納付が任意と定められている社会福祉協議会(社協)の年会費について、兵庫県内41市町のうち36市町で、自治会や町内会などが組織的に集金を担当していることが分かった。「生活に不可欠な地縁団体による実質的な強制に当たる」として、篠山市の男性(65)が酒井隆明市長らに対し、昨年と今年の集金分を市に返還するよう求める住民監査請求を起こしている。(井原尚基)
県内各市町の社協によると、地縁団体などによる集金活動をしていないのは神戸、尼崎、芦屋、伊丹、赤穂の5市。ほかの市町は「一部地区だけ」という市町を含め、各社協が自治会や町内会などに年会費(1世帯100~2200円)の集金を委託している。
篠山市社協では、1世帯の年会費が700円で、昨年の年間収入1億1千万円のうち約8%の880万円を年会費が占める。
各地縁団体は、集金した自治会費の一部から決議に基づいて社協の年会費を支出したり、担当者が各戸を訪問して年会費を集金したりして社協に収めている。社協の多くは「集金方法は地縁団体に任せている」とする。
篠山市の男性は、自治費からの支出も、日常的に顔を合わせる住民による集金も「実質的に任意性を欠いている」と主張。県社協は「年会費は住民が支え合うために使われており、理解してもらえるよう努めたい」としている。
自治会費に組み込まれた各種会費をめぐっては2007年、赤い羽根共同募金や日赤への寄付を自治会費で徴収できるかが争われた訴訟で、大阪高裁は「会員の意思とは無関係な一律的徴収は事実上の強制で、社会的許容限度を超えている」として自治会の決議を無効とする判決を言い渡し、最高裁が自治会側の上告を棄却して確定している。
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【自治会や町内会の役割に詳しい辻中豊・筑波大学副学長(政治学)の話】集金に嫌悪感を持つ人が増えると住民の自治会離れにまで波及し、自治会が災害時などに自立的活動を展開できなくなる可能性が出てくる。地縁団体に集金を委託している社協は、自らの役割をもっと説明し、住民との距離を縮めるべきだ。
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【社会福祉協議会(社協)】地域福祉の推進を目的に掲げた非営利の民間組織。社会福祉法に基づきすべての都道府県や市町村に設置され、訪問介護や配食サービス、ボランティアセンターなどの事業を展開している。財源は市町などからの補助金や受託金、住民や法人からの会費や寄付金、共同募金による収入などが多くを占める。
(2012/09/06 08:01)