母はふるさとの風

今は忘れられた美しい日本の言葉の響き、リズミカルな抒情詩は味わえば結構楽しい。 
ここはささやかな、ポエムの部屋です。

新年

2024年01月04日 | 季節
まどろんで
私は暖かい陽を浴びて眠っていた
風のない静かな真昼
今年という年がすでに始まり
陽は天中高く 少し傾き
青い空には
凧の上がる気配はなかった
コンコン羽子板つく音もなかった

ラジオからきこえるにぎやかな笑い声
ふわりこころに浮かぶ「お正月」は
夢の中に溶け消えていた
南天の赤い実が
春の陽に光って揺れた 今年の元旦






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秋の月 詩人のこころ

2023年10月14日 | 季節

    白 月

      三木 露風

照る月の影みちて
雁がねのさをも見えずよ
吾が思う果ても知らずよ
ただ白し 秋の月夜は

  吹く風の音冴えて
  秋草の虫がすだくぞ
  何やらむ心も泣くぞ
  泣き明かせ 秋の月夜は






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冬の詩 高村光太郎「冬が来た」

2022年12月31日 | 季節


    冬 が 来 た

        
                高村光太郎


きっぱりと冬が来た
八つ手の白い花も消え
いちょうの木も箒になった
きりきりともみこむような冬が来た
人にいやがられる冬
草木に背かれ、虫類に逃げられる冬がきた
       
冬よ 
僕に来い、僕に来い
僕は冬の力、冬は僕の餌食だ
しみ透れ、つきぬけ
火事を出せ、雪で埋めろ
刃物のような冬が来た
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梅の実

2021年06月21日 | 季節
しとしと雨降りヨシキリが鳴く
梅の畑に梅の実落ちる

梅の実は匂う
ほんのり匂う梅の畑

ヨシキリの巣を忍ばせて
梅の枝に樹に雨はしとしと

ヨシキリの巣にヨシキリの雛
頭のぽやぽや柔らの毛がのぞく

あの日も今日も6月の雨
しとしと降る雨は毎年おなじ

しとしと降る雨梅雨の畑
梅は匂い雨は降る

老いた梅の木に実はまばら
廃家に雨降り住む人はない

毎年聞こえたヨシキリの
キチキチキチの声も消えて

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冬のりんご

2020年12月10日 | 季節
りんごのまろさ
りんごの赤さ
冬の陽 木枯らし 赤い熾き
炬燵櫓にまるまって
猫は冬の日をすごしてた
手に触るネコ毛の温み

りんごが語る冬ごもり
りんごの蜜が透き通る
冬は冬の楽しみに
日本の季節がひろがって
青い空がみつめてる

りんご りんご
りんご剥いては来し方を
ふと思い 振り返る
赤い可愛いちいさなりんご
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「夏は過ぎ去った」エミリー・ディキンソンの詩界 

2020年09月11日 | 季節
  
  夏 は 過 ぎ 去っ た   

                エミリー・ディキンソン(アメリカ)
           
悲しみのようにひそやかに
夏は過ぎ去った
あまりにもひそやかで 
ついには 裏切りとも思えないほどに―

もうとうに始まったたそがれのように
蒸留された静けさ
またはみずから引きこもって
午後を過ごしている自然

夕暮れの訪れははやくなり
朝の耀きはいつもと違う
ねんごろでしかも胸の痛むような優美さ
立ち去ろうとする客人のように

このようにして翼もなく
船に乗ることもなく
私たちの夏はかろやかに逃れ去った
美しき ものの中に

 
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木の葉の宴

2019年12月15日 | 季節
秋が暮れる
いのちのなごりの
木の葉が舞う

ダンサーのように舞いながら
木の葉はかすかに音を奏でる

私の歌がきこえますか と
木の葉はおのおののドレスを薄くまとい歌い奏でる
もの言わぬ木々の
控えめな宴
静寂の中で精一杯主張する
丁寧に織られた織物のように輝く色彩

秋を彩りながら消えていく
宝石のような木の葉
木枯らしの前の
とりどりの宴




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かすれた夏、赤とんぼ

2019年09月11日 | 季節
かすれた夏が
村の外れ 分か去れの古い石の上に
腰掛けて遠い空と雲を眺めていた
濃い青い空に夏の面影はあっても
季節は今年も少しずつ動いてゆく

道の端 
山桑の木の枝の枯れたてっぺんに
アキアカネが止まり
大きな目を動かして風を見ていた
人も道も時の中で静かにうねり変化してゆくが
野の花草と赤とんぼらは
人の目に移ろう秋への季節も
毎年のんびりと跳び揺れて舞うだけです
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青い花雨の街

2019年07月06日 | 季節
しとしとの雨
青い花濡らす雨
青い花
青い花
青い花は青空の
向こうからやってきて
雨の日は花屋の軒にこんもり揺れ群れる
花びらのかさね
青い花は透き通る水の色
山の上の静かなちいさな湖の
さざなみ

しとしとの雨
水玉模様の傘の色
あの日の私の白いレインシューズはどこに行った
静かに煙る
水蒸気の街
ひとびとの歩む街の通り
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秋の句 空など

2018年11月05日 | 季節
☆ 駆け足や秋をいとしむひまもなく

☆ 大輪のダリアの色の夕まぐれ

☆ 空の色たちまち流る風閉じて

☆ 庭先に小菊売る農家(いえ)軒高し

☆ 野の猫の姿少なく笹の道

☆ 舗装され土の小道の姿消えた

☆ 炎暑去ればまた忘れ行く日日なりし

☆ 卒寿ひとり国立劇場訪なうひと

☆ 年輪を濃くも刻みて風卒寿

☆ アンテナを広げて街の灯を迎え
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安納芋の葉南瓜の花

2018年09月26日 | 季節
この庭は
安納芋の葉茂り
ひろびろの葉 空に手をひろげ
九月の終わりの風に涼しくゆれる
ミントの花 足下にほの紫
すでに薄の穂伸びても
炎暑の夏の面影残し季節を教える
暑い南の国の
安納芋の葉っぱ

南瓜の茎はたくましく太く
その葉を落としてもなお残る蕾たちのざわめき
花は黄色い朝顔のようにすこやかに
千里のかなた金色の
極楽浄土に向かって咲く
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さらばカンナの赤い夏

2018年09月02日 | 季節
真っ赤なカンナの花伸びて
空広く青は深くトンボ浮き舞う
季節の道

丈高いカンナの紅い花
少し疲れいつもの通りが
ゆらぐ

秋はじめの雲の形空の色に
真っ赤なカンナの花が聳え咲く
九月なかば

さらば夏
さらば夏 赤い色少しだけ疲れて
カンナの夏



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梅雨の句

2018年06月11日 | 季節
・雨雲の下はみどりに湧く清水

・この庭の門閉じさても猫の道

・軒なくも親子猫棲む薮いとし

・水の風空気を込める夕べなり

・芍薬のつぼみ石にも語り合う

・りらの木もはや老木となる生家

・くちなしの香の流れてる坂の上

・混声のユニゾン雨の音色かな

・清涼の音なにやらむ雨を詠む

・雨の月はグラジオラスを捧げたく

・早咲きのラベンダー積み終え雨待つ日

・ひとくちのスイカの赤いいのちとて
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寒の句

2018年02月02日 | 季節
☆ 満月の赤き光よ雪の街

☆ 雪残る芝生をスズメは忙しく

☆ 残る雪灰猫通す竹の道

☆ 春の香を浅く流せりかすみ草

☆ 母の忌に板海苔柚酢飯の色

☆ 柚子すし酢南国土佐から送り来る

☆ 海老の赤玉子の黄色春未だ来

☆ 太巻きを梅と供える晦日なり

☆ 雪の日には猫の体温懐かしく

☆ 衿に巻くミンクに何をか語らわん
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ブリューゲルの画のような

2018年01月27日 | 季節
遠くにビル群を臨む見慣れた街が
雪に埋まるとまるで
ブリューゲルの画のように
白ひと色に目の下に広がっていた

屋敷木立の中に家々が雪に埋もれ
中世の穏やかな暮らしが
雪の中で生息しているようで何か愛おしい
不思議な朝の景色
静けさが空の広さに吸われたこの街で
知らない国の旅人となり
想像の世界に迷い込ませた雪の純白

狩人や猟犬らの姿もなく
獲物を追う狩人の密かな合図の声も
ざわめく犬の声も聞こえては来ないが
雪に埋もれた白い街に
毛皮と肉を追う遠い国の中世の人々の生活の息づかいがした
名画のような 朝

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