ハルナツアキフユ 

転移性悪性黒色腫(メラノーマ)と診断された夫のことや
巡る季節の中で思うことを綴っていきます。

TBI-1301 臨床試験の経過 3

2017年03月22日 | 悪性黒色腫(メラノーマ)


14日からコートリルを処方されるようになって
夫の諸症状はかなり改善されました。
コートリルはプレドニンに比べて
治験の効果を妨げにくいとのことで
せっかく二ヶ月近く苦しみを味わって
プレドニンを止めていた苦労が台無しになることはないようです。

一時は話すことも、ベッドからトイレまで歩くことも、食べることもできなくなってしまった夫。
あまりの辛さに先生に
「どうかステロイドを処方してほしい。
それで治験が終了になっても寿命が短くなってもいい。
この辛さに耐えるのはもう限界だから。」
とメールを送った夫でした。

2月初旬に患者会で共に闘ってきた友を亡くし
夫は深い悲しみにくれると共に
「今度は自分の番かな・・・。」
と口にするようになりました。
小林麻央は「自分のなかのどこかの小枝が
ポキって折れるような気持ち」と書いていましたが
私も実は、彼女の死からまだまだ立ち直れていません。

この入院中は
夫にとっても私にとっても
そして息子や娘にとっても
死はすぐそこに来ているという思いがありました。

だから、今やっと元気を取り戻し
外出許可まで出て浜離宮まで散歩に出かけられたことが
夢のようです。

そして明後日は退院。
治験の効果は来週の金曜日までわかりませんが
とにかく家に帰れる!
今はそれだけで十分です。





TBI-1301臨床試験の経過 2 

2017年03月14日 | 悪性黒色腫(メラノーマ)


2月27日にTBI-1301の輸注を終えた夫ですが
その後はいろいろな副作用が出て辛い状況が続いています。
最初はサイトカイン放出症候群による発熱や悪寒、倦怠感、頭痛・・・
そして前処置に使った抗がん剤シクロホスファミドによる吐き気、嘔吐、下痢・・・
骨髄抑制による白血球の極端な減少から貧血
アルブミンの低下によるひどいむくみ
そして今日現在では下垂体炎の疑いも出ています。

28日早朝、酸素濃度が下がったことに始まって
次から次へと諸症状が出てきたことで
4人部屋からナースステーション前の個室に移動。

もし万が一急変したら・・・という心配は増すばかりで
遠い空の下で暮らす息子もいてもたってもいられなくなり、3日にアメリカから帰国。
その後、息子は毎日、娘はほぼ毎日病院に電車で1時間半かけて通い
つきっきりで夫と過ごしてくれていて
夫にとっては本当に心強い支えとなっています。

抗がん剤の副作用で食べ物を見るのも話をするのも嫌がり
食べられるのはりんごとシリアル、水やポカリスエット・・・。
家から食べられそうなものを持っていくのですが
ほとんど食べられません。
無理をして食べるとすぐに吐いてしまう、
そんな状態が2週間以上続いて相当なストレスになっています。

また浮腫もひどく、足は象のようにパンパンです。
何より耐えられないのはひどい頭痛で痛み止めも効かない時は効かず・・・。

白血球の減少により感染症にかかりやすいので
面会も家族以外はなく
病室から一歩も出られず・・。

筋力、体力、気力も萎えて
気持ちも落ちていくばかり。

治験を受けているので仕方がないとはいえ
あまりの採血やら検査の多さにも苛立ち
何よりのストレスは
プレドニンできっと改善できるだろう諸症状も
治験下では使えないことです。

しかし今日になって
下垂体炎が疑われるということでプレドニン(プレドニゾロン)ではなく
同じステロイドであるコートリル(ヒドロコルチゾン)を使えることになり
1日につき20mgまで内服できるようになりました。

これで少し諸症状が改善できればと
ちょっと期待しています。

こんな辛い状態の中でも
希望を捨てず
家族への優しさも忘れず
辛いだろうに弱音もあまり吐かず

病室で家族一緒に映画を見たり
息子と共通の好きな作家の話を楽しんだり
娘のマッサージを心待ちにしてたりと
家族との時間を楽しむ夫もちゃんといます。

あと1週間もすれば元気になってくれる
そして家に帰れる
そう信じています。







TBI-1301臨床試験の経過 1 

2017年03月11日 | 悪性黒色腫(メラノーマ)


2月21日
なんとかプレドニン離脱症状を乗り切り
夫は無事にがんセンターに入院を果たしました。
入院までの道のりがあまりに長かったので
果たして入院できるのだろうか
治験が受けられるのだろうかと
半信半疑でしたが、まずは第一関門はクリアしたのです。

体調はまずまずというところで
21日、22日はいくつもの検査を受けました。

そして24日、25日はいよいよ治験の前処置です。
シクロホスファミドという抗がん剤を点滴により2日続けて投与しました。
この前処置を行うことで体内でのリンパ球を減らし
TBI-1301の体内での効果を高める効果があるということです。

夫は2年前に肝動脈塞栓術を受けた際、
カテーテルを経由して肝動脈に抗がん剤と塞栓を行ったことはありますが
その時は抗がん剤の副作用らしきものはあまりなく
今回ひどい副作用に見舞われることになるとは先生も予想していなかったようです。

さて、シクラフォスファミドを2日続けて投与した後、
1日空けて2月27日にいよいよ本番です。
12月に採った夫の200mlの血液からリンパ球を分離し
TCR遺伝子を細胞に導入したTBI-1301という製剤を点滴で輸注するのです。

何と言っても治験、それも第1相なので効くという確約はありませんが
アメリカで行われている同種の治験はすでに第2相、第3相まで行っており
効く人には効くようです。

K先生初め、治験ドクターたちに見守られながら
50mlずつ2回に分けてTBI-1301は輸注されました。
静かな時間が流れ何事もなく終了し、皆がホッとしました。

部屋に戻った夫は無事に終わった安心感と
大きな処置を終えたことで、どっと疲れが出たようで
ほどなくして眠りに落ちました。
効くかどうかはわからないけれど
とにかく長い苦難のプレドニン離脱症状を乗り越えて
治験を受けられたことで
私もホッとしました。

この後、諸々の症状に苦しめられることになりますが
続きはまた明日書きます。