妄念の凡夫

日々是称名

なまけるな

2014-03-29 15:03:21 | 仏教
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なまけるな

イロハニホヘト

散(る)桜     一茶『七番日記』


 ヘンな句だが、涅槃経の釈尊の遺言を連想した。
「イロハニホヘト」は「色は匂えど」である。
 つまり、直訳すると「なまけるな。いま美しい桜も散ってゆくのである」ということだ。

では君たちに告げます。すべての現象は消え去るもの。不放逸を励みなさい

※涅槃経の一節の現代語訳は、
http://www.j-theravada.net/howa/howa202.html
から引用。


そらごと、たわごと、まことあることなし

2014-03-12 01:29:13 | 日記・エッセイ・コラム
 一昨日、ニュースで話題になったF名誉教授に、私もほんの少しばかり関わりがあって、急遽、対処に追われた(ほんとにほんの少しだが)。
 F名誉教授には8年近く前に一度しかお会いしたことがないが、ユーモアがあって人当たりもよく、理路整然と落ち着いたお話をされるよい先生だと思っていたのだが……。報道どおりだとすると酷い話だが、当局発表のリリースをなぞっただけのニュースほど怪しいものはないので、脇が甘かったのかなあ、引っかかってお気の毒だなあ、というのが正直な感想。
 でも世間からは、「エッあの先生、そんな悪人だったの!」という反応で、生協ルートからは、その先生の著作に対して回収要請があったとのこと。じゃあ、平積み単行本をシリーズ化して出していたところはさぞかし大変だろう。
 いまほどエビデンス(証拠)が五月蠅くいわれる時代はないだろう。でも、その証拠を誰もが理解できるのか? いやあテレビで言ってたから……というのがいいところだろう。しかし、佐村河内なにがしの一件でも明らかなように、裏取りの重要性が身に滲みているはずのテレビでもまんまと騙されるのだ。
 一晩明けて、今度は割烹着リケ女のSTAP細胞論文に対する疑惑報道が喧しい。共同研究者の先生の口から「もう信じられない」という言葉が出てくるのには驚いた。共同研究って発表の前にみんなで擦り合わせしないの? プロジェクトを進めているうちに発覚するでしょ、ズルがあれば。何人もの共同研究者ですら騙されたってこと?……私のような野次馬は、好奇心だけであれこれツッコみたくなるけど、私のような外野はお呼びでないのだ。何から何までわかってないんだから。


煩悩具足の凡夫、よろずのことみなもてそらごと、たわごと、まことあることなし。

ただ念仏のみぞ、まことにておわします。



『徳川幕府はなぜ朝鮮王朝と蜜月を築けたのか』(康熙奉・実業之日本社)

2014-03-09 01:02:57 | 本と雑誌
 著者は、東京生まれの在日韓国人二世。韓国ドラマを入口にした朝鮮王朝の解説本をいくつも出していて、私も2つぐらい読んだことがある。
 この人の本は非常に読みやすい。すぐ読み終わる。日本人と韓国人の両方のメンタリティがよくわかっているので、日本人ならこういうことが読みたいんだろうなあ、という観点から書いているからだと思う。
 立場的にも非常にフラットな人だと思う。好感が持てる。
 でも、この本は売れないだろうなあ。朝鮮通信使なんて、江戸時代の日本史で1行チョロッと出てくるくらいだもん。もともと建築科の大学を出てから、大学院で日本史を専攻したという。そのときのテーマが、本書のタイトルにもあるように、江戸時代の朝鮮通信使だったそうだ。いや~、流石にこのテーマじゃ、韓流イルボンアジュマは読まないよ。その辺には関心オプソヨだもん。
 そう思いながら、書店の棚から抜き出してレジへ持って行った。
 著者の咀嚼力が素晴らしいので、地味なテーマでもスイスイ読み進めることができた。ただ、端折りすぎの感がないでもない。岩波新書みたいにもっと書き込んでほしかったなあ、という気はする。
 江戸時代268年間、日本と朝鮮は空前の善隣関係にあった(直前に、秀吉の文禄・慶長の役があったにもかかわず)。著者は、それを蜜月と讃えているが、それはどうだろう。家康の関心事が「徳川家支配存続」しかなかったからじゃないのかなあ。あと、家光が完成させた強力な鎖国体制によるものだろう。通信使つったって、来た人たちは一握りの両班でしかなかったろうし、民間の交易は対馬と釜山の倭館との行き来でしかなかったから、庶民レベルでは交流なんかなかったはず。
 かえって、それが災いして、国学の隆盛とともに神功皇后の三韓征伐の話が民間に流布し、吉田松陰のような「朝鮮なぞは切り取って当然」という超危険思想者を産み、その弟子である山県有朋を筆頭にした長州出身者による朝鮮王朝簒奪につながっていったんじゃないだろうか。
 ともあれ、こんにち急速に悪化した日韓関係について、頭を冷やして考えるには、あの江戸時代の交流が示唆することは蓋し参考になるはずだろう。著者の思いもそこにあるのではないか。
 日本と韓国とでは風習も考え方も違っていて当然なのだから、それをわかったうえで互いに欺かず争わず、誠心(真実の心)で交流すべきである??本書で紹介されている対馬藩の通詞であった雨森芳酬の考え方は、現代でも模範とすべきことだと思われる。

↓良質な本だから増刷かかってほしいけどなあ。むずかしだろうなあ……

徳川幕府はなぜ朝鮮王朝と蜜月を築けたのか徳川幕府はなぜ朝鮮王朝と蜜月を築けたのか
価格:¥ 1,050(税込)
発売日:2014-01-10