老い生いの詩

老いを生きて往く。老いの行く先は哀しみであり、それは生きる物の運命である。蜉蝣の如く静に死を受け容れて行く。

304;愚かな涙

2017-08-16 04:33:35 | 読む 聞く 見る
 高見順『死の淵より』「愚かな涙」講談社文庫

愚かな涙

耳へ
愚かな涙よ
まぎれこむな
それとも耳から心へ行こうとしているのか


この高見順の詩集『死の淵より』は
私が32歳のとき身体障害者療護施設で働いていたときに
出会った詩集である
高見順は食道癌の手術前後病床で記した63編の詩集
(彼は57歳の若さで亡くなった)
私にとりいまでも心の詩集である

「愚かな涙」も好きな詩の一つ
高見順の詩は、「死」をみつめる
仰向けで病床に臥していると
悲しややりきれない気持ち
眼尻から涙が流れ落ちていく
その涙は耳の中へまぎれこむ
涙は耳から心へ届き
悲しみが心にも沁みていく


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