飛騨さるぼぼ湧水

飛騨の山奥から発信しています。少々目が悪い山猿かな?

連載小説「幸福の木」 その188話 お猿の籠屋さん?

2013-08-19 16:24:18 | 小説

ハイハイハイハーイ、おまたせ、飛騨の小路 小湧水です。暑い暑い毎日です。飛騨もさっぱり雨が降りません。
ウチの先生も、とうとう氷のシャーベットを食べ始め、今日から昼もエアコンを使うようになりました。そのお陰で、何とか、遅れていた原稿ができたようです。
それに水シャワーじゃ、体熱がこもると言って、温水シャワーに変えました。やはり血管を開いて放熱した方がいいのでしょう。
それに、今日、最後のお客さんが来たようで、お盆前後は、連日墓参りの客があったようです。
はい、てな訳で、早速、小説に参りたいと思います。はい、では、開幕開幕!

188 お猿の籠屋さん?

(ちえっ、どうして、こんな事になったんだ?)
太郎は大声で叫びたかったが、口には出さなかった。
と言うより、出せなかった。
「ほんとに、おぶってまでしてもらってすまないね。今まで一人で住んでいたんだから放っといてくれればよかったんですけど・・」
背中の上のお婆さんがすまなさそうに言った。
太郎は、真赤な顔に汗があふれ始め、答える余裕もなかった。
「お婆さん、遠慮しなくていいよ。うちの隊長はお年寄りを放っとく事なんか絶対できない人だから」
六太が誇らしげに言った。
「そうだよ。だから、お婆さんを残して逃げた村人達に腹を立てたんだよ」
龍坊も合槌を打った。
「まあ、自分の言葉で、こうなったんだから、誰も怒れないわね」
ハナは、太郎の不満顔を見ながら、全く同情しなかった。
「まあ、それにしても、うちのお兄ちゃんも、ちょっと大人になったかな?つい、この間までは、その場限りの好き放題をやっていたのに」
爺は、まじめそうな顔で言って、陰で舌を出した。
「そうじゃ。一人前の男なら、自分の言った事にはちゃんと責任を持つからな」
元村長も、皆にちょっと舌を見せた。
皆と言っても、婆を背負った太郎の後のゴクウやハナや爺達だけだった。
先頭をまじめに歩いているケンや六助、それに龍坊や六太達には内緒だった。
「ああ、疲れた!ハナ、水をくれ。ちょっ、ちょっと休もう!」
ずっと口をきかなかった太郎が、急にヘナヘナと地面に崩れ落ちた。
「ちょっ、ちょっと、太郎兄ちゃん、何するの。そんな降ろし方、危ないじゃない。お婆ちゃんが怪我したら、どうするの!」
ハナが、婆さんに駆け寄った。
「ハナさん、隊長は、わざとじゃないんですよ。ふんばろうとしても力が尽きたんですよ」
ゴクウが太郎を弁吾した。
(えっ、情けない!)とでも言うように、ハナが太郎を見下すと、
「ハナ、そんなら、お前が背負ってみろ!」
と太郎が毒づいた。
「あの、兄弟ケンカならやめて、やっぱり私は村へもどるから。ここで降ろしてもらってけっこうよ。あなた達は、急ぎの旅なんだから、出発してもらってもいいよ」
と言うと、お婆さんは、傍の石に腰かけた。
「えっ、ここで降ろすって?そっ、そんな事、できないわ・・」
ハナが驚いた。
「えーっ、こんな所にひとり残すなんて、それなら、初めから連れて来なければよかったんじゃ」
爺も声を上げた。
「ああ、そうでした。やっぱり私も初めから断ればよかったんです。だんだん赤鬼の土地へ行くのが怖くなって来ました。いくら、もう住んでいないとあなた方に言われても、怖しさが心に沁みついているんです」
と、お婆さんは背筋を立てて、元来た道の方を見た。
「そんな、ここまで来て帰るなんて、それじゃ、隊長の苦労も無駄になってしまうよ」
六太ががっかりした。
「それに、こんな所は村より危険だ。ますます残していけないよ、ねえ、隊長?」
龍坊も心配顔で太郎に言った。
「・・・・」
が、太郎は、疲れたふりをして返事をしなかった。
「ほらっ、鬼達が移住したと言っても、中には、残っている鬼達もいるかもしれないわ。私は、やっぱり村へもどる事にします。大丈夫です。ゆっくり歩けば今日中にもどれます」
お婆さんはもう太郎の気持を見ぬいていて、安心させるように言った。
「お婆ちゃん、そんな事を言わないで。一人置いて行くなんてできないわ。太郎兄ちゃん、何とか言ってよ」
ハナが悲しそうに言った。
「・・・・」
太郎は黙っていたが、明らかに、背負うのは、もうウンザリと言う顔をしていた。
龍坊と六太は顔を見合わせた。
隊長が時々休めるように、自分達も背負おう!と思ったが、子供の小さな体では無理だった。
爺や元村長達も、顔を見合わせて同じような事を考えたが、やはり、老人の体力では無理な事は明らかだった。
「・・・・」
気まずい雰囲気になった。
「まあ、今日は、ここで泊まる事になるかもしれんな。時間がいっぱいあるから焚火の薪でも拾ってくるか」
と言うと、元村長は、その場を逃げるように近くの森へ入っていった。
「ああ、それなら、わしは水を探しに行って来るか。ついでに水浴びでもして来るか」
爺も、どこかへ行ってしまった。
ケンや六助達は、元村長や爺達に付いていった。
龍坊も六太も近くの草むらへ遊びに行った。
「まあ、皆バラバラになって全部太郎兄ちゃんのせいよ」
ハナだけが、プンプン怒っていた。
、暇ができて退屈していたのか、お婆さんが、何かセッセと手を動かしていた。
「お婆ちゃん、何しているの?」
ハナが覗くと、細い藤ツルで小さな籠(かご)を編んでいた。
「ああ、これは、皿の代わりになるよ。まだ藤ツルがたくさん有るから、記念に皆の分を作ろうと思ってな」
ハナは、お婆さんの手だけのすばやい作り方に見とれていた。
「ああ、この辺りの薪は湿っていて駄目だ。もう少し先へ行こう」
元村長が、もどって来た。
「ああ残念、この辺りはきれいな水がない。泥水みたいじゃ」
爺も愚痴を言いながらもどって来た。
「いやいや、やはり、ここでの泊まりは無理じゃ。もっと先へ進もう。太郎君よ、悪いけど頑張って、もう一度、お婆さんをおぶってくれ」
元村長が、草に寝ころんでいる太郎に言った。
それを耳にしたお婆さんが、
「私は、この先へ行くつもりはないから、行くなら、私を置いて行ってくださいよ」
と大きな声で言った。
「お婆さん、そんな子供みたいな事を言わない事じゃ。今度は我々も手伝って騎馬戦のように三人で担ぐから大丈夫じゃ。どうじゃ、これならいい案じゃろ?ねえ、村長?」
爺が、お婆さんと元村長に言った。
「おお、名案じゃ。それなら、太郎君の疲れも少なくなる」
元村長が喜んだ
「ああ、その手が有りましたね。それなら、隊長も少しは楽になりますね」
ゴクウも賛成した。
「あの、何回も言っておきますけど、私は、ここを動くつもりは無いですからね。力づくで私を連れて行こうとしても無駄よ。誰も私に触れさせませんから」
と、お婆さんがキッパリと断った。
元村長や爺達は顔を見合わせた。
ハナやゴクウ達も驚いたが、太郎だけは嬉しそうな顔をしていた。
龍坊と六太達も、もどってきていた。
元村長と爺達は、深いため息をついた。
すると、ゴクウがハナに耳打ちをした。
ハナは、そっと太郎の袋から絹のロープを取り出した。
そして、お婆さんの横で、同じように藤ツルの代わりに大きな物を編み出した。
「おや、ハナちゃん、何をしているんです?」
お婆さんが不思議そうに聞くと、
「私も、せっかくの機械だから、その編み方を、お婆ちゃんに教えてもらおうと思って。大きい方が覚えやすいと思って」
とセッセと編み出した。
お婆さんは、嬉しそうな顔をして親切に教えてくれた。
絹のロープは柔らかいので藤ツルのように籠の形にはならなかった。
「さあ、できたわ。ああ、ちょうどお婆ちゃんの座っている石がいい形をしているから、そこへ置かして。お婆ちゃんの、座布団だわ」
とハナが言うと、お婆さんは嬉しそうにハナの編んだ大きな絹籠を石の上に置いて、その上に座った。
「うーん、所々いびつだけど、初めてにしては上出来だわ」
と柔らかい絹なので、気持良さそうに座っていた。
すると、ゴクウがお婆さんの傍へやって来た。
「お婆さん、いいですか?ここは泊まるには向かない場所ですから、もう少し先へ移動しますよ。いいですね?」
と聞いて来た。
「えっ、だから、私は、ここを動かないから、かってに、どうぞ!」
お婆さんが、そう答えると、ゴクウが、
「はい、かってにどうぞ!と言う事ですから、そうさせていただきます」
と言って、振向いて合図をした。
すると、龍坊と六太が一本づつ竹の棒を持ってきて、お婆さんの座布団の絹籠の端の二箇所を通した。
「おや、子供達よ、いったい何の遊びをするつもりですか?」
とお婆さんが不思議がっていると、
続いて、元村長と爺と太郎とゴクウの四人が、やって来て、それぞれ竹の棒の端を持って、お婆さんを座布団ごと吊り上げた。
「はーい、ほいほい、お客さん、お待たせいたしました。では、出発いたします。ほいほい、これはお猿のカゴ屋さんじゃ、はっはっはー」
爺が笑い飛ばした。
すると、ハナや龍棒達皆も笑い出した。
吊り上げられて驚いていたお婆さんも、釣られて笑い出した。
「ハッハッハー、ホーイ、ホーイ、お猿の籠屋だ、よいさっさ!」
爺の元気のいい声の籠の後を、龍棒や六太やハナ達が、あわてて荷物を持って付いて行った。
ゴクウの赤いオシリだけが目立って、龍坊達がクスクス笑っていた。
ところが、そのうち、ゴクウのシリも目立たなくなった。
「あれっ、何か変だな。何か様子が違うぞ。あっ、この辺の土は赤いんだ。それでだ」
龍棒が叫んだ。
「そう言えば、前に村長さんが、何か赤い国があるとか、言ってたような気がするが、そうじゃなかった、龍ちゃん?」
六太が言った。
「あっ、もしかしたら、赤鬼ってその赤い土に関係あるんじゃない?」
ハナが言った。
「あーっ、見て見て!あれ何?」
龍棒が立ち止まって、前方を指さした。

ハイハイハイハーイ、時間となりました。相変わらず、暑いままです。もうエアコン無しではおれませんね。アーキよ来い!ハーヤク来い!、でもフユはオーソク来い!です。はい、アッシも、頭がオーバーヒートしてきました。はい、皆さんも熱中症に気をつけて!はい、またの、お運びを願いまして、バイバイババイとさせていただきます。
はい、では、雷雷雷早く来来来!



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