ひからびろ 3.0

密かに輝くラクダとビロード、ロバ。お願いだから、ひからびてほしい。

『ユリシーズ』を読み始めた。

2012-02-07 | 文学
19歳の時に ジェイムス・ジョイス『ユリシーズ』 全4巻を買った。4800円。 これが初めての「大人買い」だったかもしれない。 ただ、これはワクワクしながら ページをめくって、数ページで挫折した。 当時の敗因として、 すべての「註」にいちいち目を通すなどという、 アホらしいことをしてたことが挙げられる。 (※『ユリシーズ』文庫版は、註だけで150ページ以上あるのだ) アホらしいこと . . . 本文を読む

夢の本質、読書の本質、創作の本質。

2012-01-31 | 文学
夢の中で私たちは、 非常な速さで創作します。 あまりの速さに 自分たちが創作していることと 自分たちの思考とを 取り違えてしまうほどです。 私たちは本を読む夢を見ますが、 本当は本の一語一語を創作しているのです。 けれど私たちはそれに気づかず、 その本を他人のものだと思うのです。 (ボルヘス『七つの夜』より) ***** 夢の本質、読書の本質、 創作の本質を言い当ててるように思う。 . . . 本文を読む

ガルシア=マルケス『族長の秋』を読んだ。

2012-01-24 | 文学
■ ガルシア=マルケス『族長の秋』 去年、新版として出た文庫本で読んだ。 本編は358ページ(?)だけど、 たったのそれだけ!? と思わせるくらいに、 かなり重量感のある読み物だった。 気分的には600ページ以上読んだ心地です。 章立てが成されてるわけじゃないけど、 要所要所に区切りがあって、 それが6箇所あるので、 実質6章立てという構成になると思う。 おもしろいのは、 本のカバーの見返 . . . 本文を読む

〈一般意志2.0〉を芥川賞に導入?

2012-01-21 | 文学
芥川賞選考委員に対する憎しみというか、 負のエネルギーをひしひしと感じる おもしろい文章があった。 ***** 「賞を得た人間が、 その文学賞配給企業御用達の選考委員諸氏に対して 麗麗たる感謝の言葉を並べている現状は、 田舎の結納式みたいに滑稽に見える」 ***** 田舎で結納式あげた人には失礼な言い種だけど、 まあなるほど。 ***** 「新しく登場する小説作品が、 もし仮に旧態依 . . . 本文を読む

マジュラニッチのこと。

2012-01-11 | 文学
そのむかし、 「クロアチアのアンデルセン」 と呼ばれた女性がいた。 イワーナ・ブルリッチ=マジュラニッチ。 呪文みたいな。 イワーナ 魚みたいな。 ブルリッチ ふざけてんのか、みたいな。 マジュラニッチ もっとふざけてんのか、みたいな。  「・・・。」 すいません、冗談です。 . . . 本文を読む

文学に責任を感じている

2012-01-08 | 文学
東浩紀による 平野啓一郎『ドーン』評。 ***** 僕は『ドーン』を評価しています。 『ドーン』は純文学の外部を なんとか取り込もうとしている それは言い替えれば、 平野さんは純文学を外部の読者に対して 開こうと思っている ということだと思います。 つまり文学に責任を感じているわけです。 (【特別対談】情報革命期の純文学/東 浩紀+平野啓一郎 http://www.shinchosh . . . 本文を読む

アバウト、ハルキ・ムラカミ、バイ、ヒロキ・アズマ。

2012-01-07 | 文学
村上春樹について語る東浩紀の話を 要約するだけの簡単なお仕事。 (本題は1分17秒くらいから) 1.ハルキの読まれ方 村上春樹は世界中で同じように読まれる作家。 韓国でも中国でも ある時期になるとハルキが売れる。 つまり、消費社会がある段階まで進展すると、 ハルキ的な物語がウケる。 そういうある種のテンプレートとして、 世界中で流通してる。 だから、ある意味では、 日本が産み出した . . . 本文を読む

伊坂幸太郎との和解?

2012-01-05 | 文学
伊坂幸太郎さんが エンタメに徹するということで書いた 『ゴールデンスランバー』を読んで、 「ああ、今みんなこういうのが気持ちいいんだな」 ってすごいよくわかったんです。 謎解きと逃亡っていう ページを捲らせる二大エンジンがあって、 伏線とその回収がものすごくシンプルに、 前半と後半とできれいな線対称になっている。 構造的には、問題集みたいな作りです。 (【特別対談】情報革命期の純文学/東  . . . 本文を読む

〈分人 dividual〉、〈個人 individual〉ではなく。

2012-01-05 | 文学
平野啓一郎『ドーン』読んだ。 この小説の最大の面白さは、 「ディヴィジュアル」という考え方の提案だ。 僕は「分人主義 dividualism」ということを 『ドーン』に書いたんですけど、 あれは深遠にして複雑な思想を語りたいとかじゃなくて、 なるだけプラグマティックな、 生きていくうえで使い勝手のいい デザインの概念にしたかったんですね。 キャラとか仮面とか、 いろいろな言われ方をしてた . . . 本文を読む

創造の源泉として何回も再利用される場

2012-01-05 | 文学
今ライトノベルとかケータイ小説とか、 もしくは『ダ・ヴィンチ』系のエンタメ小説が なんで優位なのかというと、 あれは映像文化へのアクセスを持ってるからです。 つまり、彼らは実際の部数の 何十倍の影響力を持つ可能性がある。 純文学からはその回路が開けていない。 ここに決定的な差があって、 部数だけで見ると、 川上未映子さんの『ヘヴン』が 西尾維新と極端には違わないじゃないかといっても、 それはや . . . 本文を読む

舞城王太郎のパスタ。

2012-01-04 | 文学
舞城王太郎の小説には時々、 料理をしてるシーンが出てくる。 とりわけ『ピコーン!』に出てくる トマトソース・スパゲッティは、 ナスとベーコンが入ってて美味しそうだ。 いつか作りたい。 いつか作れるように ブログに作る手順を書いておく。 ***** ナスとベーコンのトマトソーススパゲッティ 1.にんにくの皮をむき、つぶす。 2.タカノツメを種を抜いて刻む。 3.ベーコンを用意。 4. . . . 本文を読む

愚直に、ないし必死に真似ようとした結果。

2011-12-31 | 文学
すべては、伝統的な隠者の虚像、 あるいはそれと西洋伝来の芸術家の姿とを 二重焼付したものを、 愚直に、ないし必死に、 真似ようとした結果にすぎないのだ。 (丸谷才一『横しぐれ』より) 小説の文脈は、 種田山頭火という俳人についての考察なんだけど、 もっと広く、 「日本の芸術家」像に 当てはめられる一文だと思う。 「伝統的な隠者」+「西洋伝来の芸術家の姿」 =「日本の芸術家」 . . . 本文を読む

いったん言葉にしてしまうと、それは嘘になります。

2011-12-30 | 文学
ニミットは両方の手のひらをさつきに向けた。そして強く首を振った。「ドクター、お願いです。私にはそれ以上何も言ってはいけません。あの女が申し上げたように、夢をお待ちなさい。あなたのお気持ちはわかりますが、いったん言葉にしてしまうと、それは嘘になります」 さつきは言葉を飲み込み、黙って目を閉じた。大きく息を吸い込み、吐き出した。 「夢を待つのです、ドクター」とニミットは言い聞かせるように優しく言 . . . 本文を読む

〈人称のドラマ〉としての太宰治。

2011-12-27 | 文学
『吉本隆明[太宰治]を語る』で、 吉本隆明が言ってたことが、 最近ぼくが考えてた太宰の「私」問題を、 めちゃくちゃ上手く説明してくれてたから、 意訳して記録せずにはおれませんでした。 ***** 太宰治の作品は前期とか中期とか 後期とか戦後とか幾つかの時代に分けられて、 それぞれの時期で特徴も異なりますが、 これだけは、いつでも見え隠れしていて、 最後までつきまとっている特徴と考えられる。 . . . 本文を読む

不良の文学。

2011-12-19 | 文学
全世界の不良が、ドストエフスキーを読めば、 何かが変わってしまうかも知れない、 と考えた。 その当時憧れていた、コロンビアの麻薬カルテルのボスや、 コルシカ・ギャング達がドストエフスキーを読めば、 どう思うだろう、 と想像して楽しんだりしていた。 (村上龍『音楽の海岸』より) 名作は、「不良」のために書かれてる。 いま生きる世界に満足してる人には、 全くもって必要ないもの。 「むずかしい」と . . . 本文を読む