はなこのアンテナ@無知の知

たびたび映画、ときどき美術館、たまに旅行の私的記録

息子は中国で何を学んで来たか

2007年06月09日 | 家族のことつれづれ


 息子が無事中国旅行から帰って来た。彼が旅行で家を空けている間、心配性な私は常に旅程表を見遣りながら、「今頃、天安門広場ね」「今は雑伎団を楽しんでいるところかしら?」「もう万里の長城には着いたかな」などと想像を巡らせては、「交通事故に遭いやしないか」「何か危険な目に遭っていやしないか」と彼の身を按じてばかりいた。まったく…我ながら親バカである(^_^;)。

 とは言え、彼が帰国した日、私はあいにく午後から、美術館で今夏実施予定のワークショップに向けての研修で家を空けており、彼を玄関先で迎えることはできなかった(今や共働きの家庭も多いのだから、普段出迎えられること自体が恵まれているのだろう)。予定通りなら、5時頃には自宅に着いているはずである。細身であまり体力があるとは言えない息子の体調が気になりながらも、私は5時近くまでトライアル後のミーティングに参加していた。

 すべての研修スケジュールを終え、(所在不明だったので)息子の携帯に電話してみると、息子はいつになく疲れた声で応答して来た。まさに疲労困憊といった感じだ。一応無事帰宅したことを確認できた安堵もあって、私はすぐに電話を切った。その後地元へ向かう電車の中でメールを打った。「何か買って来て欲しい食べ物はある?」―すると間髪を入れず、「お母さんだけでいい」と返信が来た。なんちゅーこと言うねん。歯の浮くような台詞。受け取ったこちらの方が気恥ずかしくなるような台詞だ。もしや誰かに見られてしまったのではと、思わず車内を見回してしまったよ。

故宮の屋根の連なりを公園から望む 

 人民大会堂

 帰宅後、落ち着いてから旅の感想を聞いてみた。「何が一番印象に残った?」すると帰って来た言葉は「北京には物売りやホームレスがいっぱいいた」。街を歩くと、帽子や北京オリンピックのマスコット人形(おそらく今問題になっている無許可製造販売品)や磁石のおもちゃなどを手にした物売りが、しつこくつきまとって離れなかったらしい。彼の心を捕らえたのは、中国の悠久の歴史を感じさせる万里の長城でも、中国ならではのスケール感を持った人民大会堂や故宮博物院でもなく、必死に露天で行商する人々の姿だったのである。

 最近中国に関する報道が引きも切らないが、無許可でコピー商品を製造販売している人々の存在に当局が頭を痛めているとの報道もあったばかりだ。当局としては著作権問題で対外的に不味いとは判っていても、そうした人々の殆どが中国社会では最下層の貧しい人々で、一網打尽に取り締まると彼らの死活問題になりかねない、ということらしい。また先日一人っ子政策を厳格に適用して厳しく産児制限を行った農村部で死者が出るほどの暴動が起きた、という報道もあった。その地域の平均月収は約3万円だと言う。今回息子に持たせた小遣い(2万円)とあまり変わらない金額だ。そういう話もした上で彼を中国へと送り出したこともあって、彼はことさら中国社会における貧富の差や彼我の違いを肌で感じたのだろう。

胡同

 日本の観光地ではあまり見慣れない光景に、彼は内心ショックを受けたようだった。「それで、○○(←息子の名)はそれを見てどう思ったの?」と彼の心情を確かめてみると、息子は「可哀相な、気の毒な気がした」と言いながら、なんと涙ぐんでいる。感受性の豊かな子であることは幼い頃から見て来ているから承知しているが、それにしてもなんという慈悲深さ?!仏様の生まれ代りかい?!彼は将来、何らかの形で社会的に成功を収めたら、潤沢な資金を費やしてそうした社会的に恵まれない人々の手助けをしたいのだと言う。

中国人民抗日戦争記念館―心境複雑…  

 彼は本気でそう考えているようだから、それを茶化すのは大人としては慎むべきことだと思う。その立派な志を全うできるよう励ますのが親の役目だと思ったので、「○○が世の中の為になることをしたいと考えているのなら、それを実現するためにはいろいろと努力しなきゃね。まずはそれ相応の能力を身に付けないと。いろいろな能力があるとは思うけど、今の時期は基礎学力・一般常識(特に言葉を知らない、漢字を読めないのは恥ずかしいよ!言葉は思考の道具なのだから。もちろん行動倫理は言うに及ばず!)、体力、そしてコミュニケーション能力をしっかり身に付けることが大事だと思うよ」大人になって何をするにつけても、彼が今、学校で学んでいることが、あらゆることの基盤となるはずである。「まずは目の前にあることをひとつひとつきちんとやり遂げること」―なんてことを今さらのようにアドバイスしたのだが、イマドキの高2に言う言葉ではなかったかな(^_^;)。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« (23)『パッチギ! LOVE&PEACE』を見... | トップ | (24)しゃべれども しゃべれども »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。