母はふるさとの風

今は忘れられた美しい日本の言葉の響き、リズミカルな抒情詩は味わえば結構楽しい。 
ここはささやかな、ポエムの部屋です。

花火

2024年07月17日 | 
遠い花火
雷鳴のように響く遠い花火
部屋の灯りを消すと
光が空に謳って散る

花火に友は父を見るという
いつもいつも短く散った父を見るという
花火は夜の祭り
夏の夜の祭りは
亡き人人の蘇りか宴か

夏は還ってくる子供の頃のゆめ
果たされずに終わった望みたち
亡き人々の優しいまなざしやこえ
ラジオ体操ヒグラシの夕べ

遠い花火
家々の上に大きく広がり
瞬く間に消えゆく夏の夜の
心なぐさめるひかりの宴
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はちく

2024年06月26日 | Weblog


剥いた破竹のきれいな細身を糠で茹で
カツオの出汁やみりんとおさとう
昆布だしなどもさらりとかけ
日本酒などもさっと振り掛け
鉄板で焼き
こんがりおこげの色を確かめ
白い皿にのせて
私は食べる
外は少し蒸し暑い梅雨の空
遅いタケノコの味をことしもほくほく
味わいながら厳しい太陽の季節の前の
幸せなひとときを過ごします

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東京タワー

2024年06月07日 | ふるさと
赤い鉄塔の東京タワー
子供の頃のヒーロー
東京タワーは
今も私のヒーロー
芝の森を従えて聳える私の宝もの

どんな立派な建物より
ハイテクノロジーのビル群よりも
こころを波たたせる赤い鉄塔
優しかった東京の面影宿る
大好きな東京タワー

時々そばに来て仰ぎ見る
富士山のような私の
赤い鉄の塔
ふるさとのような東京タワー
昭和のヒーロー
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青葉の季節白い花

2024年05月02日 | Weblog
白いアイリスが咲いた
初夏には開く白いアイリス
紫菖蒲の花の群れに
真白い花が離れて咲いてた
無垢の姿
漂うほのかな香り
いつくしむと花は応えて
青い空の下で微笑していた

遠い日の猫と父の姿
母屋の高い瓦の波
みな無くなっても私の庭で
きりり咲いてる
白いアイリス
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はる

2024年03月20日 | Weblog
はるは
沢山のいのちがやってくる
はるは
暖かい日差しにさそわれ
ちいさないのちが産まれてくる

つぶらな目 ひたむきなまなざし
そのいくつかは
陽を浴びずに去ってもゆく
幸せになるため生まれても
天に愛されずに消えてゆくもの

奇蹟の星には
なぜか不幸せのさだめがある
この世に永らえず
沢山の命がどこかで果ててゆく

頂いた小さな命を楽しみ歓び
やがてみな静かに去ってゆく
花は咲き空は青く陽炎がゆれる
毎年やってくるいのちよ春の日の

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てまりうた

2024年02月26日 | 
    

    てまりうた(わらべうた)     

                     竹内俊子 作詞 文部省唱歌

 てんてんてん 天神様のお祭りで
 てんてんてまりを買いました
 てんてんてまりはどこでつく
 梅のお花の下でつく
 下でつく


 てんてんてん 天神様の石段は
 だんだん数えていくつある
 だんだん数えて二十段 
 段の数ほどつきましょう
 つきましょう


   https://www.youtube.com/watch?v=JRGbCymN_TM てまりうた
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空き地で梅は香る

2024年02月17日 | 
よこみち通りの空き地の古い梅の木を
わざわざ見に来る人もなし

空き地は枯草もまばら
誰の土地かもわからない

閉店したばかりのパン屋のビルは
空き地のそば午後の陽を浴びている

ささやかな空き地にも
春の花は何時かは咲く

そ知らぬ顔で通る人をみおろす
花に纏われた木はしあわせ

人影少ない場所で梅の大樹が
辺りに香りを漂わせ咲いている
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雪降りつむ

2024年02月08日 | Weblog
      
       雪
       
             三好達治


 太郎を眠らせ太郎の家に雪降りつむ

 次郎を眠らせ次郎の家に雪降りつむ


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いのち菜の花

2024年02月01日 | 
食べるため買った葉
みどり瑞々しい葉から黄色い花が伸びる
菜の花はいのちかけた春の花
南の海辺の街は冬陽射し
気の早い菜の花が春を告げ始めても
北の海辺は哀しみ沈む

この花をじっと見つめると細長い
たおやかな私たちの国の島影その島の中にあるささやかな
営みのあった街街
雪に悶える哀しい家が浮かぶ

春を運ぶ黄色い花に
いのちの喜び悲しみは交差する
蜜の匂いする花に何の罪もないけれど
黄色い菜の花凍る如月

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新年

2024年01月04日 | 季節
まどろんで
私は暖かい陽を浴びて眠っていた
風のない静かな真昼
今年という年がすでに始まり
陽は天中高く 少し傾き
青い空には
凧の上がる気配はなかった
コンコン羽子板つく音もなかった

ラジオからきこえるにぎやかな笑い声
ふわりこころに浮かぶ「お正月」は
夢の中に溶け消えていた
南天の赤い実が
春の陽に光って揺れた 今年の元旦






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高村光太郎の冬の詩

2023年12月18日 | 季節
 
    冬 が 来 た

        
                高村光太郎


きっぱりと冬が来た
八つ手の白い花も消え
いちょうの木も箒になった
きりきりともみこむような冬が来た
人にいやがられる冬
草木に背かれ、虫類に逃げられる冬がきた
       
冬よ 
僕に来い、僕に来い
僕は冬の力、冬は僕の餌食だ
しみ透れ、つきぬけ
火事を出せ、雪で埋めろ
刃物のような冬が来た
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白秋の詩 落葉松

2023年11月06日 | 

    落 葉 松

          北原 白秋

からまつの林を過ぎて 
からまつをしみじみと見き
からまつはさびしかりけり
たびゆくはさびしかりけり

からまつの林を出でて
からまつの林にいりぬ
からまつの林にいりて
また細く道は続けり

からまつの林の奥も
わが通る道はありけり
霧雨のかかる道なり
山風のかよう道なり

からまつの林の道は
われのみか ひともかよいぬ
ほそほそと通う道なり  
さびさびといそぐ道なり

からまつの林を過ぎて
ゆえしらず歩みひそめつ
からまつはさびしかりけり
からまつとささやきにけり
    
からまつの林を出でて
浅間嶺にけぶり立つ見つ
浅間嶺にけぶり立つ見つ
からまつのまたそのうえに
 
からまつの林の雨は
さびしけどいよよしずけし
かんこ鳥鳴けるのみなる
からまつの濡るるのみなる

世の中よあわれなりけり
常なけどうれしかりけり
山川に山がわの音
からまつにからまつのかぜ
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青い空の下で

2023年10月29日 | 

青い空の下で風がそよぎ花が咲く

赤い色は命の色
黄色は裏切りの色
とヒトは言う
何も語らず花は咲き風に揺れる

秋の空は高く青く
野原は眠くなるように平和だ
清涼な空気の中で咲き乱れる花たち
生きる喜びの形と色に溢れる花たち

世界のどこかで
花の匂いも忘れ争う人々
哀しみを痛みを絶望を
この花たちはひそかに知っている

世界中に同じ青い空が広がっている

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秋の月 詩人のこころ

2023年10月14日 | 季節

    白 月

      三木 露風

照る月の影みちて
雁がねのさをも見えずよ
吾が思う果ても知らずよ
ただ白し 秋の月夜は

  吹く風の音冴えて
  秋草の虫がすだくぞ
  何やらむ心も泣くぞ
  泣き明かせ 秋の月夜は






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疲れた日は畳の上で

2023年09月21日 | 
思いっきり疲れた日は青い畳の上に寝転がって
あっちごろごろ
こっちごろごろ
そして腹ばいになり
四肢を思いっきり伸ばして
子供の頃のように猫のように
人目はばからずに伸びをして
また仰向けになり
天井の見知らぬ模様を眺めたり
窓から流れる風をほほに受け
生きた今日の時間をなぞり
大の字になって目を閉じて
ふっと微笑みまた伸びをして
畳の柔らかい厚みの上で思いっきり息を吐き
人間をまた続ける気力をいただくのです

四畳半だけ残った和室の
かけがえのない幸せ時間に
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