Kさんんの場合は、猫の体調の悪さを現実問題として、受け止めなければならなかった。
勤め先から帰るとすぐに獣医さんのところに電話をして、
それから、うちに電話がかかってくる。
ある日、彼女はとても明るい声で電話をかけてきた。
最初に診てもらった病院から血液検査の結果が間違いだったと連絡が入ったというのだ。
「本当に心配しちゃったわよ」となったら、
入院させておく必要はないので、引き取ろうとしたら、
大きな病院で「せっかくだから、きちんと検査をし直しましょう」と言われた。
彼女は猫はたまたま体調が悪くて、物がたべられなくなったと思っていた。
ところが検査の結果、その病院から連絡があり、腫瘍が発見されたのでこれからすぐ、手術をすると言われたらしい。
突然にそんな事を言われ、彼女は仰天した。
頭の中に「年寄りだし、手術などしないで、このままにしておいたほうがいいんじゃないか」
「先生がそう言うのだから、すべて任せたほうがいいのでは」
と相反する考えがぐるぐると渦を巻いたが先生の言う通り、手術をしてもらうことにした。
何だかわけのわからないうちに猫が手術をすることになってしまい、彼女は呆然としていた。
うちに電話をかけて来た時も「そういうことになったから・・」と放心状態であった。
残念ながら手術の翌日、猫は亡くなってしまった。
電車を乗り継いで病院にかけつけると、まだ猫の体は少し温かったという。
真っ白な猫なのに開腹の跡が黒い糸で縫ってあった。
腫瘍は2キロもあり、よくもここまで生きていたというくらいだったと先生は言ったそうだ。
つづく
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