母はふるさとの風

今は忘れられた美しい日本の言葉の響き、リズミカルな抒情詩は味わえば結構楽しい。 
ここはささやかな、ポエムの部屋です。

ごはん

2014年02月13日 | ふるさと
雪の舞う朝ご飯が炊ける
ごはんの香りはいい匂い
幸せの予感のはじまりの匂い
ほかほかぬくもるその香り
幸せに過ごすまじないのような
「メシ」のかおりだ
釜にお米の炊かれる音が家の中にふつふつ響き
今日も無事でいられますようにと
燃える木と煙の匂いも漂う

かつて大きな家での冬の朝
煙と湯気の向こうで
みんな優しい顔をしていた
祖父も両親も兄姉も猫も
そろって食卓に着き朝ご飯を食べた
お釜に乗った木のふたを開け
いつものように甘いごはんを頂いた
どんぶりに入れた卵たちに醤油を入れ
回しとっては卵かけごはんを食べるのだ
アサリの佃煮をのせ
みんなで黙ってかき込んだその味
体にしみこむごはんと卵と醤油の匂い―
大根と油揚げの味噌汁を
毎朝の呪文のようにいただいたー

半世紀が過ぎいつか優しい人らは
この世から消え遠く旅立ち
または住まいもちりじりに
今日の冬の朝げをたべているだろう
それぞれの家に炊きあがる甘いごはんの匂いは
弥生の時代から未来につながり
膳に着く時の心に
ちいさいしあわせを運ぶだろう





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冬の句

2014年02月05日 | Weblog
 
 雪重し 老いの映像北の冬
 

 埋め埋めて 若者もなき雪の村

 牛埋め 歳越す農や冬如何に

 渡り鳥 罪なき身にて空翔けぬ

 空暗し地も暗くして 農の冬

 天と地の怒りの如き 灰の降り

 地に積もる灰に 嘆きは届かずに

 南天の赤さに忍ぶ 父母の家

 角もちの雑煮汁粉 母の卓

 面影はゆめにて候 朝の粥

 見附けにて濠のみどり 青き春は

 冬枯れの下にふくふく 福寿草
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