母はふるさとの風

今は忘れられた美しい日本の言葉の響き、リズミカルな抒情詩は味わえば結構楽しい。 
ここはささやかな、ポエムの部屋です。

秋の愁いは

2019年10月19日 | 
紫苑が咲けば
母を思い
菊が匂うと父を思う
大地に優しさと安らぎ
いのちの実りが戻る季節
どこかで家を失った人々
どこかで家族を失った人たちが
おなじの空の下で泣いている

愛の輪に囲まれ幸せに
日を過ごしていた自然な暮らしが
ある日突然壊され
別世界の中に放り出され
それでも生きてゆかねばならない
誰もいなくなった家のその跡地で
切なさをこらえ
生きてゆかねばならない

人は喜び悲しみ
当たり前に自然に日々を過ごし
知らぬ間に老いて消えてゆく
その間際のときにだけ
人間の何が
神の怒りに触れたのか 
ふと思い天を仰ぐ

真上に輝く太陽は
やがて傾く
夜を与え
又朝陽をくれる

私たちは過ちを犯しながら
顧みることなく
生が続くと信じ必ず独りで消えてゆく

天上の父母たちは地上の花の精になり
永遠の謎を黙って見護っている 



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秋のオリオン

2019年10月13日 | 
大嵐の去った夜の
夜更けの空は青い
青い空に白い雲が幾つかのんびり浮かび
昼のように明るい空に金色の月が傾いた

東の空には冬の夜を飾るオリオンが
真四角に
きりりと現れて
夜もあかりにまぶされる都市の
空の下で見つめている人間に
静かに挨拶をくれたようだった

星は遠い向こう
はるかな宇宙の果てから
傷ついた星に友情の光を届け
人人の寝静まった
青い夜空で瞬き
何をか語りかけていたのだろうか

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赤とんぼ

2019年09月11日 | 季節
かすれた夏が

村の外れ 分か去れの古い石の上に

腰掛けて遠い雲と空を眺めていた

濃い青い空に

夏の面影はあっても

季節は今年も少しずつ

少しずつ動いて行った


道の端 山桑の木の枝の枯れたてっぺんに

アキアカネが止まり

大きな目を動かして風を見ていた

人も道も時の中に変化してゆくけれど

野の草花と赤とんぼは

人の目には移ろう秋への季節を

のんびりと跳び揺れて舞うのでした
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鮎はメロンの香りがして

2019年08月14日 | 
鮎はメロンの香りがして
魚でないと訴えるか

川の魚 海の魚
魚はさかなの匂いがするが
鮎は山の水の中で
植物のように生きるのか

川石に付く苔を食べ
冷たい雪解け水や湧く水を飲み
天使のように暮らしているのか

メロンも知らず
苔のそよぐ川の中で
鮎は泳いで一生を終える


手に取るとやはりメロンの香りがして
火に焼かれても恨みもいわず
清流に生きたままの姿で消えてゆく

鮎よメロンの香りよ
清流に生きる美しい
魚よ
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野辺の夏の扉

2019年07月14日 | 花(夏)
桔梗は青むらさき

ミソハギはマゼンタの紅

ガラスの器に

野花を活ける

主張しない花は

過ぎた時を思い出させる

振り返れば 花の気配 

口数少なに色を示して


ガラスに透ける水の色

ミソハギと桔梗

夏の扉は開く

誰も知らず気づかぬを

霧雨の煙る日
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青い花雨の街

2019年07月06日 | 季節
しとしとの雨
青い花濡らす雨
青い花
青い花
青い花は青空の
向こうからやってきて
雨の日は花屋の軒にこんもり揺れ群れる
花びらのかさね
青い花は透き通る水のよう
山の上の静かなちいさな湖の
さざなみ

しとしとの雨
水玉模様の傘の色
あの日の私の白いレインシューズはどこに行った


静かに煙る
水蒸気の街
ひとびとの歩む街の通り
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にんじんの花

2019年06月25日 | 花(夏)
梅雨の雨に濡れる
細い茎 細い葉
夏に向かい花開いたにんじんの花は
花屋の店先のレースフラワーのよう

柔らかに繁ったにんじんの葉を
朝のサラダのトッピングにし
その新鮮な緑を香草をたのしみ
いま咲き出す三本の白い花
レースのように
清潔に可憐

あのにんじん
まるまる甘いグラッセにして
千切りきんぴらごぼうといっしょに
紅花油でカラリ天ぷらに
身を捨ててなおいのちをつなぐ
にんじんは いとおし

梅雨の午後は雨のひとしきり
しぶく軒の鉢に
濡れている 白いちいさな花の一群
にんじんの
姿 ほっそりゆれる
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初夏への句

2019年06月02日 | Weblog
☆ ニンジンの芽から花咲くいとおしさ

☆ 甘き芋食べ残しにまた葉の茂る

☆ 新緑の眩しき道を歩み往く

☆ 杜若白と紫並ぶ家

☆ ふとひとの吐息漏れ来る空き家なり

☆ いくたりの人逝きてなお山の稜

☆ 空を行く雲のごとくに春流れ

☆ 吾が家の長き歩みよ墓静か

☆ 黒猫の骨埋めたる祖霊の地

☆ 母の墓ことしの赤きカーネーション

☆ 甲斐駒の残雪の麓揺られ行く
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青葉の中で

2019年05月17日 | 
森の中に青春
うすみどりの若葉の波に埋もれ
吹き渡る風に身を任せ
沸き上がる白い雲のように
過ごしていたその日日
夢は果てもなく
広い海原に憧れは彷徨い
すんなりの四肢は跳ねて踊っていた

この世に生まれてきた喜びに浸り
綿毛に包まれ
いのちはやがて傷つくとも知らず輝いていた
青春
よぎるちいさな不安を軽くいなし
産毛のように過ごし来た
不思議の時代
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花のむこう

2019年04月05日 | 
花の向こうに

人は何を見る

空を埋める桜の花に

心があるなら

毎年やってくるにんげんの

心の騒ぎを花は 知るのだろう

老いた桜を 若い桜を 山陰に1本咲く桜を

人はいとおしむ

遠く去った日の数知れぬ想い出を

春を埋めることしの桜の花の

ひとひらひとひらに視て

彩度をいや増す短い季節

花のいのちの語り
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三色すみれ

2019年03月14日 | Weblog
三色すみれは冬超えて
ことしも陽だまりに安らぐ

三色すみれは暑い日より
寒い日にこそ色冴える

三色すみれを胸に抱いて
あの子の住んだ街を訪ねる

三色すみれは春風にゆれ
まだ明けぬ春のなかにいる

三色すみれのいとしさよ
忘れられぬ想い出が蘇る

三色すみれをみつめると
花の瞳がゆれゆれる
冬の寒風を過ぎて早春の
冷たい空気の中になお健気なちいさな姿

春の愁いゆえもなく 寂しさ
色に甘える

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ひな様のまつり

2019年03月04日 | Weblog
ひな様は真昼は
うとうと眠っておいでです
喧噪のこの世では
ひなさまはゆっくりお話もできません
テレビジョンの音は金属的で
心安まる時もありません
ひな様のお好きな笙の音色も
お正月くらいしか聴けません
美しい言葉は
荒々しい会話に変わり
時は忙しく空しく
あっという間に流れ去るだけ

たべものは過ぎるうまみに味が変わり
濃い味もすぎると辛く
ひな様は少しの塩だけどなんでもおいしいと
欲望を離れ自然のままおられます

ひな様の横顔は何時も静か
怒りを見せず
哀しみを見せず
傍に居る人をただ和ませ
聞こえぬ天上の音色のなか
春の宵を
ゆっくり流れる時間の中においでです

ひな様は夜更けは眠ることなく
時の流れを振り返り
想い出をなぞり
ふたりでそっと語り合われる
白酒をすこし口にされたり
黄色と桃色の花の色を愛でられ朝まで
今年もおふたりの短い早春のまつりを
楽しまれておいでです

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青の絵の具

2019年02月03日 | Weblog
絵の具箱には様々に
美しい色が眠っている

絵の具箱は何十年
人の心を揺さぶり
油の匂いといっしょに攻めたてる

太平洋の色はコバルト
明るく広く青い海の色

日本海は少し淋しく暗く
コバルトとプルシアンがない交ぜに
人の絶えた夏の海辺の街を包み
それはインデイゴの青にも似ていた

中央高地の空はセルリアンブルー
山の背中にあるすこし厚い
コバルトブルーに近い青い色

青は海と山の色
布の藍色
日没のアルプス山脈の
山並み浮かべる
物語のような群青色

青い色
遠い国遠い昔のファラオの
頭巾を飾ったラピスラズリ
兵士らの剣に嵌められていたトルコ石 トルコブルー
そして宇宙に浮かぶ私たちの地球の
碧に近いいのちの水の青いろ

語り尽くせぬ物語
青の絵の具




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冬の月

2019年01月22日 | Weblog
月を見ました

まるい月

冬の夜空の満月です

暗い空をほのあかるい

プルシャンのブルーに染めて光る

大きな金色の月でした

空は冷たく広がってその下に

広がっている家何十万のやさしい人たちが住む街


私はいなくなった猫を追って

いつも満月の日は起きている

満月の夜は忙しくて眠れない

ねこのようなほかほかの可愛い月とりわけ

風のない日冬の満月を眺めると

チーズフォンデュが欲しくなる

ミルク色の冬の食べ物を

フーフー冷まし猫たちといっしょにいただきます

満月が届けてくる暖かい物語

思い出の束といっしょに


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新年

2019年01月02日 | Weblog
昨日を悔やまず

明日を思いなやまず

この朝の光を浴び

また何かを心に刻み

歩いて行く道程に

身の丈の幸いが祝福してくれる



群青色の山々に

明るいこがねの光が差し始める

新しい暦のはじめ

元旦
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