『ヘンタイ・プリズン』 Qruppo
2022年1月発売。
2021年11月発売予定から一度延期、その際の細やかな対応も話題になりました。
もちろん予約購入していたけれども、
2022年は同人ゲーム『DemonsRoots』に魂を乗っ取られていたので
今年になってようやくクリア。
・シナリオ 85~95点
『ぬきたし』『ぬきたし2』で高評価を得たQruppoが作る完全新作、
ということで大きく期待されていた今作ですが…「さすが」としか言えない仕上がりです。
またしても特殊な舞台立てを用意してあるので、そこはもう公式HPを参照。
登場人物がほぼ「性犯罪者」か「看守」のいずれかである、ってどんなエロゲ。
個性が爆発したキャラしか歩いていないレベルですが、特に異彩を放つのは主人公の柊一郎です。
柊一郎は「公道で全裸になった」罪で逮捕された露出狂であり、自身の露出に誇りを持っている。
ASD気味でやや無感情ながら他人を思いやる心も持っており、
機会があればきちんと友達もできる。
彼が現実にいる「露出狂」と一線を画するのは、
「女性に男性器を見せて嫌がらせをしたい、その悲鳴によって昂奮する」タイプではないこと。
そのため、逮捕のきっかけとなった露出事件の被害者女性に
「傷つけてしまったのだろうか」と思いを馳せることもしています。
逆に言うと、それくらいに常識がなく、プリズン内でも飛びぬけて世間知らず。
ざっくり断じてしまえば「高IQのネグレクト児」。
更に特筆すべき点として「アマツくん」の存在があります。
アマツくんは柊一郎にのみその声が聞こえる、柊一郎の男性器に宿ったキャラクター。
……イマジナリーフレンドってことでいいですか?という理解で最初は読んでいましたが、
実はそうではないということがグランド√で明らかになります。
ある意味、主人公の次に重要なキャラクターではないでしょうか。
股間に人格があるってなんだよwと一読するとネタ要素のように思えるものの、
シナリオ序盤、仲間が誰もいない頃、
個人房で交わされるアマツくんとの会話はまさに救いです。
イマジナリーフレンドではない分、アマツくんは柊一郎より精神年齢が高く、
穏やかで理性的な、ユーモアも持ち合わせた「お兄さん」のような友人。
投獄前から孤独だった柊一郎の境遇を考えると、そりゃ大事な存在であろうと納得。
ぬきたしの主人公・淳之介は力強くチームを率いて「周囲を救う」男でしたが、
ヘンプリの柊一郎はどちらかというと「周囲に助けられ」自分が人間として生まれ直す、
という方向性。
柊一郎の幼さは逐一強調されており、ヒロインは全員年上、
グランド√アフターでようやく変声期を迎える描写まであります。
「なぜ露出をしていたのか」
「なぜもう露出はしなくていいと思うのか」
「アマツくんとはどういう結末を迎えるのか」
このあたりがグランド√でしっかりと描かれます。
大人との関りが非情に重要である、というのもぬきたしと異なる点。
(青藍島の大人、子や孫に乱交を強要する人ばっかりだったし…)
母代わり、父代わり、姉代わりのような人物とのやり取りも丁寧。
ぬきたしで荒かった点がきちんと改善され精度が上がっており、
1本の完成度で言えばヘンプリの方が上であるといえるでしょう。
あとは好みの問題かと…。
私はぬきたしの方が、そして淳之介の方が好きでした。
柊一郎は幼い分、敵対した相手を叩きすぎるんだよね…。
淳之介なら救えたんじゃないかと思えたシーンもあったり。
攻略ヒロイン三人の個別√を終えるとグランド√が出現するわけですが、
個別3√ごとに主人公の成長度合いが大きく異なっているのが若干気になるところ。
多くの感想サイトで 千咲都>妙花>ノア の順で攻略することを推奨してるのは
つまり主人公の成長度がこの逆、ノア>妙花>千咲都 だからですね。
千咲都が攻略ヒロインの中では一番好きなので、
シナリオが一番いまいちだったのはシンプルに残念。
千咲都がわざわざ「正しい選択 VS 登場人物の望む選択」について語っているあたり、
正しくないってわかってるけどこういう√もまああっていいでしょ、ということでしょうか。
実際、グランド√ではハッキリ否定されてしまっている選択肢ではありますね。
あと、千咲都固有の「周囲の人間全員に嫌われるが、柊一郎には一切効かない」例の設定が
やっぱり無理あるなあと。
自分がやった√順ではありますが、個人的には 妙花>千咲都>ノア を推します。
鉄火場で流れるBGMが素晴らしいので、千咲都√で初めて聴いちゃうのはちょっともったいない。
ノア√が一番好きです。
同時攻略みたいな扱いであるソフりんが素晴らしいキャラでね…。
彼女とHするにはどういう口実を設けるんだろう、とノア√アフターを覗いたところ
こちらの予想斜め3000メートル上空に口実が出現しました。
まあQruppoだから。
気が付いたら恐ろしい長文になっていたのであと一つだけ。
『ショーシャンクの空に』のパクリ過ぎる、という問題?について。
わざわざ「監獄映画によるとポスターの裏に抜け穴が…」などの言及をしているあたり、
”ショーシャンクじゃん”と言われるとわかっていて書いている。
Qruppo新作が出ると聞いて
「ぬきたしみたいな強烈な名作のあとに、どんなん作るの? 作れるの?」と
ユーザーが抱いた不安と期待、これに対するアンサーでもあるのかなと感じました。
【既存作品の影響をまったく受けないなんて無理だよ!!】
【影響を受けたうえで、うちはうちなりのものを作っていきますよ】
と仰られているように、勝手に受け取りました。
・グラフィック 70~80点
ぬきたしよりガクッと彩度を下げてきました。売れセンに合わせるつもり一切なし。
画力はかなり向上したように思いますが、やはりおっぱい描くの苦手なんだなあと…。
前作時点でも丁寧な彩色とは感じていたものの、
ここもクオリティアップ+個性付与されて文句なし。
驚くべきは背景CGの多さ、細かさ。
これらが大きく作用することで、特殊な世界観にユーザーを引き込んでくれます。
背景がいい作品は名作。大体そう。
・音声 80~90点
全員うまいやん…。
ぬきたしは不慣れさを感じるキャラもいた(でもそれも味かな、と思える)のに
どしたん?話きこか?ってなるクオリティ。
前述の通り、今作は「重要な役割を占める大人キャラ」が多いため、
そのへんにはきっちりベテラン声優を用意できたってのもすごい。しほんのチカラ。
釘谷サン、一言二言喋っただけで「こいつ…重要キャラだぞ…!」って確信して慄然とする。
だって明らかにお値段が張りそうな声なんだもん。
(特別この方のファンなわけではないんですが、それくらい存在感がある声質)
夕顔葉月もうまいんだよなあ。
今のところ表名義は明らかになっていませんが、これが二作目なわけないやろ…。
BGMも主題歌ももちろん素晴らしい。
どうせ欲しくなるだろうから、プレイ前にサントラ買ってありましたよ。大正解。
グランドED曲のタイトルが『I can't be a superstar』というのもいいですね。
やはりヘンプリは「英雄の物語ではない」んだと思います。
・システム 85~95点
すっげーーー動くんですけどこのノベルゲーム…。
特別でもなんでもない日常会話のシーンでも何かしらが動いてるよ…。
いや…しつこくなるけど本当にどこからどこまで手抜きせず作ったんだ…。
ここまでやらんでいいよこんな不景気な時代のエロゲに! って思うくらい丁寧な仕事。
ぬきたしでもごく一部にあった演出?ですが、
ウィンドウに表示されず、裏で交わされている会話が多々あります。
主人公がAと喋ってると、同時に小声でBとCが喋ってるとか。
バックログで表示できるので、これ見てると本当にどんどん時間を吸われる。
充分面白い会話を裏でやってるのに、ウィンドウに出さないとか…
蛇口のしまってない水道のようにジャブジャブ垂れ流すなギャグを…
そこをもったいないとか思うマインドなどない、それがQruppo。
普通のシステムも非常に快適。
特に、「ボイス登録」で気に入った台詞を別途セーブできる機能も助かります。
おおむね千咲都とソフりんで埋まる。
総評
そりゃ高評価されるよこんなん…
ぬきたしで終わらないのか。まだ出せるのかこんなのを…
「Qruppoが作り続けるうちはまだエロゲオタク続ける」と表明している人も多いわけで。
Qruppoは毎度のことながら主義主張が実は激しい「社会派エロゲ」の使い手ですが、
主張が自分のポリシーと完全には嚙み合わなかったとしても、
ギャグ・キャラ・エンタメで充分元が取れちゃうのがあまりにも強いところ。
「主張が自分と違うからこの作品は駄作」な方でなければ美味しくいただけるはず。
「フルプライスで買って悔いなし」以上の出来ですので、あとは好みの問題かと。
次も予約して買うよ!
2022年1月発売。
2021年11月発売予定から一度延期、その際の細やかな対応も話題になりました。
もちろん予約購入していたけれども、
2022年は同人ゲーム『DemonsRoots』に魂を乗っ取られていたので
今年になってようやくクリア。
・シナリオ 85~95点
『ぬきたし』『ぬきたし2』で高評価を得たQruppoが作る完全新作、
ということで大きく期待されていた今作ですが…「さすが」としか言えない仕上がりです。
またしても特殊な舞台立てを用意してあるので、そこはもう公式HPを参照。
登場人物がほぼ「性犯罪者」か「看守」のいずれかである、ってどんなエロゲ。
個性が爆発したキャラしか歩いていないレベルですが、特に異彩を放つのは主人公の柊一郎です。
柊一郎は「公道で全裸になった」罪で逮捕された露出狂であり、自身の露出に誇りを持っている。
ASD気味でやや無感情ながら他人を思いやる心も持っており、
機会があればきちんと友達もできる。
彼が現実にいる「露出狂」と一線を画するのは、
「女性に男性器を見せて嫌がらせをしたい、その悲鳴によって昂奮する」タイプではないこと。
そのため、逮捕のきっかけとなった露出事件の被害者女性に
「傷つけてしまったのだろうか」と思いを馳せることもしています。
逆に言うと、それくらいに常識がなく、プリズン内でも飛びぬけて世間知らず。
ざっくり断じてしまえば「高IQのネグレクト児」。
更に特筆すべき点として「アマツくん」の存在があります。
アマツくんは柊一郎にのみその声が聞こえる、柊一郎の男性器に宿ったキャラクター。
……イマジナリーフレンドってことでいいですか?という理解で最初は読んでいましたが、
実はそうではないということがグランド√で明らかになります。
ある意味、主人公の次に重要なキャラクターではないでしょうか。
股間に人格があるってなんだよwと一読するとネタ要素のように思えるものの、
シナリオ序盤、仲間が誰もいない頃、
個人房で交わされるアマツくんとの会話はまさに救いです。
イマジナリーフレンドではない分、アマツくんは柊一郎より精神年齢が高く、
穏やかで理性的な、ユーモアも持ち合わせた「お兄さん」のような友人。
投獄前から孤独だった柊一郎の境遇を考えると、そりゃ大事な存在であろうと納得。
ぬきたしの主人公・淳之介は力強くチームを率いて「周囲を救う」男でしたが、
ヘンプリの柊一郎はどちらかというと「周囲に助けられ」自分が人間として生まれ直す、
という方向性。
柊一郎の幼さは逐一強調されており、ヒロインは全員年上、
グランド√アフターでようやく変声期を迎える描写まであります。
「なぜ露出をしていたのか」
「なぜもう露出はしなくていいと思うのか」
「アマツくんとはどういう結末を迎えるのか」
このあたりがグランド√でしっかりと描かれます。
大人との関りが非情に重要である、というのもぬきたしと異なる点。
(青藍島の大人、子や孫に乱交を強要する人ばっかりだったし…)
母代わり、父代わり、姉代わりのような人物とのやり取りも丁寧。
ぬきたしで荒かった点がきちんと改善され精度が上がっており、
1本の完成度で言えばヘンプリの方が上であるといえるでしょう。
あとは好みの問題かと…。
私はぬきたしの方が、そして淳之介の方が好きでした。
柊一郎は幼い分、敵対した相手を叩きすぎるんだよね…。
淳之介なら救えたんじゃないかと思えたシーンもあったり。
攻略ヒロイン三人の個別√を終えるとグランド√が出現するわけですが、
個別3√ごとに主人公の成長度合いが大きく異なっているのが若干気になるところ。
多くの感想サイトで 千咲都>妙花>ノア の順で攻略することを推奨してるのは
つまり主人公の成長度がこの逆、ノア>妙花>千咲都 だからですね。
千咲都が攻略ヒロインの中では一番好きなので、
シナリオが一番いまいちだったのはシンプルに残念。
千咲都がわざわざ「正しい選択 VS 登場人物の望む選択」について語っているあたり、
正しくないってわかってるけどこういう√もまああっていいでしょ、ということでしょうか。
実際、グランド√ではハッキリ否定されてしまっている選択肢ではありますね。
あと、千咲都固有の「周囲の人間全員に嫌われるが、柊一郎には一切効かない」例の設定が
やっぱり無理あるなあと。
自分がやった√順ではありますが、個人的には 妙花>千咲都>ノア を推します。
鉄火場で流れるBGMが素晴らしいので、千咲都√で初めて聴いちゃうのはちょっともったいない。
ノア√が一番好きです。
同時攻略みたいな扱いであるソフりんが素晴らしいキャラでね…。
彼女とHするにはどういう口実を設けるんだろう、とノア√アフターを覗いたところ
こちらの予想斜め3000メートル上空に口実が出現しました。
まあQruppoだから。
気が付いたら恐ろしい長文になっていたのであと一つだけ。
『ショーシャンクの空に』のパクリ過ぎる、という問題?について。
わざわざ「監獄映画によるとポスターの裏に抜け穴が…」などの言及をしているあたり、
”ショーシャンクじゃん”と言われるとわかっていて書いている。
Qruppo新作が出ると聞いて
「ぬきたしみたいな強烈な名作のあとに、どんなん作るの? 作れるの?」と
ユーザーが抱いた不安と期待、これに対するアンサーでもあるのかなと感じました。
【既存作品の影響をまったく受けないなんて無理だよ!!】
【影響を受けたうえで、うちはうちなりのものを作っていきますよ】
と仰られているように、勝手に受け取りました。
・グラフィック 70~80点
ぬきたしよりガクッと彩度を下げてきました。売れセンに合わせるつもり一切なし。
画力はかなり向上したように思いますが、やはりおっぱい描くの苦手なんだなあと…。
前作時点でも丁寧な彩色とは感じていたものの、
ここもクオリティアップ+個性付与されて文句なし。
驚くべきは背景CGの多さ、細かさ。
これらが大きく作用することで、特殊な世界観にユーザーを引き込んでくれます。
背景がいい作品は名作。大体そう。
・音声 80~90点
全員うまいやん…。
ぬきたしは不慣れさを感じるキャラもいた(でもそれも味かな、と思える)のに
どしたん?話きこか?ってなるクオリティ。
前述の通り、今作は「重要な役割を占める大人キャラ」が多いため、
そのへんにはきっちりベテラン声優を用意できたってのもすごい。しほんのチカラ。
釘谷サン、一言二言喋っただけで「こいつ…重要キャラだぞ…!」って確信して慄然とする。
だって明らかにお値段が張りそうな声なんだもん。
(特別この方のファンなわけではないんですが、それくらい存在感がある声質)
夕顔葉月もうまいんだよなあ。
今のところ表名義は明らかになっていませんが、これが二作目なわけないやろ…。
BGMも主題歌ももちろん素晴らしい。
どうせ欲しくなるだろうから、プレイ前にサントラ買ってありましたよ。大正解。
グランドED曲のタイトルが『I can't be a superstar』というのもいいですね。
やはりヘンプリは「英雄の物語ではない」んだと思います。
・システム 85~95点
すっげーーー動くんですけどこのノベルゲーム…。
特別でもなんでもない日常会話のシーンでも何かしらが動いてるよ…。
いや…しつこくなるけど本当にどこからどこまで手抜きせず作ったんだ…。
ここまでやらんでいいよこんな不景気な時代のエロゲに! って思うくらい丁寧な仕事。
ぬきたしでもごく一部にあった演出?ですが、
ウィンドウに表示されず、裏で交わされている会話が多々あります。
主人公がAと喋ってると、同時に小声でBとCが喋ってるとか。
バックログで表示できるので、これ見てると本当にどんどん時間を吸われる。
充分面白い会話を裏でやってるのに、ウィンドウに出さないとか…
蛇口のしまってない水道のようにジャブジャブ垂れ流すなギャグを…
そこをもったいないとか思うマインドなどない、それがQruppo。
普通のシステムも非常に快適。
特に、「ボイス登録」で気に入った台詞を別途セーブできる機能も助かります。
おおむね千咲都とソフりんで埋まる。
総評
そりゃ高評価されるよこんなん…
ぬきたしで終わらないのか。まだ出せるのかこんなのを…
「Qruppoが作り続けるうちはまだエロゲオタク続ける」と表明している人も多いわけで。
Qruppoは毎度のことながら主義主張が実は激しい「社会派エロゲ」の使い手ですが、
主張が自分のポリシーと完全には嚙み合わなかったとしても、
ギャグ・キャラ・エンタメで充分元が取れちゃうのがあまりにも強いところ。
「主張が自分と違うからこの作品は駄作」な方でなければ美味しくいただけるはず。
「フルプライスで買って悔いなし」以上の出来ですので、あとは好みの問題かと。
次も予約して買うよ!
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