韓国における浄土真宗の布教(1995年3月)
http://ci.nii.ac.jp/naid/110000471844
韓国宗教文化研究所所長・嶺南大学校名誉教授
李 鍾厚
九州龍谷短期大学仏教科講師(元・韓国大邱大学校講師)
藤 能成
contents
第一章 浄土真宗の開祖・親鸞の生涯
第二章 親鸞の教学
第三章 韓国における浄土真宗の布教
第一節 浄土真宗布教の歴史
第二節 現代韓国における浄土真宗の布教
韓国においては、現在も反日感情はおさまっていない。時あるごとに火に油を注ぐごとくに再燃している。
これは、いまの新聞の論調ではない。17年前の浄土真宗の論文に書かれてある一文だ。その状況には、戦前の韓国での浄土真宗布教も深くかかわっている。
その具体的な内容は、論文を一読してもらいたいが、この論文は価値自由(ヴェルトフライハイト)的立場の比較宗教学の単なる調査報告ではないし、いわゆる平和主義からの旧日本軍国主義批判でもない。
親鸞聖人のいいたかったこと、つまり浄土真宗(大無量寿経)の立場からみた真摯な反省と今後への直言なのである。
併合下でも韓国に進出した日本仏教での最大セクトは浄土真宗であり、1943年には43の寺院、247の布教所、19万の信徒数(うち韓国人は1万1千)を数えるまでになっていた。
しかし、日本の敗戦を境に、韓国からすべての浄土真宗寺院は撤退した。その後、韓国内で再建の動きもなかった。結局、韓国の人々に浄土真宗の教えは伝わらなかったのである。
胸に突き刺さるような言葉が多い。ざっと拾ってみる。
支配する側に立って,支配され搾取を受けている人々に法を説いたところで、果たして彼らの心にその声が届くだろうか。
戦前の韓国で布教に従事した人々は、韓国の民衆の痛みを自分のものとしてとらえなかったし、それに応えようとはしなかった。
決して真の信心をいただいたものではなかっただろう。
浄土真宗教団はもうひとつ大きなとがを犯した。それは韓国の人々から真実の教えを遠ざけたことである。
韓国における浄土真宗の布教の問題は、実は日本の真宗教団自身の問題なのである。
教団の問題ととらえては所詮人ごと、念仏者(私)一人の問題であるといえるだろう。
藤能成先生は、現在、京都の龍谷大学で講座を持っておられるようだ。
http://www.ryukoku.ac.jp/who/detail/823406/
日韓の問題をニュートラルにフェアに語れる数少ない人の1人だと思われる。