妄念の凡夫

日々是称名

『かぞくのくに』(監督 ヤン・ヨンヒ)

2013-03-24 02:26:20 | 映画
 DVDレンタル解禁になったので、早速借りてみた。
 予想していたより、静かな映画である。北朝鮮がテーマだから、なにかドロドロとした謀略が背景に渦巻いているのだろうと思っていたら、そうではない。静かな在日北鮮コミュニティの日常の中にある不条理を、淡々と描いている。
 静かな映画だが、出演者みんなの存在感がすごい。画面からにじみ出ている。それが、この映画のテーマを普遍的なものにまで昇華させている、と思われる。特別な人達の特別なことではないのだ。
 印象に残るセリフを引用。

「妹さんが大嫌いなあの国で、お兄さんも私も死ぬまで生きなければならないんです」
「あの国に理由なんて何の意味もない」
「考えずにただ従うだけだ、考えると頭おかしくなる」
「考えるとしたらどう生き抜くか、だけ」
「あとは思考停止。楽だぞ~!思考停止」


 何も北朝鮮だけの話ではない。いまの日本でも、いたるところにあるはずだ。

「真俗二諦」という言葉を思い出した。法に出遭えたのは、このお国(極端にいえば天皇陛下)のおかげ……、とありがたがっている人は結構いるのではないか。法に出遭える環境(ご縁)は大事だが、法に出遭ってもいないのに盲目的に権威や現状に追随するだけ、死ねば誰もが仏になって往生できる、ありがたいありがたい、それもこれも先祖のおかげ、お寺さんのおかげ、陛下のおかげ、お伊勢さんのおかげ……。それでは、あの国の人たちのことを憐れというもなかなか愚かなり、ではないのだろうか。

 おっと脱線。ともかく、いい映画でした。

↓ヤン・イクチュンはいい役者だねえ。韓ドラ『優しい男』にも出てました。
 インタビューはこちら
http://www.wowkorea.jp/section/focusread.asp?narticleid=100167


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ネズミに罪はあるか?

2013-03-21 02:02:03 | ニュース
 誰がこのネズミのことを笑えよう。


福島第一原子力発電所で使用済み燃料プールの冷却システムなどが止まったトラブルで、東京電力が調べた結果、仮設の配電盤の端子などに焦げ跡が見つかり、近くでネズミのような小動物が死んでいました。


http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130320/k10013336491000.html


弥陀五劫の願

2013-03-09 19:47:46 | 仏教
法然上人御法語のブログ」より勝手に現代語訳。

前篇 第6 五劫思惟 勅伝第32巻


酬因感果のことわりを、大慈大悲の御心のうちに思惟して、年序そらにつもりて、星霜、五劫におよべり。


 
 (法蔵菩薩は)「どうしたら仏になれるのか」という道理を、おおいなる慈しみ悲しみの御心で考え抜いているうちに、途方も無い年月が過ぎて五劫もの長きに及びました。

 
しかるに善巧方便をめぐらして、思惟し給えり。しかも、われ別願をもて浄土に居して、薄地低下の衆生を引導すべし。その衆生の業力によりてうまるるといわば、かたかるべし。



 しかし、衆生の機に応じて導くためにさまざまな方法を駆使し、お考えになられました。「しかも、私は別の願いをもって浄土にいて、無知で蒙昧な凡夫の衆生を導いて見せよう。その衆生の行いの力によりて浄土に生まれるといえば、それは難しいに違いない」




われ、すべからく衆生のために永劫の修行をおくり、僧祗の苦行をめぐらして、万行万善の果徳円満し、自覚覚他の覚行窮満して、その成就せんところの、万徳無漏の一切の功徳をもて、わが名号として、衆生にとなえしめん。





「私は、当然すべての衆生のためにとてつもない長い間の修行を送り、果てしない時間の苦行を続けて、あらゆる行い・あらゆる修行の結果、得られる徳が満ち満ちて、自ら悟り他を悟らせて全て満足している、その成就したあらゆる特が満ち満ちて煩悩を断絶した一切の功徳をもって、私の名号として、衆生に唱えさせよう(南無阿弥陀仏)」


衆生もしこれにおいて信をいたして称念せば、わが願にこたえて、うまるる事をうべし。



「衆生が、もしこの私の願いを信じて名号を唱えれば、私の願いの功徳の結果に報いて、浄土に生まれることができるのだ」


南無阿弥陀仏






二十億光年の孤独 

2013-03-08 01:27:10 | 日記・エッセイ・コラム
二十億光年の孤独   谷川俊太郎
 
 
人類は小さな球の上で
眠り起きそして働き
ときどき火星に仲間を欲しがったりする

 
火星人は小さな球の上で
何をしてるか 僕は知らない
(或いは ネリリし キルルし ハララしているか)
しかしときどき地球に仲間を欲しがったりする
それはまったくたしかなことだ

 
万有引力とは
ひき合う孤独の力である

 
宇宙はひずんでいる
それ故みんなはもとめ合う

 
宇宙はどんどん膨らんでゆく
それ故みんなは不安である

 
二十億光年の孤独に
僕は思わずくしゃみをした



 深夜にTVをつけたら、『ゴロウ・デラックス』(TBS系)に谷川さんんご本人が出演していた。谷川さんの詩を版番組パーソナリティの稲垣吾郎と小島慶子が朗読し、それぞれについてコメントしてもらうという趣向のようだった。
 「僕は僕は思わずくしゃみをした」ってなんですか? と小島慶子が聞いた。すると、谷川さん、
 「ぜんぜんわかんねえよ。わかんなくても書いちゃうんだよ、詩人っていうのは」
 稲垣吾郎が聞く。「ネリリし キルルし ハララ……っていうのは?」
 「その前に、〈眠り起きそして働き〉ってあるでしょ。それらを火星語に翻訳してるの」

 大変面白いやり取りだった。でも10代でこんな詩を書いちゃうとは! すごい人だと思った。