腫瘍をとるために手術を受けたKさんの猫は翌日、亡くなってしまった。
Kさんは、お葬式や墓地の手配をし、気丈に事をこなしていた。
うちにも彼女からもらった猫の写真が何枚かあったので、しばらく机の上に水と花と一緒に置いていた。
心配していたよりも彼女は元気そうだった。
あまりに明るいので、ちょっと気にはなったが、全てが一段落したあと、彼女は具合が悪くなって1週間、寝込んでしまった。
寝ている間に、彼女は、ある程度、ふっきれたようで、又、社会復帰した。
「家に帰ると、いつも玄関に迎えにきたのに、今は当たり前だけど、迎えにこないじゃない。そういう時に、ああ、いなくなっちゃったんだなって思うわ」
いつかはこういう日が来ると覚悟はしていたものの、やはりダメージはきつかったようだ。
その話を猫を飼っているAさんに話した。
以前、亡くなったその猫の写真を見たことがあるので、彼女も「可愛い顔をした猫だったのにねぇ」とつぶやいた。
彼女の飼っている猫は10歳のシャム猫で、ふだんはとてもおとなしい。
うちのトラはめったやたらと、ふにゃふにゃと鳴いて付きまとって、相手をしてやらないと怒ったものだった。
しかしAさんの猫は遊びに行っても、おとなしく部屋の隅にいるだけ。
時折、尻尾を立てて体をすりつけてくるけれど、あとは淡々と好き勝手なことをやっている。
いかにも「おりこうさん」と言いたくなるような、可愛らしくて賢い猫なのである。
ところが、この猫にも弱点があった。
車に乗せると怯え、「おわあ~あ~あ~」と乗っている間中、ずーーーっと鳴いている。
特に高速道路とトンネルは苦手で、ひときわ大きな声で鳴くのである。
つづく
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