タイに到着した翌日、シュノーケリングツアーに出発した。
船で大小二つの島を巡ることになった。
私達は大きな島だけでいいと言ったのに、
ビーチ担当のおじさんが「シュノーケルをやるのは、ここがいい」と小さな無人島を推すので、
2か所回ることになった。
小さな島に行くためには、まず、車で15分走って、船着場に行き、
そこからモーターボートに乗らなければならない。
天気はまずまずである。
船着場から、モーターボートに乗った私達は、それから30分の間、とんでもない目に遭った。
ボートはびゅんびゅんと波の上を走って行く。
ところが上下の揺れがものすごく、
ライフジャケットを着ていない私達は、段々、無口になっていった。
どこかにつかまっていないと、振り落とされそうなくらい、
振動がひどく、深く椅子に腰かけていると、
後頭部をがんがんぶつけてしまうので、椅子に浅く座った恰好でいなければならない。
しかし、それだと椅子から振り落とされそうになるので、
手近にあるものにしがみつく。
私は運転しているお兄さんの椅子に必死にしがみつき「まだかなぁ」と遠くに見える島影に目をやっていた。
とにかく、その衝撃は、鉄板の上にボートがばんばん叩きつけられてるといった感じで友人は
「転覆したら一発で終わりだわ、私、そんなのいや」と言って、シュノーケルとゴーグルを取り出した。
そしてそれを着用し「何があっても、息が出来るようにしておかなくっちゃ」と言いながら真顔で椅子に座っていた。
「そんなことしたって、放り出されて海に沈んだら同じだよ。変にそんなものしてないほうがいいかもよ」
「きっとシュノーケルをくわえていても、落ちた時にあわてて舌を噛むと思うな」
「意外とシュノーケルの先が、変な所にはさまったりするのよね」
口々にからかっても、彼女はがんとしてシュノーケルとゴーグルをはずさず、島に着くまでそのままの姿で体を硬直させていたのである。
つづく
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