抜け殻。
ヒグマ。
ハンターでもある同僚が、ベテランハンターからわざわざ借りて、見せに持ってきてくれたものだ。
すでに毛皮になっているので、安全このうえないヒグマだ。
試しにかぶってみたら、俺と同じくらいだった。
ヒグマとしては大きくないが、知床や日高山系ならともかく、当地ではこんなもんかな。
渡島半島は狭いし、クマはかなりいるから、クマの人口密度というか熊口密度が高い。
必然的に個々のテリトリーは狭くなるから、巨体を養うのは困難になる。
だから、当地のクマは小さめのばかりになったのだろう。
顔。
毛の手触りは、犬みたいな感じだ。
ちょっとごわごわしていて、少しクセっ毛。
金色に輝く毛がゴージャスだ。
こんなのを玄関とかに敷いてあれば、ものすごく金持ちな感じだろう。
顔の裏。左が鼻先だ。
毛皮屋できちんとなめしてあるから、きれいなもんだ。
写真で上のほうの小さな縫い目がライフル弾の射入口、下のやや大きな縫い目が射出口らしい。
これで革ジャン作ったらすげえだろな。
ヒグマの必殺兵器、鉤爪。
こいつがないと、クマの毛皮は価値が半減するらしい。爪を残すために、指先の骨をわずかに皮に残してあった。
クマはテリトリーをマーキングするために、こいつで木に深く傷を付ける。
鉤爪の先端は刃物のようには尖ってないから、これで木に深く切り込むには、生半可じゃないパワーが必要だ。
クマと殴り合いはするもんでない。出遭ってしまったら、目線を切らずにゆっくり後退して、距離を取れたら逃げの一手だ。
クマの間合いで目線を切ったり、後退するときに転んだりしたら、そこを狙われる。慌てて走れば追ってくる。相手は四つ足の上に俊足だ。山の中じゃ人間は逃げ切れないと思ったほうがいい。冷静に対応することだ。
・・・とは理解していても、実際遭っちゃったらなあ。くわばらくわばら。