ヘルズブログ

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ひとり西尾維新まつり

2010-06-24 09:39:00 | マンガアニメ映画とかの感想
さて、友人より西尾維新の戯言シリーズを
まとめて6タイトル9巻借りてたのだが
面白すぎて一気に読んでしまった。
手元のメモだと4日に1巻を読み終えて
全巻読了が14日だからほぼ10日で8冊か。
家ではあまり読まないようしてたけど
寝際とか読み進めてしまった。

読書人生の2歩目のキッカケとなる
ミステリ好きの兄貴分が絶賛してたのだが
兄貴とも疎遠になってしまったので
読む機会を逃してたのでとても良かった。
そう言や俺は西尾維新と同い年みたいなので
ダメ人間してた頃に西尾維新は鮮烈デビューなんだなー
松坂とかと同い年の気持ち。

話は逸れたけどメモと感想。
万一これでまた気になった人の為に
あまりネタバレしないようしておこう。

●1 クビキリサイクル
一作目。アニメ刀語やめだかボックスで
西尾維新の文体と言うか作風に事前知識があったとは言え
あまりにクセがある文章でちょっと面くらうが
そんなのをブッ飛ばす文章力と異常さの魅力で読みきる。

絶海の孤島の洋館、
天才でおかしい人ばかりの登場人物
そして密室殺人。
デビュー作からして生理的にすごい嫌なタイミングで殺人が起きる。
ショッキングさの演出は達人のようだ。

そして過去も今も色々隠していて
人間的にも不安定な探偵役の主人公「ぼく」。
シチュエーションも容疑者も、最後の動機も異常なのに
起きた事件のトリックと言うか本質はむしろ古典なのが面白く
狂言回しの主人公がワザと言わなかった事実、
見抜けなかった秘密を更に上位の人間が解き明かし
主人公も愕然とするスタイル。
探偵が読者化する構図は斬新のような気がする。

まぁ端的に言うと面白い。

最初は前提条件がすごいので
正直主人公犯人オチや全部の前提無視して
PKかテレポート密室殺人なんて言う殊能将之的なオチも予想してたので
まっとうに裏切られましたのが良かったw

ちなみに上記条件みたいな小説をちょっと考えてますw

●2 クビシメロマンチスト
連続して起きる通り魔殺人の殺人鬼と知り合う主人公。
それとはまったく別に起きる次々友人が死んでいく奇怪な連続殺人。

どこ書いてもネタバレしてしまいそうなのであまり書かないが
本筋とはあまり関係なく、主人公と意気投合する(と言うべきなのか?)
鏡写しのように正反対にそっくりな殺人鬼「零崎人識」が面白い。

ぼくが作中中盤くらいで気付いてるのが読み返せば分かるのだが
それを分からないようする叙述トリックと
ぼくがワザと情報を読者に提示しない2重のトリックはビックリ。
真相はズルいと思うが作者の腕前が振るわれてて俺は好きよ。

本作も密室。
4作目まで密室を意識したのを考えると
ミステリ=密室的なポリシーでもあるのか。

事件自体の凄惨さとオチの救われなさは一番酷くて一番好きかも。

●3 クビツリハイスクール
聞いた話では本来なかったらしい3作目。
隔離された有名お嬢さま女子高は
実は傭兵育成施設だった!
追っ手を撒きつつ事件も解くと言う
バトルとミステリの挟み撃ち的な話。

殺人事件の密室と、要塞のような学校を密室に見立てた2重構造。
特殊能力を持った戦士が多数出てきてこの時点では異色だけど
後半のバトル物としてはここが基点なんだろうなぁ。

事件としては意外と地味。
前提条件が真相とイコールのなる事実を知った後で
読み返すとまた違うのかなぁ。

子荻ちゃんが後々になる程、主人公の気持ちの中でも
世間的な評価でもデカくなってくるのがちょっと違和感。


●45サイコロジカル上下
物語の基点になってる玖渚友の旧知の仲「さっちゃん」を救いに
厳戒警備の研究所へ向かう一行。
今度は機械仕掛けの密室で起きる猟奇殺人。

好みじゃない事件とオチなせいかあらすじも簡素w
さっちゃんのキャラがちょっとイラッとする。
そろそろ各メンバーの過去が明らかになってくる。
理屈は分かるがオチはちょっと釈然としない。
読者に解法を匂わせたトリックと言う意味では面白いけど。


●6ヒトクイマジカル
行き倒れの少女を助けたら最強の殺し屋!しかも二重人格!
やっかいな二人で一人と仲良くしつつも
誰もが嫌な予感を感じる研究助手のバイトを受けてしまい
そこで起きる惨劇。

この巻から謎よりバトルの方が強くなってくる気がする。
聞いた話では4作目までが契約によるリリースで
以降のこの巻からが人気によるリリースだとか。
この辺りからちょっと味が変わる気がする。
話を収束させる為かもしれんが。

人がパズルのように猟奇殺人に合う話なのに
レギュラーキャラが死ぬのは凄く嫌だなぁ。
そう言う風にしてるんだろうけど。

●789 ネコソギラジカル
ヒトクイで出会った男はなんでもない「ぼく」を敵と位置づけ
「世界の終わり」を見ようとする。
男とその手足になる側近「13階段」を相手に
主人公は敵対したり和解したり理解しようとしたりする。

あまりに暴力的な相手が増えるのでバトルが増えるが
戦い自体は世界を俯瞰して見たいと言う男が臨む
定義付けできない「世界の終わり」を巡る観念的なやり取りが増えるあたり
安易なラノベでないなーと思わせる。

やはり事件でない死は嫌な見せ方をするが
戦闘キャラを増やした上でのリアリズムであるのかなーとも思う。
ちょっと13階段が冗長な気もしなくも無いが
腰を据えた上中下巻なだけに分かりづらい観念的な部分と
いい加減な性格で手の付けられない野望の男を
書き切った感があるのは見事
分かった気になるのは不遜なのかもしれないけれど

敵味方がなぜか共同生活する終盤と
ベタすぎるオチは結構好き。

長々書いたが長い本を読了した感想なのでご勘弁を。


キャラとしては
軽妙なトークの零崎人識(と主人公の会話)
意味不明、ムダにエロい、そして主人公をキレキャラにする春日井春日
品が無いけど意外と情に厚い匂宮出夢
あたりが好き。


ミステリ+猟奇好きの視点で書いてみた書評だが
振り返るとトラウマ、愛憎に悩み世界と乖離してた「ぼく」の
恋愛であり成長のジュブナイルだったようにも思える。

ミステリの要素がジュブナイルに食われた感はあったし
それで一部不評でもあるらしいけど
(他人の書評も結構好き)
不安定な主人公の思考+「戯言」による二重の叙述トリックが
本作を独自のミステリにしてた訳だし
パズルであり即物的な「ミステリ」から
キャラそれぞれの今や明日や生き方を見たくなってしまった
読者と言うか俺からしたらまぁ良いんじゃいかなと思う。

「ぼく」を大きく変えてしまった6年前とヒューストンの二つの事件やら
色々な伏線は詳しく語られないままだったし
気になる事ばっかだけどまぁ面白かったしいっか。

あと本作の主人公…と説明したが語り部の「ぼく」には
「いーちゃん」などのアダ名しか出てこないと言うキャラ設定が面白いなぁ。
ヒントは出してるのに解けないあたりがいい。
呼び名はあるとは言え呼び名が無い主人公と言うのは
隅の老人の事件簿に通じるのではないか?
そうでもないか?

それと余談だが読み終わってからめだかボックス見ると
被ると言うと失礼だがリボーン的なキャラはいるよなぁ。
出夢くんと冥加とか、右下るれろとくじら姉とか。
まぁ下世話な詮索かな。

それにしてもくどくてカオスで魅力的だった本作も
未練を残さず華麗に完結したようだ。
でもスピンオフも貸してくれるようなので楽しみにしよう。
じゃあばいばい、セリヌンティウス。