今だから…昭和さ ある男のぼやき

主に昭和の流行歌のことについてぼやくブログです。時折映画/書籍にも触れます。

なつかしの歌声・年忘れ大行進 観賞記 パート2

2006-03-11 02:09:28 | 歌番組

このコーナーは今ではテレビじゃ絶対出来ないでしょうね…。
「ああ戦雲幾星霜」戦時歌謡特集です。

電報「佐藤栄作(当時の首相)や若手議員にも見ろと言え」と訳の分からんモノまで登場。そこは政治漫才で馴らしたトップライト、うまく翻訳し会場の喝采をさらっています。

まずは林伊佐緒「出征兵士を送る歌」
右翼がよく流している♪いざ征け~つわもの~ニッポン男児~
という歌です。美声が響き渡ります。
会場もこれが青春の歌ゆえ盛り上がり、手拍子が入ります。

小唄勝太郎「明日はお立ちか」
三沢あけみや二葉百合子も歌ってます、この歌。
ちょっと風邪のせいか、苦しそう。

次は90過ぎまで歌っていた方、塩まさる「九段の母」
この歌はダメです、私の涙腺を大いに刺激してくれました。
母物歌謡は数多いですが、この曲は私の中でトップです。
反戦歌はちょっと…な私ですがこの歌は例外。
戦争の悲劇を歌い上げた名曲だと心から思います。
スリーコーラスの熱唱でした。

私の泣きを誘った塩まさるの次は、ご存知東海林太郎「麦と兵隊」
この歌が今では放送できないというのはおかしいと思う。
歌詞読んでみて欲しい、戦争賛美の歌詞でしょうか。
まだまだ私の涙は止まりません…。

灰田勝彦「加藤隼戦闘隊」
灰田サンのヒット曲ではもっとも灰田さんらしくない歌だと思う。
メロディーは実に私好みである。
さすがに軍国色が濃くなっている。歌で綴る昭和史ということでは十分参考資料となる曲であると思うのだが…。

モダンの次は…モダンと一見最もかけ離れてる方霧島昇「若鷲の歌」
(霧島さんは「胸の振子」「一杯のコーヒーから」「蘇州夜曲」等モダンな歌謡曲もヒットさせている素晴らしい歌手です。念のため。)
♪わか~い血潮の~予科練の~ 七つボタンは~桜に錨~
ベトナム戦争真っ只中の中、最後は敬礼して帰って行きました。
会場は盛り上がりまくってます。客の青春ソングですから当然です。

さあ戦時歌謡コーナーのトリは、伊藤久男「暁に祈る」
大熱唱、やっぱり衣装や髪型にはこだわりは見られないです。

CMの後の電報もかなりキテマス。
トップライトも言いたい放題
「年寄りばっかりだから風邪ひいてる人が多い」
「平均年齢が57歳~」
「歌い続けてこの道30年40年のベテランばかりですので、この形の風邪は昭和4,5年ごろの風邪だと思ってください」
「美ち奴さん頑張れ、あれずいぶん美ち奴さん多いな…あ、さっき読んだな、この電報」


ここから先は歌手の十八番を時代に関係なく歌っていくコーナー。
ハナは近江俊郎「湯の町エレジー」
メガネをかけていない近江さん、結構若く見えますな。歌はいつも通り。

続きまして菊池章子「星の流れに
戦後の流行歌の中でも欠かすことの出来ないナンバーです。
文句なしの美声で歌い上げました。

美声といえばじゃありませんが、市丸姐さん登場。
「三味線ブギウギ」を粋に歌い踊ります。
この振り付けは覚えたいなあ。
後姿は27、8だそうです(byコロムビアトップ)

また電報、電報局がもうパンク状態らしい。

林伊佐緒「ダンスパーティーの夜」
テンポがいつもより早い。

松島詩子「マロニエの木陰」
和製タンゴの大傑作。戦前のモダンの片鱗がうかがえる名曲。
ここでライト師匠失言。松島トモ子と紹介(笑)。
「いただきます」には出てましたが、ライオンには食べられてません(笑)。
トップ師匠がさりげなく、すぐに訂正していましたけどね。

まだまだ電報、マイクとの距離が離れていながら歌詞がハッキリ聞こえることにたいする賛辞。当時流行の歌手はコテンパンにやられてます。具体名は出てませんが。

小畑実がここで「高原の駅よ、さようなら」をフルコーラスで披露。
ホントに素晴らしいクルーナーボイスですね。

CMの後の電報も相変らず過激。
近所の寿司屋「都寿司」から楽屋に差し入れが届く。
「どんどん持ってらっしゃい、バンバン宣伝して差し上げます」
来年は故人(松平晃、津村謙、等)を偲ぶコーナーも欲しいとの発言も。
会場は歓声に包まれる。

さあ、次はオカッパル、岡晴夫「あこがれのハワイ航路」
フルコーラス歌い上げます。体調は悪そうです。
やっぱり盛り上がります、人気の凄さが伺えます。

二葉あき子「水色のワルツ」
ステージに用意された椅子に座ったりしながら歌います。
安定感がある歌唱に満足。

ディック・ミネ「人生の並木路」
おそらくディック・ミネの歌手生活で最も多く歌っているであろう歌
間奏を聞き違ったか、二番の出だしに間に合わず
フルコーラスの歌唱。

音丸「下田夜曲」
今でも日舞あたりで使われているらしいです。
「船頭可愛や」よりも声に安定感があります。

風邪で40度の熱がありながら、注射を打ちながら、無理を押しての出演。
服部富子「満州娘」
調子は悪そうですが、何とか歌い上げ、喝采を浴びて戻っていきました。

さあさあと出てきたのは、万年青年(には見えませんけど)
高田浩吉「伊豆の佐太郎」
円熟味の増した美声を披露。もうカンペは持ってません(笑)。

CM明け、また客席インタビュー。

番組も終盤、出てきたのは伊藤久男。歌はもちろん「イヨマンテの夜」
いつもより三割増の大熱唱。トップライトもその凄まじさに絶句。
映像の色ムラが気になります。

渡辺はま子「いとしあの星」
この歌が出てくるとは思わなかったです。
服部メロディーの傑作ですな、この曲も。
ビシッと歌い上げ、現役振りを見せ付けてくれました。

金髪で出てくるのは、もちろん淡谷のり子「君忘れじのブルース」
化粧も濃ければ歌唱も濃い。

女性軍の大御所が出終わった後は、男性軍。
藤山一郎「長崎の鐘」
ステージには十字架、合唱隊も登場。
藤山センセも気合が入ってます。

残りは一名。
その前に最後の電報読み。東京12チャンネルも電話でてんてこ舞いらしい。
息子とチャンネル争いをして、100円でチャンネル権を買った人も。

いよいよラスト、トリはもちろん、この人しかおりません。
東海林太郎、歌はおなじみ「赤城の子守唄」
会場も大歓声に包まれます、当時の人気の再燃振りが伺えます。

歌の後はインタビュー。
病気は何度もしたが大丈夫かの問いに、「大丈夫、(今後も)歌い続けますとも」と頼もしい発言。さすが勲四等(この年、受賞)とトップ。
トップ「昭和45年ももうそこまで来ています」
東海林「あなたの後ろにいますよ、ホラ」

結構面白い方です、東海林センセイ。もっとご存命であったら…と悔やまれません。
(昭和47年死去)

最後に出演者全員登場、「東京音頭」を合唱。
センターは東海林、その両隣りは勝太郎・淡谷、その外は藤山・高田。
このあたりで歌手の格がわかります。
なぜか2曲歌った林伊佐緒は舞台の一番脇、おそらくトイレにでも行ってて出遅れたんでしょうね(笑)

最後は紅白歌合戦同様「蛍の光」
イントネーションがどうこう言って、長年指揮をしながら歌ってない藤山センセイも今回は渡辺はま子と仲良くハモってます(笑)

最後にトップライトが〆て、番組は終了。

実に見ごたえがございました。
知らない歌は一曲もない。出演者の殆どが故人。
いろいろ思うことはありましたが、この番組は貴重な文化遺産でしょうね。
ぜひ、横浜へ行く機会がございましたら、放送ライブラリーでご覧になって下さい。
その濃厚さは半端じゃございませんから…。