今だから…昭和さ ある男のぼやき

主に昭和の流行歌のことについてぼやくブログです。時折映画/書籍にも触れます。

KAZUKO MATSUO IN America(1980年)

2006-03-12 21:33:35 | 80年代・歌謡曲

お大事に/松尾和子イン・アメリカ
SIDE1(作曲:Nick Perito)
1、お大事に(作詞:岩谷時子)
2、生命かけたひと(作詞:橋本 淳)
3、REMEMBER(作詞:橋本 淳)
4、いつまでも待つの(作詞:岩谷時子)
5、KISS ME(作詞:橋本 淳)

SIDE2
1、誰よりも君を愛す(作詞:川内康範 作曲:吉田 正)
2、小さな酒場(作詞:宮川哲夫 作曲:吉田 正)
3、ウィスキー・ララバイ(作詞:クロ 作曲:惣領泰則)
4、さよなら(作詞:山上路夫 作曲:Harry Toos)
5、再会(作詞:佐伯孝夫 作曲:吉田 正)


このLPは松尾和子さんの歌手生活20周年記念LPであるらしい。
ペリー・コモやフランク・シナトラといった大物歌手の編曲者として著名であるニック・ペリートがプロデュース。収録曲全曲の編曲及び5曲の作曲(書き下ろし)を担当。
スタジオプレーヤーも一流どころで固められている(これは最後に付記する)。

ニック・ペリートと松尾和子、いったい何処で接点を持ったのか。
それはニック・ペリートの日本公演にペリー・コモが編曲者(指揮者)として同行した際に、(サンフランシスコ在住の松尾の友人が紹介し)知り合った。
松尾の歌を聴いたニックは、すっかり松尾に魅せられた。
そして、松尾にロスでの録音を勧め、その場合は自分で作・編曲を担当し、ミュージシャン等もこちらで手配しようと申し出た。
元はジャズ歌手であった松尾にとって、ウエスト・コースト派のミュージシャンとの競演は夢でないはずがない。まして、それをニックペリートから言われているのである。
さらに松尾の歌手生活20周年もあり、夢の企画が実現と相成った。

松尾は、レコーディングに備えて、宿泊先のホテルにピアノを持ち込んだほどだった。6月30日・7月1日、グループ・フォー・スタジオにてレコーディング。1日12時間というハードスケジュールであるが、その真摯な姿勢に感動したスタジオのオーナーが深夜に花束を抱えて松尾を激励した話もある。
レコーディング中、ドン・コスタ、レイ・チャールズ・シンガーのメンバーなどが入れ替わり立ち代わり、レコーディングに立ち会っていた。その全てが松尾の歌をチャーミングと賞賛したという。中でも「小さな酒場」をビューティフルな曲と讃えていた。

そうして生まれたこのアルバムだが、素晴らしいの一言に尽きる。
ニック・ペリートにとって、初めての日本でのアルバム製作でもあるため、ペリー・コモ、スティーブ・ローレンス、イーディー・ゴーメの言葉が寄せられている。
松尾は当時40半ばであるが、実に若々しい、そして艶っぽい歌声を聞かせてくれる。
もともと松尾の歌声は生涯を通し若々しいし、艶っぽいのだが…。
それはやはり夢の実現による喜びが、そうさせたのであろう。
ニック・ペリートによる編曲も実に良く、名アレンジャーと名演奏によって、松尾の代表曲「再会」「誰よりも君を愛す」「小さな酒場」も新たな魅力を帯びつつ曲・詩の良さを改めて感じさせるものとなっている。書き下ろし5曲も古きハリウッド映画のワンシーンをそれぞれ想わせる名曲揃いだ。
このアルバムは松尾和子20年のキャリアの全てを引き出したうえで、新たな魅力を
加えたニック・ペリートの凄さも実感できる名盤であると私は断定できる。

今、ビクターでは<COLEZO!>というCDを出している。その中に、自社の隠れた・著名な名盤を復刻する「ビクター流行歌 名盤・貴重盤コレクション」というシリーズがある。ビクター関係者様、続編製作の暁には、ぜひともこのアルバムの復刻をお願いしたい。奇跡の名盤・フランク永井×ニニ・ロッソの競演アルバム「君恋し フランク永井ニニロッソと唄う」の復刻を成し遂げたシリーズゆえ、期待は出来ると勝手に思い込んでいるが…。

付記
Vocal:Kazuko Matsuo

Woodwind:joe Soldo,Gary Foster,Ronne Lang,Gene Cipriano
Trumpet:John Audino,Chuck Findley
Trombone:Bill Watrous,Chaunley Welsch,George Robedts
Guitar:Dennis Budimir
Piano:John Berkman
Bass:Don Baldwin
Violin:Gerry Vinci,Sheldon Sanov,Assa Drori,Bob Sushel,Polly Sweeny,Margaret Wooten,Marvin Limonick,Dave Frisina,Reggie Hill,Stan Plummer,Brian Leonard,Mary Lundguist
Viola:Dave Schwartz,Alan Harshman,Pam Goldsmith,Sam Boghossiam,Myer Bello,James Dunhan
Cello:Fred Seykora,Maric Fera,Barbara Badgley
Harp:Katherine Gutthoffen
Percussions:Dale Anderson
Drums:Steve Schaeffer

Arranged,Produced&Conducted by Nick Perito


松尾和子(1935-1992)
力道山経営のクラブ「リキ」で歌っていたところをフランク永井にスカウトされる。
デビュー曲「グッド・ナイト」がヒット(数年後「グッド・ナイト」のB面「東京ナイトクラブ」も人気を呼ぶ)し、続く第2弾「誰よりも君を愛す」で第2回レコード大賞受賞。
大賞受賞後も、「再会」「夜がわるい」「国道18号線」「お座敷小唄」「銀座ブルース」とコンスタントに曲をヒットさせ、やがて「ムード歌謡の女王」と呼ばれるようになった。
70年代前半、学生達のオナペットとして人気を呼んだこともある。
歌とはうって変わったトークも人気を呼び、コメンテーター・タレントとしても人気があったが、別れた夫との間にもうけた一子が問題を起こすと一転して叩かれた。
平成4(1992)年9月25日、自宅階段で足を踏み外し、転落。本人も「大丈夫」と言って横になったが、翌朝家政婦が様子を見に行ったところ死亡が確認された。