妄念の凡夫

日々是称名

ルパン最期の1週間

2016-08-13 21:29:48 | 日記

 

●7月31日(日)東京都知事選挙の日

 実家の帰省を終え、クルマで上京。夜9時ぐらいに、家人から携帯のメッセージあり。「ルパンの様子がおかしい。散歩中は息がかなり荒い。ケージに入りたがらないし、エサもかなり残した」とのこと。

 夜10時過ぎに帰宅してみると、調子が悪そう。かなり元気がない。後ろ足の衰えが顕著で、立ち上がるのもひと苦労の様子。翌日も休みなので、動物病院へ連れて行くことにする。

●8月1日(月)有休

 元気はないが、100mぐらいは散歩できた。排便、排尿は通常通り。食は少ないが、お土産の「母恵夢(ポエム)」は2個食べた。

 午後、動物病院へ連れて行く。血液検査をしたが、すべてイヌの正常値。フィラリアも検出されず。レントゲンで「肺のあたりに白い影が映っている。普通は映らない。街の病院ではわからないから大学病院を紹介することになるが、どうしますか?」とのこと。回答を保留して、皮下注射と点滴をしてもらい、連れて帰る。以上で2万7千円。

●8月2日(火)

 相変わらず元気はない。散歩は、近所の1ブロックを回って帰るのみ。竹輪をちぎって与えたら食べた。夜に、コンビニで買ってきたソフトフードを与えると、おいしそうに食べた。でも元気はない。寝てばっかり。

 ついに、ケージに入ることを拒否するので、出してやることにする。以前なら、檻の外に出そうものなら、リモコンなど部屋にあるものを咥えては食い散らかし、さんざん悪さをしたものだが、いまはそんな気力すらないようだ。床の上に顎を乗せ、体を丸めて寝るのみ。

●8月3日(水)

 一応、朝の散歩はこなした。しかし、ほんの10m歩いたあたりで我慢できずに小便。ご近所さんの玄関先だったので、ペットボトルの水で流す。

 このままでは栄養不足で体力が持たない。午前半休をとって、動物病院へ連れて行き、点滴を打ってもらうことにする。迎えは夜の8時くらい。点滴は1回6500円なり。排便はするが下痢気味。

 迎えに行くと、待ちかねたかのように飛び出ししてきた。二本足で立ち上がり、病院受付の窓際に置かれたぬいぐるみに噛みつこうとする、お得意の行動も示す。元気になったのか?

 しかし、家に帰ってクルマのドアを開けても、自力で飛び出そうとはしない。元気な頃はピョーンと飛び出されたら危ないので、それを抑えるのに苦労したほどなのだが。仕方なく、抱きかかえてクルマから出した。家に上げても元気なく、ただ横になって寝るだけ。

●8月4日(木)

 朝の散歩はほんの1ブロック。小便のみ。

 ひたすら寝ている。エサを全く食べようとしない。昼に家人が牛乳150ml、口を開けて流し込んだら飲んだという。

 Amazonの当日配送で、イヌの介護食と給餌用注射器を購入。仕事から帰宅して早速試してみる。口を無理矢理こじ開けて、側面から注射器を入れて水に溶いた流動食を流し込んだ。とりあえず、喉を動かして飲んでくれた。胃腸に流れ込んでいる音もしている。よかった。これで体力を回復してもらわないと……。この時点では、無理にでも栄養補給したら、体力が回復すると思っていた。

 ●8月5日(金)

 朝、散歩に連れて行くのを断念。流動食と牛乳を注射器で飲ませ、寝かせてから会社へ。

 夜、おしっこをさせるために無理矢理、散歩へ。玄関の段差を自力で上り下りできないので、抱え上げて降ろした。10mも行かないうちに路上で小便。帰ってからもってからも寝てばっかり。ふっと立ち上がって、しばらく立ち尽くし、なんとかポジションを変えて横たわるだけ。ずっと寝ている。

●8月6日(土)

 散歩に連れて行くのを断念。床にベターッと横になっているばかり。時折、目玉だけ動かしている。朝、流動食を口から入れてやるが、飲み込みたくないのか、かなりの量が口の脇からダラダラと出てきた。砂糖水なら大丈夫かもしれぬと思い、飲ませてやったが、同様の反応。あまり飲み込まなかった。

 夕方、玄関のほうへ向かって立ち上がったので、外へ出たいのかと思い、リードの鎖をかけたが、首がかなり重そうだった。玄関を出て数歩歩くだけで精一杯。地べたに伏せようとしたので、腰を持ち上げてやって連れて帰った。

 居間に連れ帰っても、横になって顎を床に突っ伏してしまった。2回ぐらい移動しただろうか。

 夜10時45分ごろ、私が毎週見ている韓国ドラマが終わるころ、ソファーの傍らで寝ていたルパンが目を覚まし、首を上げてキョロキョロし始めた。立ち上がろうとして、足が板の間で滑ってジタバタしてパニックになる。家人と一緒に持ち上げて敷物のあるところへ移動させたが、立ち上がれずにべたーっと横になった。

 数分後、ルパンの傍らで様子を見ていた家人が、「息が荒すぎる、様子がおかしい」との声。
近寄って覗いてみると、かなり息が激しくなっている。お腹のあたりの振動が小刻みすぎる。

「急患で動物病院連れて行こう」と家人が叫んだが、落ち着かせないと、クルマに乗せてやることも難しそうだ。「どうしよう」家人の悲痛な叫びが続いた。

「ワン!」近くで見ていた下のイヌ(ピース)も先輩犬の異変を察知したのか、ルパンに向かって吠えた。すると、ルパンが前足と後ろ足を大きく伸ばそうとした。

「急にどうしたん?」と家人。

「このまま動かしてやろう」と私。

 ルパンが体を伸ばしきった次の瞬間、

「アウッーッ……」と何かを嘔吐しようとしたが、口の中からは何も出てこない。変わりに舌がベローンと口からはみ出してきた。

「いかん、舌がひっくり返ってしまった……」

 そして……、フッフッフッっと数回、鼻で息を吐き出し、呼吸がピタッと止まった。

 心臓の鼓動も止まった。

 23時ちょうどぐらいだったと思う。ルパン絶命。目を開けたままだった。享年13歳。

 ふと、お尻をみると、脱糞していた。下痢ではない。流動食が糞となっていた。この脱糞のために最期の体力を使わせたのか……。拭き取ってきれいにしてやった。

 

●8月7日(日)

 ルパンの遺体をタオルにくるんで、府中市にある動物霊園、慈恵院にクルマの荷室に乗せて連れて行った。

 先代ゴンタのとき(2009年6月22日)は引き取りに来てもらったが、今回はなぜか持って行ってやりたくなった。

 ゴールデンレトリバーの火葬費用は、合同葬儀で3万9900円だった。行って初めてわかったのだが、慈恵院は禅寺だった。朝の座禅の案内ポスターも貼ってあった。

 

在りし日のルパン(2016年正月)