことが、
最近ぼくが考えてた太宰の「私」問題を、
めちゃくちゃ上手く説明してくれてたから、
意訳して記録せずにはおれませんでした。
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太宰治の作品は前期とか中期とか
後期とか戦後とか幾つかの時代に分けられて、
それぞれの時期で特徴も異なりますが、
これだけは、いつでも見え隠れしていて、
最後までつきまとっている特徴と考えられる。
. . . 本文を読む
全世界の不良が、ドストエフスキーを読めば、
何かが変わってしまうかも知れない、
と考えた。
その当時憧れていた、コロンビアの麻薬カルテルのボスや、
コルシカ・ギャング達がドストエフスキーを読めば、
どう思うだろう、
と想像して楽しんだりしていた。
(村上龍『音楽の海岸』より)
名作は、「不良」のために書かれてる。
いま生きる世界に満足してる人には、
全くもって必要ないもの。
「むずかしい」と . . . 本文を読む