老い生いの詩

老いを生きて往く。老いの行く先は哀しみであり、それは生きる物の運命である。蜉蝣の如く静に死を受け容れて行く。

1081;椿姫 “銭湯を懐かしむ”

2019-04-29 08:45:17 | 読む 聞く 見る
浅田次郎 『椿姫』 文春文庫
椿姫 “銭湯を懐かしむ”

不動産会社の社長 高木は、経営に行き詰まり、
不良債権担当の銀行員から
「なら社長、あの保険は何です?」と迫られ
保険金は2億9千万円
自殺することを仄めかされる。
銀行は、晴れた日に傘を差しだし、雨の日に傘を取り上げる

死に場所を求め彷徨った高木は
二十年前に妻と暮らした古アパート 福寿草 が脳裏に浮かぶ
福寿草には風呂がなく、近くの銭湯“椿湯”に通っていたことを想い出す。

高木は“椿湯”の暖簾をくぐった。
番台の店主小さな老人は、高木のことを覚えていた。

銭湯の庭には、山茶花の垣があった。
高木は「山茶花なのに、椿湯ですか」
山茶花と椿の花はよく似ている

「たわわな紅を灯す花(椿姫)を見るうちに、わけもなく高木の胸は詰まった。
すべてを忘れてしまった。生きるために記憶を淘汰したのではない。
金と欲にまみれた時代の向こう側に、すべての記憶を置き去りにしてきた」
70頁)

高木は二十年前の風景の一部であった銭湯“椿湯”に再会する。
高木が銭湯で邂逅した椿姫とは、恋人だったころの妻との貧しい生活ながらも楽しかった日々を想い出す。
金欲に溺れ、何か大切なことを忘れ失ってしまっていたことに気づく高木。

二十年前、妻はいつも青いベンチに腰をおろし
高木(恋人)の湯上りを待っていた。
「洗い髪が芯まで冷えた」お詫びに、高木は一輪の椿姫を濡れた髪の耳元に飾ったことを想い出した。

ここで、かぐや姫の『神田川』を聴きながら椿姫を想う。





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2 コメント

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浅田次郎さんは若い^^ (はな)
2019-04-29 11:18:57
>銀行は、晴れた日に傘を差しだし、雨の日に傘を取り上げる

これ↑本当らしいです^^
母が 良いお世話になりました

『神田川』聞くたびに懐かしい・・・・
私も こんな生活をしていた頃がありました。
悪い旦那から逃れて 逃げ出した先で出会った人との生活。

人生って 書いたように演じられていくのですね。
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人生も一つの小説 (星光輝)
2019-04-29 14:13:03
はな さま

『神田川』 名曲ですね。
私の古アパートは風呂がなく、といれは「共同」でした。
貧農のころも家の中に風呂がなく、川の淵から幾分離れたところに「ゴエンモン風呂」を造り、バケツで川から水を
汲み、薪で風呂を焚いた。パノラマの露天風呂。四方八方から見られていた。当時は盗撮はなかった。冬は、ゴエンモン風呂は雪に覆われ入れなかった。

椿姫 これもTVドラマ化したら、高木役はやはり西田敏行になるのかな・・・・
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