ハルナツアキフユ 

転移性悪性黒色腫(メラノーマ)と診断された夫のことや
巡る季節の中で思うことを綴っていきます。

新薬オプジーボ治療に向けて

2014年07月31日 | 悪性黒色腫(メラノーマ)


今日は、お昼過ぎから夫、私、娘の3人で、車で築地へ向かいました。

家から国立がんセンター中央病院まで1時間半程度かかりました。
まあ、これぐらいならこれから通える範囲だなと思いました。
最近の夫にとって何より負担になっているのが通勤だったので
車なら彼には楽チンです。(私は運転で疲れますけれど。)

T先生は思っていたよりお若く、とても切れのよいシャープな方。
それでいて、とても温かみがあって
「この先生なら安心!」と思わせてくれました。

先生は、これまでの経緯を一通り確認した上で、
『肝臓に転移が進んだということで、
免疫療法薬である新薬オプジーボ(二ボルマブ)を使うのが
最もよい方法であると思います。
この薬は「ガンを攻撃する力」を高める薬剤ですが、
一度効果が出始めると長くその効果が続くと言われています。

治験といういう方法もありますが、
さまざまな制約があるので、(国籍もひっかかるかも?)
それよりは無償提供の治療がよいでしょう。

治療はまず2泊3日の入院から始まり、
体重×2mgのオプジーボを2時間かけて点滴静注します。
副作用をみながら3週間毎に繰り返し、
3回を一つのサイクルとして検査をしながら効果をみていきます。
2回目からの点滴は外来でできますので、入院する必要はありません。
副作用は個人差が大きいですが、
重いものでは症例は少ないながらも
間質性肺炎、甲状腺機能障害、腸炎、肝炎、ブドウ膜炎などがあります。
軽いものでは発熱、不整脈、便秘、下痢、疲労、発疹、食欲減退、筋肉痛などがあります。』
と、説明してくれました。

それでも、すでにアメリカで承認され標準治療薬となっている
イピリムマブの副作用よりはずっと少ないようです。
イピリムマブも、もうすぐ日本で承認されることになるので、
いずれはイプリムマブと二ボルマブを合わせて使う治療も始まるでしょう。

入院は8月20日となりました。
治療についてじっくり1時間お話していただき
夫も治療に対して安心感を得ることができました。
途中Y先生も顔を出してくださり、
「ここではチームとして診ていきますから、安心して治療に専念してください。」
と、力強く言っていただきました。
とても頼もしく、そして嬉しく思いました。

この免疫治療を始めるということは
いろいろな意味で一つの区切りとなるということです。

28歳で日本に来て30年、ずっと教壇に立ってきた夫。
今でも見た目は超元気で健康そのものなので
つい病気である事を忘れてしまいます。

でも、せっかく免疫療法を受けるのに
免疫力が下がっては元も子もないことを考えると
夏休みが終わっても仕事はしばらく休んで
治療に専念してもらおうと思います。

今日は娘の誕生日でしたが、
父親の受診に病院の夜勤明けなのにつき合ってくれて
家族でよい時間を過ごすことができました。
これからも家族の時間を大事にしていきたいと思います。












7/28 CT検査の結果とこれから

2014年07月30日 | 悪性黒色腫(メラノーマ)


28日は胸部と腹部のCT検査でした。
この1年間を振り返ってみると
右肺⇒脳⇒左肺と転移はありながらも
一つずつ小さく、緩やかに転移してきているので
検査の度に緊張や不安はありながらも
「きっと大丈夫!」と思ってきました。

検査は朝9時半には終わりました。
先週が祝日だったこともあるのか
国際医療センターの包括がんセンター待合室はものすごい人の数。
同じフロアにスタバがあるのでそちらで待つことに。
呼び出し機があるのでかなり遠くにいても鳴ります。
夫と夏の予定や、今後のことなどを話しながら
I先生に呼ばれたのはすでに1時を過ぎていました。

診察室に招き入れる時のI先生の、
笑顔だけれどちょっと曇りがある顔に
ほんの少し不安感がよぎりました。

先生はまず左肺の腫瘍の進行状態から説明。
計測したり断面層をスクロールしながら
「前回4月から1mm程度大きくなって7mm弱ですね。
わずかに増大しているようです。
でも、右肺の上にちょっと怪しい小さな結節があります。
転移の可能性は否定できないですが
今の段階では腫瘍かどうか断定はできません。」

「そして臓器のほうですが・・・
肝臓に2カ所、ちょっと怪しい影があります。」
計測すると30mm弱と1mm弱で
確かにその部分だけグレーに写っています。
先生は「今からエコーを撮りましょう。」と
夫をエコー検査室へ送り出しました。

そして、申し訳なさそうに私の顔を見て
「ご主人には言いませんでしたが、おそらく肝転移です。
新薬の治療、受けられるなら受けた方がいいでしょう。」と。

その時点で、事の重大さを悟った私ですが
頭は半分パニック状態。
でも半分は冷静に反応していました。

新薬オプチーボ(二ボルマブ)は、現在治験ではなく限定的に治療が可能になっています。
以下は小野薬品の「オプチーボの製造販売承認取得のお知らせ」から抜粋したものです。
オプジーボの早期使用が必要な場合を想定し倫理的な観点から、
薬価基準収載までの期間、薬剤提供準備が整い次第、
本剤第II相臨床試験実施施設のうち薬剤提供が受け入れ可能である一部の施設に限定して、
本剤を無償で提供することにいたしました。


そういうことであれば、夫も受けられるはずです。
その後、先生といろいろ相談して
国立がんセンター中央病院のY先生に電話をしていただきました。
それから私ががんセンターに電話をして予約をとりました。
前回受診したのは1年前でイピリムマブの治験ができるかどうかの相談でしたが
そのときに診てくれたN先生は今アメリカに1年間行っていていません。
T先生が引き継いでいるということで
T先生と直接電話でお話することができました。
先生は、状況を聞いて「新薬の治療が一番いいかもしれませんね。いつこれますか?」と。
「水曜日はいかがですか?』という事で、30日の3時半に伺う事になりました。
短い時間の会話でしたがT先生の声はとても温かく、そして力強く
話し終わったらホッとして涙がでてきてしまいました。
I先生には診療情報提供書と画像のCDを用意していただきました。

今日(30日)
夫と、ちょうど夜勤明けの娘と3人で国立がんセンターに行ってきます。
(今日は娘の誕生日なのに・・・娘よ、ごめんね。)
行ってみないと実際に治療の対象になるかどうかわかりませんので
あまり大きな期待はしないように自分に言い聞かせています。

さて、どうなることでしょうか。








春から夏へ

2014年07月22日 | 悪性黒色腫(メラノーマ)


6/6の検査を終えてから
いろんなことがありました。

夫の歩行困難は相変わらずで
通勤のストレスは4月以降大きくなる一方で
ちょっとしたことで激怒したり
イライラしたりで
以前にもまして気難しく
扱いにくくなっています。

私はといえば
別にそれが原因ではないとは思いますが
健康診断でひっかかり
大腸の内視鏡検査を受けることに。
初めての内視鏡検査で
自分の大腸のきれいさに見とれていたら
何と最後に直腸のポリープ発見。
その場で即切除しました。

病理検査の結果を聞くまで
ガンかもしれないと
かすかな恐怖もありましたが
まあ、そうならそうで仕方ないと開き直っていました。
結果はただのポリープとのことで
今後は定期的に検査をして行くことになります。

夫には「僕のスポットライトを奪われないでよかった。」と言われ
正直な気持ちなんだろうな~と笑ってしまいました。

7/28の検査の結果にもよりますが
9月に肺の腫瘍の切除をすることになったら
夫はその後の仕事を少しスローダウンしたいと考えています。
もしあちこちに転移しているようであれば
すぐにでも二ボルマブによる治療を受けたいところですが
まだどの病院でも受けられるわけでもないので
どうなるのかわからない不安はあります。

夫にとっては、いつあちこちに転移するかわからないなら
いっそ、仕事を辞めて好きなことをしたいという気持ちもありますが
「だったらお前も仕事辞めて一緒に旅をするのでなければ意味がない。」と。
気持ちはわかりますが夫婦で無職というのもちょっと不安です。
でも老後はキャンピングカーで旅をしながら・・・と夢見ていた夫。
叶うものなら叶えてあげたいと思います。

毎度のことですが
検査前の1週間はいろいろなことを考えるものです。
できるだけストレスをためないよう
ゆったり過ごせるといいなと思っています。













“Meet the Expert”を終えて

2014年07月06日 | 悪性黒色腫(メラノーマ)


今回の“Meet the Expert”開催に向けて
準備段階から大きな課題だったのが「集客」でした。

学会でのセッションと聞くだけで
一般の人には、ちょっと敷居が高い気がします。
また、1時間のセッションで果たしてどれだけの
質問に答えてもらえるのかという思いもあるでしょう。

患者会ホームページやFacebookで案内を出すと
立て続けに申し込みがありましたが、
30人程度までいくと足踏み状態となり、なかなか増えず・・・。
でも質問は多くの方から出されました。
今回、共催で患者会と共に準備してきた特定非営利活動法人JASMINの岸さん、
何から何まで教えてくれ未熟な私たちを導いてくれましたが
「では、次なる手でいきましょう。」と、
大手の新聞社3社に、募集の記事を載せてくれるよう依頼してくれました。
しかしながら、一般的には「メラノーマ」という病気の知名度は高くなく、
「メラノーマのセッション」参加募集の記事は、結局どこでも載せてもらえず・・・。

そんな中での『小野薬品の新薬ニボルマブ 世界初承認へ!』のNHKニュースに加え
患者会の代表インタビューがテレビで放映されたこともあって、
申し込みは、日に日に増えていきました。
また、岸さんのご尽力のおかげで、開催数日前ではありましたが、
読売新聞夕刊に募集の記事も載せていただくことができました。
新聞の威力は大きいもので、数日間でたくさんの申し込みがありました。

とはいえ、集客には「天候」も影響します。
何と言っても梅雨時です。
前日は雨、当日の朝も雨が降っていたので
「果たして申し込んだ人の何割が来てくれるだろうか。」と心配に。
でも昼過ぎには雨もほとんど止んでくれホッとしました。

最終的には、なんと80名近くの皆さんが参加してくれました。
申し込みしながらも来れなかった方もいましたが
当日参加してくださった方も多く
会場の後ろから、たくさんの参加者の後ろ姿を見ていたら
嬉しくて胸がいっぱいになりました。

1時間という限られた時間の中で
質問は発症原因や予防、皮膚の移植や症状、再発の見分け方、治療方法、
具体的な症例への対応方法、新薬についてなど多岐に渡っていましたが
座長である大原國章先生が、事前に頂いていたひとつひとつの質問に答えながら
竹之内辰也先生、古川洋志先生にも投げかけてそれぞれの先生方が答える、
さらに、会場に向けて「この質問に関してもっと聞きたいことはありませんか。」と確認し
質問があれば、それに答えるという形で進められました。

注目の新薬については、今後承認が期待される新薬も含め
竹之内先生が、スライドを使ってわかりやすく説明してくれました。
ちょうど前日に新薬が承認されたことで
今後の治療が今までとは大きく変わることへの期待や疑問、
また、副作用への不安などの質問が会場から出されました。

大原先生は、そんな熱いやりとりを絶妙にまとめあげ
事前に参加者から頂いていた質問には、ほとんど答えていただいた上に
会場から出た多くの質問にも答えていただき
最後には、患者会代表から挨拶の時間もいただき、2時半には終了しました。

どの質問にも真摯に誠実に受け答えしてくれた3人の先生方を見ていて
「きっと、先生方の患者さんと先生はいい信頼関係を築いているのだろうなあ。」と思いました。
質問の中にはとても重篤な状況にある方の不安や、疑問もありましたが、
竹之内先生が、お話の中で
「不安な時、わからない時はいつでも会いにきてくださいと患者さんに伝えています。」
と、おっしゃったのが印象的でした。
やはり、いつも思いますが
治療に一番大事なものは、患者と医師との「信頼感」だとつくづく思いました。

今回、このような機会を患者会にために設けてくださった、
第30回日本皮膚悪性腫瘍学術大会会長の山崎直也先生、
Expertとして質問に答えてくださった大原國章先生、竹之内辰也先生、古川洋志先生、
何もわからない私たちを導いてくださった特定非営利活動法人JASMINの岸さん、
大変お世話になりました。ありがとうございました。
そして、参加してくださった皆さん、本当にありがとうございました。

これからは患者会の正会員、賛助会員を増やしていくために
本格的に全国の病院等にも周知していかなければなりません。
新薬が承認されたこともあってメディアには引っ張りだされましたが
周りに振り回されないよう、地道にやっていきたいものです。

現在、9月に向けて患者会としてイベントを準備しています。
まだ詳細が決まっていませんが、決まり次第お知らせしますね。


小野薬品二ボルマブ(製品名「オプジーボ」)がついに承認!

2014年07月05日 | 悪性黒色腫(メラノーマ)


本日、小野薬品の新薬PD-1抗体薬ニボルマブ
(製品名「オプジーボ」)が製造販売承認されました!!

小野薬品ニュースリリース

昨年のクリスマスイブに承認申請が出されてから、
約半年での異例のスピード承認となりました。
しかもPD-1抗体薬としては世界初の承認です!!

2005年から9年かかってついにここまで来た
小野の研究者に大きな拍手を送りたい!
日本人として大きな誇りを感じます。

通常は、承認から薬価基準収載まで2か月程度の期間がかかるのですが、
倫理的な観点から薬剤提供準備が整い次第、第相臨床試験実施施設のうち
薬剤提供が受け入れ可能な一部の施設に限定して、新薬を無償で提供するとのことで
数ヶ月でも待つことができない患者さんにとっては朗報です。

治療の選択肢が増えるということは、生きる希望が増えることであり
患者さんやご家族にとってこれ以上嬉しいことはありません。

最近、調子が今ひとつで不機嫌な夫でしたが
ニュースを聞いて元気が出ました。
今夜は久しぶりに新薬への期待をずっと話し続けました。
生きることへの希望が膨らんだようで、私も本当に嬉しいです。

さて、こんな絶妙なタイミングで開催される、明日の「Meet the Expert」ですが、
多くのお申し込みをいただきました。
でも、まだお席に余裕がありますので当日の飛び入り参加も大歓迎です。
患者さんやご家族でなくても参加できますので、ぜひお越し下さい。

"Meet The Expert"