母はふるさとの風

今は忘れられた美しい日本の言葉の響き、リズミカルな抒情詩は味わえば結構楽しい。 
ここはささやかな、ポエムの部屋です。

十月の牛

2016年10月30日 | Weblog
みるく色に溶ける夕暮れの
原の片隅で草食む牛

十月末の大気はひんやり
空の色は乳色に茜

ひとりぽっちの牛はしずかに
暮れる原で立ったまま草を味わう

暮れゆく空には黄金の一条
優しい目をした牛よ
牛よ 牛よ 大きな体で
大地を踏みしめゆうゆう歩く牛よ

長いまつげをそらし
私をじっと見ていたあの日の
おまえのにおいのする秋が来た

繁二郎の愛した牛
光太郎の愛した牛

広い原をゆったりと歩き
どこまでいったのか 私の牛よ



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