ダークフォース続き(仮)新規です

ダークフォースDFと続きに仮セカンド。
新規とDF追加再編です

外伝 VIII 「エリスさん、婚期への再起!」 (8回の裏、10-0。 ツーアウト 一、三塁。)

2016年05月14日 16時39分54秒 | ためぞうの冒険・外伝(仮+試しなど。)
外伝 VIII話



 何者にも触れさせぬ・・・。


 7番目の乙女となるハズだった、

 心美しき我が主を、


 己が欲を満たす為に、

 その優しさに付け入ろうとした、

 愚か者共め。


 時が流れても、

 空や大地に争いは絶える事もなく、


 力を得たと自らを過信し、

 その汚れた手を伸ばして来る・・・。


 ただ、それを、

 160億年もの間、淡々と繰り返し、

 見せられて来た。



 一人の小僧は、主の許しにより通してやったが、


 次は、何者だ?


 我が名は、

 機神『グングニル VII(セブン)』。


 7番目の乙女であられる主を、

 守護せし、煉獄の神槍なり。


   キィィィーーーーンッ!!!


 けたたましい金属音が辺りに、

 鳴り響きます。


 それはまるで、

 鋭利な金属が、激しい勢いで、

 何かに突き当たったように、

 戦女神ジラには、聞こえました。


 どうやら、そこには、

 障壁のようなものがあることを、ジラは感じます。


 近付くものを阻む、盾のような壁。


 ジラは、

 魂のような存在や、

 想いのみが辿り着ける、


 邪王アリスの心の奥底にあると思われる、

 その純真なる箱庭へと、

 向かっている途中の出来事でした。


 道標のない迷路のような広大な場所を、

 その優れた直感により、

 ほぼ、正確に進んでいたジラは、


 グングニルを名乗る者の声と共に、
 
 その警告音らしき、

 激しい金属音を聞かされます。


ジラ「どうか、誤解しないでほしい。

   ただ私は、想いを彼女に伝えたいだけなのです。


   もし、望まぬとあれば、

   ・・・このまま、引き返します。」


 と、釈明するジラ。


 ジラも、

 グングニルを名乗る者も、


 その存在そのものが、

 曖昧な、この深層世界では、


 まるで、何も存在しないかのように、

 互いに、人を形作る姿のような物も無く、


 ただ、二人の声だけが、

 思念のように交わされている、

 といった様子です。


 濃霧のよう深く白い、

 際限なく、どこまでも広がり、

 心の奥底へと向かう隠された迷宮。


 その見えない壁の向こうで、

 グングニルを名乗る者は、

 ジラに問いかけます。


グングニル「ほう、


      偽りを申せぬ、

      我がテリトリーにあって、

      なかなか面白い事をいう女だ。


      どうやら、この小さき宇宙(そら)を、

      俯瞰(見下ろす事が)出来る、

      目線に立つことが叶うという、


      その特別な資格を備えた者のようだが、


      何故、その力を手にしておらぬのだ?」


 どうやら、グングニルは、

 この世界のあらゆる全てを、

 超える力を秘めながら、


 どうして、それをひた隠しにするのかと?

 いう事に、興味を持った様子です。


ジラ「それは、


   この私の手には余るものだと、感じたからです。」


グングニル「面白い。


      我は、別の世界にて、

      幾度なく超えた者らと対峙して来たが、


      何故に、そこまで謙虚なのか、

      はたまた、勇気がないのか、

      愚かなだけなのか、


      何と見てよいやら。

      フッフッフッ・・・。」


 グングニルは、愉快な声でそう笑います。


ジラ「初めから、上手く行くなどとは、

   思ってはおりません。


   拒むのであれば、

   素直にこの場を去ります。」


グングニル「よかろう、


      では、仮初めではあるが、

      我らが姿を取り戻せる場所へと、

      案内致そう。


      それとて、空気の様なものと大差ないが、

      視覚情報でもあった方が、

      互いに、理解し易い事もあろう。」


ジラ「その言葉に、感謝します。」


グングニル「フフッ、

      期待するでないぞ。


      我の退屈しのぎに、

      落胆しても知らぬが、


      それでよければ、

      ついて来るがよい。」


 こうして、グングニルVIIに誘われるまま、

 ジラは、疑うことすらせず、

 示された場所へと、向かう事にしました。



   VIII 「手の届く場所へ。」



 ジラの姿が、

 銀髪の少年と同じように、固まってしまった、

 ルフィアたちがいる、

 その隔離空間では、


 彼女の姿を、

 息を呑みながら見守る、

 聖王バルエリナスの姿がありました。


 鋼鉄の天体は、未だその上空にあり、

 周囲の時は、この空間内からは、

 まだ止まっているように、見て取れます。


 機動要塞フォーリナは、

 隔離世界外に在りますが、

 ステルス状態を保っており、

 外部からは、その姿を確認することは出来ません。


 内部は、日中。

 外部は、夕暮れという、


 不思議な光景の中に、

 剣聖アレスティル、

 そして、邪王姉妹の姿もあります。


剣聖アレスティル「あの鋼鉄の星は、
 
         この小さな隔離世界外から、

         こちらへと干渉出来るのか・・・。」


 完全なバリアで覆われたハズの、

 その内部へと、フォーリナは干渉し続けています。


 このアレスティルの問いに、

 バルエリナスは、答える事はありませんでした。


 ただ、口を真一文字に結び、

 ひたすらジラの姿のみを見つめています。


 そして、代わりに口を開いたのは、

 バルエリナスの姿によく似た、

 拳一つ分くらい、背の低い、

 ルフィアの方でした。


ルフィア「あれは、

     この世界より、遥か以前に存在する。


     ・・・遥かに遠き世界、

     エルザードの文明により、造られし、

     ソラを駆ける鋼の星。


     そのエルザードの地は、

     この私や、ジラ様の故郷でもある。


     世界エルザードでは、

     このような星は、当たり前のように、

     複数個、存在している。


     どうやらこれは、そのビンテージ。

     プロトタイプのレア物の様だが。」


 そのルフィアの言葉に、

 アレスティルも、妹の邪王フェノも、

 驚きを隠せないでいます。


 まず、ルフィアが、

 この世界の人物ではない事実。


 そして、無口と思われていた彼女が、

 こうも、多くを語っているという事です。


 後に、その記憶が消されるとはいえ、

 彼らはこの衝撃を、

 その身の奥底に、刻むことに必至です。


 そして、

 もう一人の邪王アリスは、


 その美しい緑髪の先までもが、

 時が止まったかのように、

 固まってしまったジラの手を、


 瞳を閉じるようにして、

 ただ祈るように、強く握り締めています。


 そのジラの手は柔らかで、温かく、

 さらに、白きつるぎの存在も、

 先ほどと変わらず、

 その手を介して、伝わってきました。


 邪王アリスには、

 この場所に立つ、他の何者にも感じられない、


 ジラと、グングニルとの、

 そのやり取りまでもが、

 淡い夢を見るようなイメージで、

 伝わってきていたのです。



 グングニルが、ジラを招き入れたのは、

 まるで、天文台のような構造をした、

 建物の一室でした。


 そこの窓に映るは、

 数多の煌く星々。


 青白い光で満たされたその部屋の中央には、

 製図用の傾斜台が一つ置かれ、


 なんとそこには、

 『ゼリオス』という名の記された、

 一枚の地図が、途中まで描かれています。


ジラ「まさか、ゼリオス銀河の全容を明らかにする、

   その銀河マップと言うのですか!?」


 この時、ジラもグングニルも、

 その姿を、ホログラムのような映像で、

 互いを確認出来ました。


グングニル「ああ、

      まだ描いている途中の物だが、


      この小さき銀河の創世主は、

      いかに、賢き工神かと、

      感心していた所である。


      その窓に映る星空は、すべてニセモノの、

      ただの映像だ。


      しかし、その映像からは、

      しっかりと星の質量と光などの情報が、

      放射され続けている。


      遠近法を巧みに利用して、

      巨大なジオラマを、映像と最小の質量で再現しているのだ。


      この構造を、初めて理解した時、

      我は、背筋が震えるほどの感動を覚えたぞ。」


 そう語るグングニルの姿は、

 蒼く長い髪を持つ、

 冷淡な表情の美青年でした。


 無駄なく鍛え上げられた肉体に、

 細身の長身で、

 その顔は、端正でありながら、

 何とも言い難い、神々しさを見せています。


 ジラは、その傾斜台に置かれた地図から、

 すぐに目を背けます。


グングニル「それほどの美貌に、

      高き知性まで備えているとあっては、


      わざわざ、限界など超えずとも、

      十分に満たされていたという理由か。


      それを無闇に知ってはならぬと、

      瞬時に判断出来るとは、


      それなりの、心の気高さと、

      賢さを持つという事の証。


      別に、見ても構わぬのだぞ。

      そんな未完成の地図など、知られたとて、

      我にとって、何ら損失などない。」


 グングニルは、そう言うと、

 それでも、頑なに見ることを拒むジラに、

 こう続けました。


グングニル「実体までは、持ち込んでいないものの、

      互いに、その姿を現しているのだから、

      まずは、こちらから名乗るとしよう。


      我が名は、グングニルであるが、

      この人型の身体には、別の名が付けられている。


      コミュニケーションという一点においても、

      この人の姿である事は、

      無骨な槍よりは、マシであろう。


      我は、意思を持つ神槍として、

      最後の7番目に生まれたものだが、


      今、見せているこの姿は、

      その神槍を操る、機械仕掛けの人形。


      古の神話に記されし神、

      『オーディン』の名を冠する、

      その神の姿を元に制作されたと云われる、

      ヒューマノイドシリーズの一つ。


      その7番目のボディとして生み出された、

      この身には、


      過去6回の設計において得られた、

      最高のノウハウが詰め込まれている。


      シリーズ中、最高傑作にして、

      最後の機械人形。


      特に自慢をしているわけではないが、

      このボディを託してくれた、

      かの麗しき工神には、感謝している。


      その工神の名を語ることが、

      主のプロテクトによって、拒絶されているが、


      それを気にせずに頂ければ光栄と思う。」


 ジラは、グングニルの方へ振り返り、

 一礼すると、

 同じく彼に、自らを語ります。


グングニル「・・・なるほど、


      この世界にも、

      優れた人材は豊富であるという事か。


      いや、ただ関心しているだけだ。


      気高き心と、類まれなる美しさを併せ持つ美姫には、

      一戦士の端くれとして、

      それなりの敬意を以って接する。


      ジラ殿は、主との対話を望んでいるようだが、

      現在、主は子守に忙しく、

      その代理に我を指定して来たが、


      それで、了承頂けるかな?」


ジラ「はい。」


 ジラは、彼に対して素直に頷いて見せました。


グングニル「では、問いに答える故、


      そこにある椅子にでも、

      ゆっくりと腰掛けてもらえぬかな。


      時間はある。

      何しろ、ここは、

      元の世界より、とても鈍く時が流れている。」


 グングニルがそう言うと同時に、

 対面用の趣のある椅子とテーブルが、

 セットされます。


 仕組みは分かりませんが、

 現れたのは、西洋風の、

 白が基調のアンティークの調度品で、


 その椅子へと座るよう、

 彼は、ジラに促してきます。


ジラ「では、失礼します。」


グングニル「楽にされるがよい。


      貴殿が、主に害をもたらす存在でない事が、

      確認出来た以上、


      多少、礼儀知らずの我ではあるが、

      久しい客人をもてなす用意は、させて頂く。


      実体ではない故、

      実物を出すわけにも行かぬが、


      味覚や嗅覚を楽しめる嗜好品を望まれるなら、

      紅茶や、茶菓子などを用意致すが?」


 ジラは、そのもてなしを丁寧に断ると、

 最初の質問を、彼に向けます。


ジラ「この、星空の見渡せる部屋は、

   何処に、存在しているのですか?」


グングニル「ジラ殿が問われるように、

      この施設は実在している。


      表現が難しいのだが、

      このハミカム状のブロックに区切られた、

      数多の星々の世界を、


      観測するに最適な場所に、

      次元潜行する形で存在させている。


      元の場所からは、

      10万光年以上離れているとしか、

      答えようがないのだが、


      その説明で、十分だろうか?」


 ジラは、「はい。」と頷きます。


 するとグングニルは、

 こう問い返してきました。


グングニル「先ほどの地図には、

      興味がないのかな?


      我が知識で、持てる範囲であらば、

      開示しても構わぬが。」


ジラ「いえ、それには及びません。


   その地図を必要とするのは、

   もっと先の世代の子たちとなるでしょう。


   そのパズルのような地図の解き方を、

   不用意に知らねば、

   大きなリスクを背負う事もありません。」


グングニル「なんと欲のない事か・・・。


      この地図の断片でも解読出来れば、

      莫大な富を手に出来ると知りながら、


      「宝の地図は要らぬ」と申すとは。


      ・・・この出会いに、我は、

      感謝をせねばならぬかも知れんな。


      この星空の煌きの中に、

      住まうの人々の事を、

      無闇に疑い、誤解せずに済んだようなものだ。


      何しろ我にしろ、

      今、ジラ殿の手にある白きつるぎにしろ、


      極力、他者との接近は控えているのだ。」


ジラ「その様にお取り頂ければ、

   幸いと存じます。」


 グングニルが立ち上がると、

 青白い金属の床の一部が透けて、


 大きな庭園のある洋館が、

 その真下に見えます。


 それは椅子に腰掛けるジラの、

 その姿勢からでも、

 ハッキリ見て取ることが出来ました。


 そこには、銀髪の少年と、

 やや幼い、邪王アリスであると思われる金髪の少女が、


 庭の白いベンチに座って、

 明るく話している様子が映っています。


ジラ「・・・。」


グングニル「あれは、アリスとフェノという、

      双子の為に用意した、

      小さな安らぎの場所である。


      互いの少女も、同じように、

      一つずつ所持してはいるが、

      それ等は、リンクさせているので、


      二人が同じ場所にいるように、

      錯覚出来る。」


 そう語る、

 グングニルの魂を宿した青年が、

 視線の先に見ている、

 庭園の少女の姿。


 その時、彼の愛想のない表情の中にも、

 さりげない優しさのようなものがある事を、

 ジラは感じました。


ジラ「こうして、ずっと見守り続けてきたのですか?」


 グングニルは着座すると、

 端正なその顔の、

 細いあごのラインに指を当てて、


 ちょっと考えたようにして、こう答えた。


グングニル「我は、主を守護する責務を負っている。


      口下手ですまぬが、

      その白きつるぎから供給される、

      膨大なエネルギーが、

      我の活動を支えており、


      ようは、そういった手にし難い、

      宝物を求めて、

      襲い来る脅威を、この場所にて監視している。


      我が主の存在すら知らぬ者が多いが、

      伝説の工神が鍛えた、

      聖なるつるぎとして、

      多くの者の手を渡って来た事実がある故、


      それを欲する者は、後を絶えぬ。


      その大半が、この我にすら及ばぬ者ばかりである。


      少し、対価を求めてやれば、

      気後れして、その鞘を抜くこともなかったのだが。


      双子の姉妹に、

      抜かれてしまっては止む無しと、

      黒衣を纏わせ、『シュヴァルツメイデン』の名を、

      授けたに至る。


      双子との出会いは、主、自らが求めたものである。


      故に、深き思慮があっての事と、

      この使命を誇りを持って、継続している。


      それが今となっては、

      アリスと言う少女一人に、


      大きな負担を与えた事を、今は後悔している。


      このグングニルこそが、

      表面世界に姿を現し、

      矢面に立つべきであると、な。」


 そう言うと、蒼い髪の青年は、

 少しだけ、寂しそうな感じで、

 僅かに俯いた。


ジラ「礼を欠く事を承知で、

   問いますが、


   クレリス様と、

   白のつるぎとの関係は、


   どういったものなのですか?」


グングニル「簡単な仕組みではないが、

      例えるなら、騎士と姫の関係。


      そして、我はその従者。


      白のつるぎの主となる者は、

      強制的に、クレリス様の騎士として使役される。

      また、それを心地よく感じるハズだ。


      なお、我が主、

      クレリス様は未だ目覚めの時を、

      迎えてはいない。


      想いは存在するが、

      せいぜい、少女たちの箱庭での生活が、

      限界であろう。


      対話は、我や、

      アリスの身体を用いれば可能である。


      最も、それが叶う次元に立っている必要があるのだが。


      ジラ殿であれば、内に秘めた、

      その光でも闇でもない、

      『三番目の力』を解放するだけで、


      我が主との、

      直接的な対話の資格を得る事だけは、

      約束しよう。」


      そう告げられたジラは、

      彼の言う、三番目の力の行使に、

      大きな躊躇いを持つ表情を見せる。


ジラ「それは、残したまま、

   クレリス様と、お話をしたいのです。


   私の目的は、

   この身で満足いただけるかは分かりませんが、

   クレリス様の命の器として、


   この身をクレリス様に捧げる事を、

   最期の役割としたいと願うのです。」


 その緑髪の女神の、突然の申し出に、

 グングニルは、初めて表情を露わに、

 蒼の瞳を大きく見開き、

 その驚きを隠せないように震えた。


グングニル「な、なんと・・・。


      ・・・それは、得難い願い出であり、

      何にも勝る喜びであるが、


      従神の身である、

      この我如きが、

      簡単に口に出来る事柄ではない。


      言っておきたいのだが、

      その提案に、我は万感の想いではあるが、


      よくよく再考される事を、

      強く進言する。


      この世界の到達点まで、達しておきながら、

      あえてその道を選ぶ心理が、


      まず、理解し難い。


      いや、つまりは、

      何と言う、深き慈悲を持つ美しき女神であるかを、

      十二分に理解したからこそ、


      我は、それを失う、

      この世界の損実も、考慮して欲しいのだ。」


 ジラは、気遣うグングニルに、

 こう返します。


ジラ「大丈夫ですよ。


   私はすでに、

   守られているという事を、

   確認致しましたので。


   あの銀髪の少年、


   星々たちにすれば、

   瞬きする程の、ほんの僅かな時で、

   この身は、かの地に再臨できます。


   このジラの主となるであろう、

   『セバリオス』の存在を、

   目の当たりにする事が出来ました。


   ・・・彼が、真の力を得るその時まで、

   私はただ、

   眠りに付けば、よいだけなのです。


   セバリオスは必ず、

   この地に、再び私を新たなジラとして、

   目覚めさせてくれます。


   その確立は、100%と言っていいでしょう。」


 ジラは、わずかに微笑みながら、

 そう言うと、


 もう一つのつるぎ、


   『神剣・ラグナロク』を、


 この場所へと持ち込んで見せます。


グングニル「まさかそれは、

      ファーストの至宝、ラグナロク!?


      ・・・確かに、

      本来の力は、秘められたままで、

      その波動を、感じる事さえ出来なかったが、


      ファーストの文明が、

      六人のワァルキヤァールの乙女の力で、

      最期に生み出したとされる、


      我の力さえも、

      大きく上回るであろう、


      伝説上の、

      神王のつるぎ・・・。


      それが、伝承としてでなく、

      本当に実在していたと言う、

      その事実を、


      ・・・我は今、その幻の至宝を、

      目の当たりにしていると言う事か。」


 グングニルの意思を宿した、

 蒼い髪の青年は、


 神々しいジラのその姿に、

 ただただ、見入っています。


 と同時に、口にはしませんでしたが、

 時を超えて再現された、

 女性の、古の戦神(オーディン)を前に、

 こう悟るのです。


 我如きが、相手になる御方では、

 なかったのか・・・、と。


 自らを過大に評価していた、

 グングニルは、

 即座に、その高慢さを改め、


 ジラに深く騎士の礼をとって、

 こう言うのでした。


グングニル「このグングニルは、

      貴女と、主・クレリスとの、

      対話の席を、

      必ずや、お約束致します。


      ですが、クレリス様は、

      先ほども述べたように、

      未だ、完全なる目覚めを迎えてはおりません。


      このグングニルの未来予測能力では、

      ただ、もっと先になるとしか、

      答えようがないのです。


      あの小さな楽園への、出入りは、

      少女アリスとクレリス様より、


      このグングニルに、

      権限が一任されております。


      よって、今より、

      あの場所へと、貴女を案内させて頂きます。」


 グングニルにとって、


 より強固に主を、

 守護してくれる者の存在は、

 非常に稀有で、

 恵まれた出会いと言えました。


 彼を超える者の存在が、その傍にあれば、

 主、クレリスの目覚めを加速させる為に、

 より多くのプロセスを実行に移せるからです。


 ジラは、突如として、

 態度を転じさせたグングニルについて、

 それを問う気はありませんでした。


 丁寧に一礼して、

 その招きを受ける事にし、

 一言だけ、

 「感謝します。」と、述べました。


 そして、ジラはその小さな箱庭に、

 中の人々を驚かせないように、

 そっと、立ち入るのです。


 それを、遠く離れた位置にいる、

 バルエリナスだけは、

 しっかりと、感じ取ります。


聖王バルエリナス(・・・。


         遂に彼女は、

         現在の戦天使(ワルキューレ)の、

         そのモデルとなった、


        伝承上の存在、


          『ワァルキヤァールの乙女』


         との、

         対話を実現させたというのですか・・・。)


 桜色の長い髪を、腰まで垂らした、

 美しい一人の乙女は、


 天空の鋼鉄の天体の、

 その先の何処か遠くにある、碧空を見上げました。


 彼女は、そっと瞳を閉じ、

 他者に気付かれる事のないよう、


 その艶やかな淡いピンクの唇を、

 ギュッっと、強く噛み締め、


 僅かな痛みと、

 染み込む鉄の味を、


 自らの至らなさを、悔しくも感じながら、


 彼女の胸の奥底深くに、

 その記憶を、刻み付けるのでした。



 白きつるぎによって造られた、

 邪王たちの心の中にある、


 小さくも美しき箱庭へと、

 やって来たジラは、


 そっと見守るように、

 木陰から、少女アリスと銀髪の少年の、

 楽しげに見えるやりとりを、

 見つめています。


グングニル「そこで、

      ただ様子を伺っているだけよいのですか?


      主は、すでに貴女を認識しておりますし、

      きっとアリスも、

      貴女を受け入れる事でしょう。」


ジラ「・・・これは、

   わがままが少し混ざっていますが、


   私は、いずれ

   『神王 セバリオス』の名を冠する、

   かの少年が、


   今のこの状況で、

   どこまでクレリス様の近くに、

   歩み寄れるかを、確認したいのです。


   彼はもう、

   幾多の悲しみを知る戦士として、

   十分に祝福を受けるに足ると、

   信じてはいるのですが、


   言い訳になりますが、

   好奇心というものがあります。」


 そう語る、ジラの頼りない表情に、

 グングニルは軽く頷いて見せます。


 まるで、子供を見つめる母親のような表情をされては、

 さすがに、強引にとはいかないグングニルです。


グングニル「では、このグングニルが、

      まずは少年に近付いてみる事にしましょう。


      彼を、小僧と吐き捨てた無礼は、

      どうか御容赦下さい。


      アリスは、このグングニルをよく存じております。

      では、様子を見て参ります。

      女神ジラ殿。」


 彼のその姿勢は、紳士的で、

 この場にて、

 彼の表情は、とても豊かなものになりました。


 やわらかに微笑みながら、

 ジラに一礼すると、


 グングニルは、

 アリスたちの下へと歩いていきます。


アリスちゃん「あっ、リオンだッ!」


 幼さの中にも、可憐な美しさを持つ、

 無邪気な少女アリスは、


 黒い布地の、欧風の執事服に身を包んだ、

 グングニルの事を、

 『リオン』とそう呼びます。


 それは、彼の身体にクレリスが付けた、

 人としての名。


 未だ僅かにしか、

 その意識を取り戻してはいない、

 力を失いし、伝説上の戦乙女クレリスは、


 彼、グングニルを、

 単なる使い捨ての道具としてではなく、

 気高き人格を備えた、一人の人間として迎え、

 丁重に扱ったのです。


 そんな、クレリスは、

 白い館の窓辺の揺り椅子で、

 彼らのやり取りを、

 本を読みながら、時々、見ています。


リオン「初めまして、リオンと申します。」


 そう少年に言う、グングニルの姿勢は、

 客人を迎えるように、丁寧です。


銀髪の少年「あ、どうも。


      その、何と言いますか・・・。」


リオン「ええ、主から事情は伺っておりますので、

    そのままで結構ですよ。」


 すると、その館の主が気になったのか、

 銀髪の少年は、辺りを見渡す仕草を見せました。


アリスちゃん「ほら、あそこの窓の奥にいるよ。


       『妖精さん』って、私は呼んでるの。」


 そう言って、

 彼女は、窓辺の貴婦人を指差します。


 クスッ、と笑ってみせるクレリスの、

 そのあまりの美貌に、

 銀髪の少年は、照れてしまって、

 顔を下に向けてしまいました。


アリスちゃん「もう、お兄さんったら、

       レディに対して、失礼なのーーッ!!」


 少女は、自らの顔を、

 銀髪の少年に近づけて、

 もっと構ってっ!

 と、いった風にアピールしています。


銀髪の少年「あ・・・、べ、別に、

      そういう意味じゃなくて。」


アリスちゃん「じゃー、

       どーゆー意味ですか!?」


 こんな微笑ましい光景を見せられては、

 間に挟まれた、グングニルとしても、

 まぁまぁ、と、

 金髪の少女をなだめずにはいられない、

 そんな、平和な日常が垣間見て取れました。


 ジラは、グングニルの言う、

 子守りの意味を理解して、

 その表情を、優しくします。


ジラ(こうやって、少女アリスや、

   かのクレリスさえも、

   あのように、心、開かれて行くのですね。


   これは、私では出来ない事。


   私は、未来の主となる少年に、

   感謝をしなくてはなりません・・・。)


 窓辺の揺り椅子から、

 おもむろにクレリスが立ち上がると、

 木陰のジラの方を見つめます。


 彼女は、ただ一回、

 ジラに軽く、首を立てに振って見せました。


 これは、クレリスが、

 彼女ジラを、

 その白き館へと、招いた事を意味します。


 ジラに対話の時が訪れます。


 彼女はそれを決意し、


 その新緑の長い髪に風を乗せ、

 芸術の粋にまで達した、白銀の鎧を身に纏い、


 飾られた純白の生地を、

 華麗に揺らしながら、


 凛とした表情をして、

 クレリスの待つ館へと続く、

 石畳の上に、


 その足を踏み出します・・・。



             そのVIVへと、続きます。
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