『銀色』 感想

『銀色』　ねこねこソフト
オリジナルは2000年、完全版は2001年発売。
『みずいろ』『ラムネ』で有名なねこねこソフトの出世作です。
一時期はAndroidでプレイできたようですが、エンジンアプリが停止したようで、
現在はXP以前のPCでやる他ないんじゃないかと。


・シナリオ　７０～８０点
「どんな願いも叶えてくれる」という銀糸に纏わる、時代をまたいだ短編集。
この銀糸というのが血生臭い代物で、「猿の手」のごとく悪意をもって願いを叶える仕様。
最終章の現代編のみハッピーエンド、他は全て悲劇と呼んでいいのではないでしょうか。

というわけで、完全版のおまけ等を除けばギャグはゼロ。全編シリアスを貫きます。
そして時代が時代のため、とにかくあちこちで平民が死に放題。
これがつらい。
ファンタジーなバトル物でかっこよく死ぬ！とかでなく、
伝染病に罹った家族を生き埋めにする、同じ廓の娼婦仲間が鉄格子に縄をかけて首を吊る、
などの展開が目白押し。
18年前のエロゲオタ達、よくぞこの作品をコンプしてきちんと高評価したもんだと思います。
萌え萌えキュンなシーンが全くないですよ。真面目か。

人気が高いのは第一章と第二章だそうですが、これは納得。
エロゲでヒロインとのHがないなんて、と普通は思うところですが、
第一章の二人はプラトニックで終わっているのがいい。

逆に、第三章の三角関係にはげんなりしました。
他の章が全て一対の男女だし、ここも二人組のラブストーリーで良かったような。


・グラフィック　６０～７０点
2001年の作品ということを考えると、かなり優秀。
狭霧の立ち絵とか、あやめ（現代編）のHシーンとかツッコミたい絵もありますが、
これとかこれとか今見ても綺麗だと思います。

枚数も特に不満はありません。

言うとすれば、どうしてもヒロインの髪型が見通ってしまっているので、
全員を茶髪にせず、黒髪のヒロインを二人くらい混ぜてくれたら嬉しかったかも。
まあ…うん…性癖の問題でもあるけども…。


・音声　６０～７０点
うーん…この時代のエロゲ声優さんだなあ、という感じ。少しぎこちないです。
でも、第一章の名無しヒロインの喋り方はこのままが好み。

主題歌もBGMも美しく、曲数が多くて素晴らしい。
山場山場で主題歌が流れるので記憶に残ります。
サントラ買っちゃった！


・システム　３０～４０点
さすがにここは2001年製。率直に言って使いづらいです。

ノベルゲームをプレイする際に重要な「スキップ」「バックログで音声再生」などができない。
バックログもウィンドウ内表示で、10クリック前くらいしか遡れません。

とはいえ、これは仕方ないかと。
何度も頻繁にリプレイしないのであれば、特に不便は感じません。


・総評
正統派の美しき鬱ゲー。
露悪的なグロやらレイプやらの描写を盛り込んだ鬱ではなく、
時代背景として必要な鬱シーンが描かれている短編集、とお考え下さい。

やっててスカッとするわけでもなく、萌えキャラが多数登場するわけでもなく、
エロいわけでもない（Hシーンはありますがさっぱりエロくない）。
この名作を、しっかり「名作」として評価した当時のエロゲユーザーはすごい。

現在はDMMなどでDL購入できますが、
該当サイトで販売されている（エルフとかの）レトロ作品と違い、
XP以前のPCでないと起動しないので、購入の際はご注意ください。

『おまえのなつやすみ』 感想

『おまえのなつやすみ』　FlyingShine黒
↑FlyingShine黒のHPが消失しているため、Wikiのページをリンクしてみました。
現在1ｋでDL購入できますよ。
『さよならを教えて』『ピエタ』でお馴染み、
長岡建蔵氏・さっぽろももこ氏・石埜三千穂氏のチームによる作品。
でもバカゲー。完全なるバカゲーです。
『はっちゃけあやよさん2』が長岡氏の処女作ということを知っているファンからすれば
「あのチョーケンが帰ってきた！」なんですが、
今となってはさよ教のイメージが強いですからね…。
ちょうどｇｄｇｄの夏休みを送っているとこなんで、今更ながらプレイしてみました。


・シナリオ　４０～５０点
ぶっ飛んだ両親、主人公のあつし、義妹のころな。
四人家族のうち両親だけがハワイ旅行に行ってしまい、あつしところなが家に取り残される。
兄妹ともに自分達も行けると思い込んでおり、自慢しまくってしまったため、
「今更ハワイに行ってないとか他人に知られたくない！」と異様な流れで引き籠り生活がスタート。
それどころか「ここはハワイ！　ハワイなら〇〇すべき！」的なテンションで
バカエロが怒涛の如く始まります。
そこへ仲のいい従姉、ほむらが訪ねてきて…。というのがあらすじ。

もう…シナリオっつうか何つうか、発想と情熱がすごい。
日本の住宅街の、一軒家の中で、学生達が夏休みを過ごしているだけなのに、この狂気。
後半はさすがにグダグダしてきますが…。

そのグダグダも合わせて楽しめたのですが、あえていうなら、
もう少し主人公が優しい奴だと良かったかも。
毎食妹が用意してくれるし、ヒロイン二人とエロやり放題だし、
なんだかんだで美味しい思いをしっぱなしなので、
ある程度お人好しな部分があった方が気持ちよくプレイできたと思います。
「日焼けが苦手で肌に合わない、と嫌がる従姉を縛り付けて無理矢理日焼けさせる」とか、
エロも萌えも感じられないんだ…。普通にかわいそうやんけ…。


・グラフィック　４０～５０点
これが主人公のあつしです。
デビルマンじゃねーか！　…というツッコミは視認した全員が済ませたはずです。
こんなパクリデザインを使うなんて、エロゲってそのへんだらしないよ！　とお怒りの真面目な方、
ご安心ください。永井豪御大が許可済みです。
というか、「どうせなら俺が原画やる」と仰ったそうです。そんな恐ろしいことやめて下さい。
色々な意味で危険な原画家交代案はキャンセルされ、長岡氏が担当。

良くも悪くもチョーケンテイストの作画です。
熟練の味は感じるものの、ものすごく画力が高い！というわけではない。
個人的にはとても好きなので、これからも描いてほしいのですが。


・音声　５０～６０点
OP曲が1曲、BGMが5曲。絞ったなーとは思いますが、特に不都合はなし。
OPの『恋のライフセイバー』がバカっぽくて可愛くてお気に入り。さすがさっぽろ先生。

ヒロイン二人の演技にはまったく文句ないのですが、
（というか低価格ゲーなのにしっかりエロい演技で良かった）
暑苦しい主人公のあつしも喋ってほしかった。叫んでほしかった。
もうどうせだから長岡氏が演じればよかったのに。


・システム　２０～３０点
スキップ機能がヘタレです。
スキップが使いにくいとどうしても「やりづらいゲーム」という印象が残ってしまうんだなあ…。
画面上部をクリックしないとスキップしないし、選択肢の度に毎回止まる。

夜に百物語をやるんですが、これを一定数以上こなさないと「百物語エンド」にいけない。
ということは、未読の百物語を聴くために何度かルートを繰り返す必要があるわけで…。
ここでスキップに苛ついてしまうのです。
気軽に繰り返しやるのは難しい…。

おまけモードが充実しているのは嬉しいです。


総評
夏向きのバカゲー。
1ｋ～2ｋならアリかなと。
「Hな貧乳のおねえさん」ほむらさんはなかなかのキャラですよ。
たまにはわけのわかんないものを見てみたいなーという方、
汗だくのヒロインと全裸引き籠り生活、という謎のシチュにどっぷり浸かってみましょう。